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「#エロ」のBL小説を読む
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pkmn2 (14/20)
1人の時間を持ちたい

早朝にチェックアウトしたスボミーインを出て、真っ直ぐ向かったワイルドエリア。
名前は朝に強いワケでも弱いワケでもない。ただあの二人に邪魔されたくない一心で無理やり起きて行動を起こしたのだ。ホテルの従業員に無理を言って、早朝に出なくてはいけなくなったのだと頼み込んだが、有難い事に従業員は24時間体制だったので問題なくチェックアウトできた。
それからワイルドエリアに入って手持ち達をボールから出して移動を開始する。本来はボールに入れなくてはいけないが、早朝と言う事もあって誰もいないしワイルドエリア出しと言う事もあって出した。人間一人では野生ポケモンの襲撃に気付かなくてもポケモンがいれば安心だという側面もある。
そしてたどり着いたミロカロ湖・南。そこにテントを張って休憩にした。
そこで買っておいた朝食とポケモンの食事を準備して、一緒に食べる。
少し靄のかかる周辺はアローラでもなかなか見ない風景だ。

食べ終わるとテントの周辺ならば遊んでいいと言えば、ミロカロスは喜んで湖に入って遊ぶしファイアローは周辺をのびのびと飛び、他のポケモンは周辺を駆け回って遊び始めた。
その様子を名前は暫く眺めてから食事の後片付けに入る。後片づけといっても洗い物があるわけではないのでゴミを集めるだけなのだが。
することが終わってしまい、少し悩んでから小さな椅子をだして空港で買った本を出す。
ガラルの伝説に関する本。前に来た時には見なかった本で、どうやら比較的最近に出されたものらしい。名前は元より伝説というものが好きな部類だったので興味が惹かれて買ってしまった。他にもポケモンに関する本は欲しかったが、それならば大きい書店の方が手に入るだろうと思い、手に取った。本当であれば昨日のうちに読み始めたかったが予定が狂ってしまった。
本を読み始めると不意にファイアローが戻ってきてピィと小さく短く鳴く。どうしたのかと思って見ていると地面に降りて二本の脚でトコトコと歩いて来て、ひょいと膝に乗るではないか。

「…もういいの?」

問えばまた小さく短くピィと一鳴き。思う存分飛んで戻ってきたらしい。
アローラから見るとまだ少し寒い感じがする名前にはちょうどいい。ファイアローの温かい体温を感じながら本を読みだす。

それから暫く、時計などは見ていないからどのくらいの時間かはわからないがいつの間にか遊び終わったポケモンたちが名前の周りで好きに過ごしている。
ニャオニクスとニンフィアはどこからか花を持って来ているし、ルカリオは一匹で運動しているし、ガブリアスはぐうぐうとねているし、ミロカロスに関してはいつの間にか名前の周囲をぐるりと囲むようにくつろいでいる。
それに気づいた名前がその体を撫でると頭をあげて頭も撫でろと寄せてきた。

「大きくなったもんね、前はこんな小さなヒンバスだったのに」

そういえばヒンバスが進化してミロカロスになった時は大泣きをしてしまったな、と思い出した名前。
当時はプラターヌ博士に良いものを見せてあげよう!と言われて持っていたヒンバスにきれいなうろこを持たせるように言われ、そしてプラターヌ博士のポケモンと交換したのだ。勿論あの後ポケモンをまた交換して戻ってきたのだが、あまりに名前が泣くものだから博士もお手上げだったはずだ。
ついでにいえばヒンバスが進化して泣いたのだが、嬉しかったわけではない。
思い出しているとルカリオが走って傍により、周囲を警戒する体制にはいる。それに応じで他のポケモンも警戒態勢に入り、名前にも緊張が走る。ワイルドエリアで命を落とすトレーナーは少なくない。レベルが違う野生のポケモンが出てくれば命に係わる。

「見つけたぞ名前!お前一人で勝手に行動するな!心配しただろ」
「……キバナ、さん?」

方角からしてナックルシティかエンジンシティからフライゴンとそのトレーナー。
おそらくホテルから来たのだろう、トレーナーのキバナは苛立った様子だがフライゴンはこちらを見てニコリと笑っている。
キバナから上手く逃げることが出来たと思ったが、どうやらそう上手くはいかなったらしい。
大きな羽音と共に降りてきて何か物言いたげにした後、大層呆れたと言わんばかりに大きな溜息をつかれた。

「………おはようございます」
「ああ、おはよう。オレ様が言いたいことわかるか?」
「そうですね…朝食なら食べました」
「そうかー!偉いぞー!なんていうと思うか?」
「……………」
「おい待て、今本当にわからないって顔したな、マジか?マジなのか?嘘だろおい」
「ホテルのチェックアウトを一人でしたことでしょうか」
「わかってるじゃねえか!!」

それに関しては名前は他人に言われる筋合いはないと考えている。
博士に頼まれたのだか知らないが、名前は休暇という名目で一応はいるのだ。それに名前が頼んだわけでもない監督役がいるのも不服だ。
名前はできれば一人になりたいのだ。

「あのな、ワイルドエリアは危険なんだよ。わかるだろ」
「なのでこうして周りを固めています」
「なんで勝手にチェックアウトした」
「せっかくガラルまできたので、前にゆっくりできなかったので大自然の中で遊ばせていました」
「な ん で チェ ッ ク ア ウ ト し た」
「一人になりたかったからです」

名前は内心諦めて本心を告げた。誤魔化しきれない、というよりも誤魔化しても何度でも同じ質問で攻めてくると感じたからだ。
2度ほどポケモンバトルで対戦しているが、できれば個人としてのバトルは避けたい。
穏便に済ませられるなら穏便に行きたい。休暇で揉め事はしたくないし、相手はジムリーダーだ。今ガラルに居る間は関係の悪化は避けなければいけない。
キバナはキバナで名前があっけらかんと、悪びれる様子もなく「一人になりたい」と言う言葉に驚いている。

「……ひとりに、なりたくて?」
「…………はい」
「ひとりになりたいの?」
「はい」
「…………でもな、一人でワイルドエリアは危なくてな」

だんだん力ない言葉になっていくキバナ。
危ないというワードに反応して名前のポケモンたちが「自分たちが見えないのか」言わんばかりに戦闘態勢に入る。威嚇だとわかりつつも名前は「やめなさい」と窘めるが、あまりに危険だの危ないだと言われて自分の能力を侮られたと少々不満そうである。

「………」
「………」
「…ナックルシティいかね?」
「行かないです」
「寒いだろ?」
「ファイアローが居るので」
「腹減って…ないな」
「ないです」
「…………」
「…………」
「……バトルタワーにレンタルポケモンいるけど見ねえ?」
「見なくていいです」
「ポケモン好きだろ?」
「好きですけど今はいいです」
「…参った、降参だ降参」

フライゴンをボールに入れると名前が座るイスまで近づき、名前のポケモンたちに嫌な顔をされるのも気にしない様子でそこに座り込んだ。

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