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pkmn2 (12/20)
再びガラル

「…本当に来てしまった」

二度目のガラル。最初の時とは手持ちポケモンにルカリオがいなくて、名前の心が違った。
あれから数日、仕事の引き継ぎに準備にとてんやわんやしてどうにかやってきた。いや、やって来てしまった。名前には正直どうしてまた自分がここに来ることになったのか理解できていない。確かにまた来たいと思っていた、しかしこんな半強制的な展開でなんて思っていなかった。
はあ、と大きな溜息をひとつついて大きなキャリーケースと引っ張る。
そしてあの時視た大きなモニター。あの時あの二人のバトルを見て心が躍ったのだ。
今思えばポケモンバトルなんて見慣れているはずなのに、どうしてあの時あそこまで心が躍ったのだろう。まるで出会うべきして出会った運命の様に、というには少々大げさかもしれないが、それでもあの時名前の心を動かしたのは事実。
ふと腕時計を見れば、まだ到着して30分も経っていない。
あの二人には数日後という曖昧な事しか伝えていないし、何より名前は財団管理の携帯しか持っていなかったので連絡も取っていない。アレは財団ものなので名前が好きにすることはできないからだ。
さてさて、どうしようかな。と思ってあのモニターを眺める。
もうチャンピオンではない、というダンデの言葉通りもうあのユニフォームを着たダンデの姿は映っておらず、その代りに子供の姿がよく映る。新チャンピオンなのだろう、まだその顔は子供らしい子供だ。
すると腰につけていたボールが震え、どうしたのかと思うと見慣れた人が視界に入る。

「あ…」
「ようオネーサン、今ひま?オレ様とお茶しない?」
「キバナさん…」
「そう、キバナ様。バーネット博士から連絡来ててな。迎え来たぜ」
「………お一人、ですか?」
「まあな。ダンデの所にも行くぜ?アイツ帰ってからも名前とバトルってうるさかったんぜ?勘弁してくれって感じでよ」

ひょいとキャリーを奪われそうになったのを名前は寸前で「大丈夫です、私が」と言えば「オレ様女の子に荷物持たせる野暮な事させねー」と長い腕で捕まれて、ニコニコとして奪われてしまった。

「いいんですか?えんじょうってやつ、しませんか?」
「お、炎上の意味わかった?」
「調べました。ついでにキバナさんがすごーくモテることも知りました」
「変装してるから大丈夫だろ」
「変装…」

名前に一発で見抜かれたが、まあそこはご愛嬌というところなのかもしれない。
少しだけ悪戯っぽく笑ってキャリーを引きながら空港のカフェに。どうやら本当にお茶をするらしい。
恐らく長旅の名前を労っての事なのだろう、「ここはカフェラテがオススメだぞ」と名前を椅子に座らせて注文に行ってしまった。
ここまでしてもらう事に心当たりがない名前にしてみれば、もうどうしようもなく申し訳ない気持ちで「お金は出した方が良いのだろうか、でもな…」と財布の入るバッグに手が伸びたり戻したりを数回。そんな事をしているとキバナが戻り「金払えなんて言わねーよ」と言われてしまった。

「すみません、色々」
「なに、アローラで世話になったしな。気にすんな」
「あの、この後ポケモンセンターに行きたいのですが」
「案内するぜ、まあ先に名前が休憩してその疲れた顔を回復してからじゃないとポケモンも心配するぜ」
「…疲れて、ます?」
「ますなー。まあ飛行機の移動も案外疲れるからな。ホテルはスボミーインか?」
「はい、エンジンシティの。前回のジムチャレンジ以来です」
「あそこは提携してるからな、今はオフだから平常運営でまた違うだろ」

お礼を言ってからラテに口をつけると、甘い。どうやら砂糖が入っているらしい。
アローラよりも涼しい気候には合っていると思うし、名前から見ても女性が好きそうな甘さだ。
しばらくそこで雑談をして、ポケモンセンターへと向かう。
名前自身がつかれるのだからポケモンだって疲れているはず。そこで回復してもらってからボールから出してアローラからガラルに来たよと改めて報告をする。

「みんなお疲れ様。まだ移動が続くけどもう少し我慢してね」
「にしても、前から思っていたがガブリアスだけ異色だな」
「フカマルの時はそうでもなかったんですけどね。私の所にきてからすぐ進化して、こんなに大きくなって…でも性格はフカマルの時と同じで甘えてきますけど」
「ま、性格は変わらんわなー」

くくくっと伸びてから順番に甘えるように名前に近付くポケモンたち。
まるで自分は大丈夫、もう少し我慢する。という様に見える。
キバナにもアローラに行った際のポケモンたちの様子を思うかべるとよく分かるシーンだ。心配して出して、ちょっと疲れた顔をしたポケモンたち。順に寄って来ては甘えていた。

「よし、じゃあポケモンしまったらダンデのトコ行くか」
「ホテルではなくてですか?」
「チェックインまでまだ時間あるだろ」
「…何故それを」
「だいたいチェックインの時間なんてどこも似たようなもんだろ…」
「……そう、なんですか」
「そうだよ。多分バトルタワーに行ったら即バトルだと思っとけ」
「え」
「なんならオレ様と組んでダブルバトルでもいいぞ?オレ様と名前対ダンデで」
「……あの、私一応は休暇で」
「休暇ではバトルしちゃ駄目なのか?」
「いえ…そんな事は…」
「んじゃ、行くぞ。ダンデが待ってるぜ」

名前が「バトルはいやー」という虚しい抗議はキバナの大きな足音でかき消され、名前は軽々とアーマーガアのタクシーに投げ込まれた。

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