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「#エロ」のBL小説を読む
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pkmn2 (11/20)
お誘い

「明日帰っちゃうの寂しいわ」
「もっとリーグやジムについて聞きたいが、それももう終わりか…」

二人の旅行の最終日が明日にせまり、明日の午前の便でガラルに戻る。
昼を一緒に食べようとまたククイ・バーネット夫妻に誘われて名前も一緒に預かる事になって食べている。

「そうだ、お二人まだ新婚旅行行ってないですよね。この際ガラルでスタジアムにバトル観に行くって言うのはどうですか?」
「あ!それいい!」
「ジムチャレンジのシーズンはもう少し先ですよ」
「そうだな…時期じゃないとスタジアムでのバトルはあんまりないな」
「じゃあ名前も一緒に行きましょうよ」
「いや…どうして私がお二人の新婚旅行に同行するんですか…」

そう言えば二人は「確かに」と納得した様子。仕事ならまだしも新婚旅行に部外者が入っては駄目だろう。よくしてくれるのはありがたいが、線引きは大切である。

「名前が一緒ならガラル案内してくれると思ったのに」
「私案内できるほど詳しくないですよ。そもそもあの時本当駆け足で行ったので観光なんてできてません」
「一番印象に残ってる事はなんだ?ガラルで」
「………リーグでの、ダンデさんとのバトルですね」
「あれ今でも話題になるぜ?一番にオレ様のジムまできてサブリーグ駆け抜けて本リーグでまたオレ様を負かし、そんでダンデを一騎打ちまで追い詰めたくせにそれっきり姿を現さない幻のトレーナーってな」

人指を立ててくるくると回しながら語るキバナ。
当時の話をざっくり言えば時間が無かった名前は全ての時間をバトルにかけて常に全速力で取り組んだ。バトルが終わった後の人だかりを避けるために出口を変えてみたり、大通りのわき道を選んで走った。
ガラルのニュースは見る余裕もなく、次のジムの位置の把握とタイプ対策に全力を注ぎ、宿泊施設よりもキャンプで節約。それ故誰かに声を掛けられると言う事はなく、自分がどのように言われているかも知らなかった。

「オレも君とのバトルは覚えているぞ!あれほど興奮したのは久しぶりだったな…キバナ以外であんなに追い詰められたのも」
「ファンも多かったんだよな」
「ああ、スタジアムに名前の横断幕が結構あったな」
「それにスポンサーも名前の事狙ったな。ダンデとのバトル終わって契約ってなった時にはもういなくて、あれは騒ぎになったな」
「へー!凄いじゃないか名前。そんな事一言も言ってなかったのに」
「……私も初めて知りました」
「え」
「は?」

自分の事のはずなのだが、まるでそうではないかのようにしている。それもそのはず、名前自身本当に知らないのだ。あまりにもどうやってジムを攻略し、本選に出る方だけを考えすぎたが故に。

「は…嘘だろ?お前あれだけ話題になってたんだぞ!?」
「人違い…では?」
「ない!それだけはない!!オレ様だって注目選手で名前をあげたんだ、あの時その顔で同じヤツいねーよ!!」
「…………」
「…………」
「名前、ごめんね…もっと休暇用意してあげればよかったわね…」
「あ、いや、そんなことは…ジムチャレンジは、棄権もできたので、私が勝手に急いでいただけで。それに十分です、あんなに好きな事できて全速力で走ったので」

釈明するも難だが居心地が悪くなる一方の名前。
バーネットは嘆くしガラルの二人には信じられないという顔をされ、ククイには酷く曖昧な笑顔で見られている。
期間限定でどこまでいけるか。というのが当時の名前の全てだった。なので余計な事はしないし余計な事をいれる事もしなかった。ただただどこまでいけるかを試さんが為に走りに走り、極まった。

「…………」
「そうだ、名前。君、またガラルに来ないか?」
「え?」
「今はもうチャンピオンじゃないがバトルタワーというものをやろうと思っている。それを手伝わないか?」
「手伝いません」
「早!」
「私財団で働いているので…はい。それにバトルよりもポケモンの世話の方が好きなので」
「はあ!?嘘だろ?アレだけのバトルしてた人間が!?オレ様のポケモンメタメタにしたのに!?」
「時間がなくて…」
「じゃあバトルだ!バトルをしよう!オレが勝ったら一緒にガラルでバトルタワーの運営しようじゃないか」
「それズルくないですか?元とは言えどチャンピオンに勝つって無理では…私実際一度負けてますし」
「負けるのが恐いのか!」
「はい。一方的ですし」

熱の入り方が真逆の二人。それを見て最初は呆気にとられていたククイとバーネットも次第に面白くなったのか今では二人で腹をかかえて笑っている。それに比べてキバナは真面目にダンデを応援している。ただダンデを応援したところで名前の意思は変わらない。何よりそんな急で一方的な事が許されるはずがない。それに名前にはガラルに行く意思もないし理由もない。もう名前の休暇は終わったのだ。

「いいじゃない、ガラル!行きなさいよ」
「バーネット博士?」
「だって観光とかポケモン捕まえたいとか言ってたじゃない」
「よし!決ま「りません!」
「実はな、名前あれからまとまった休暇取っていなかっただろ?ビッケさんやルザミーネさんから相談されてたんだよ」
「………そう、だん?」
「お、これは流れ変わったな」

ニヤニヤするキバナと何故かバトルバトルと騒ぐダンデを無視しながらバーネットとククイが続ける。
どうやらその相談とやらは名前のあずかり知らぬところでされていたらしく、名前には皆目見当がつかない。休暇というならば週にあるし、長期の休暇を欲しいと思った事はない。あの時はあの時、特別なモノだった。

「あれから長期休暇取ってないのは問題だから、あれから今までの分ドーンとお休みしなさい名前!」
「ついでにガラルでチャンピオンになってこい!」
「……は、はい?」
「エーンジョイ!よ、名前!」
「エーンジョイ!だ、名前!」
「いや、いやいやいやいや、な、なんですかそれ!聞いてませんけど!?」
「よーし、名前決まったな。まあまだオフシーズンだからジムチャレは無理だがナックルジムで雇ってやるよ」
「いや!バトルタワーで仕事をしよう!君ならいいトレーナーとして良いバトルが出来るはずだ!」
「待ってください!百歩、百歩譲って休暇はいいとして、どうしてガラルで雇用されるような話になっているんですか!?」
「君の才能を何もしないでいるのは勿体ない!是非バトルタワーで!」
「そうそう!オレ様のジムトレになると……待て、そうするとオレ様バトルできなくなるじゃん…」

それからガラルの二人がぎゃあぎゃあと言うのに対抗するように名前も反撃をする。それがまた夫妻にとって面白いのか二人で腹を抱えて笑うし名前は「笑い事じゃありません!」と声を荒げる。
そんな事が延々と続き、気付は外は真っ暗になっているし料理も冷めている。
ただダンデだけの興奮が冷めやらず、バトルバトルの一点張り。名前は今バトルは関係ないと思いますけど、とその攻防が主だったのだが。
名前の意思というより、休暇取ってないから休暇でガラルに行け。と半ば強制的にガラルに行くことになってしまった名前。
それを喜ぶガラルの二人とは反対に「私別に休暇はいらないんですー!」という名前の虚しい叫び声が島に響いた。

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