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pkmn2 (10/20)
知らないところの話

「戻りました」
「おかえり」
「あ、名前おかえり」

一日アローラを案内した名前。勿論一日では案内しきれないが回れる範囲と見れるポケモンの生息範囲を考慮して時間いっぱい回ってきた。
荷物は朝のまま夫妻の家に置いたままなので、お土産を持って戻ってきたのだ。

「あーマラサダだ」
「お二人はどうでした?アローラは」
「ガラルとは違ったポケモン、風土で面白い!今日はホテルに宿泊するがまた案内を頼みたいくらいだ」
「オレ様ハラさん以外の島キングってやつが気になるな」
「アーカラに行ったのにライチさんに会わなかったのか名前」
「行ったんですけど留守で」

留守じゃ仕方ないな。そうね、留守だもん。と対して気にするでもなく、仕方がないで終わらせる二人。
アローラ特有のモノなのか、何か不都合があっても「仕方がないよね」とゆるく終わらせてしまうし、誰もが穏やかだ。ついでに言うならガラルとは違い、リーグがないしジムもない。島キングやクイーンと呼ばれる存在は憧れというよりも長という側面の方が強いらしい。
牧場のカキも祖父が島キングだったらいつか自分もという夢があったが、それはガラルのジムリーダーになりたいという夢とはまた少し違うものを感じた。

「お二人は明日はどこへ?」
「名前と会う前の予定では特に。適当にまわって適当にするって感じだったんで」
「空港で名前が見つけてくれて助かったぜ、こんなに詳しく見れるとは思ってなくてな」
「名前も成長したわね、アローラを案内できるようになったんだもの」
「ルザミーネ代表の仕事やバーネット博士の仕事に付いて行ったりしていましたから、当然です」
「いやー、バーネットが世話になるね」
「なによー!ククイくんだって名前に世話になっているくせに」
「私はお二人にもお世話になっていますので」

いつの間にか名前のボールからでて荷物をまとめていたルカリオが準備完了とばかりに名前のバッグを持って一鳴き。
普段そんな事をする様な性格ではないのだが、この時ばかりはそんな事をしているので名前は驚いた。

「どうしたの、ルカリオ…準備、ありがとう」
「普段あまり出かけない名前を心配したのかもよ」
「施設に籠ってばかりだからな」
「で、名前は明日仕事なのか?」
「はい」
「ふっふっふー!そう思うでしょ?」
「思うもなにも仕事です」
「私とククイくんで名前を明日お休みにしましたー!」

いえーい。とハイタッチする夫婦に名前はあまりの事に驚きを隠せない。
この流れは、と思っていると名前の予感は的中したのだ。
「明日はまた観光案内おねがーい」と言われてしまった。
休みはいい、いやあまりよくはないが。と名前は突然の事に悩む。それを察したルカリオがポンと肩を叩く。

「……あの、明日…実は担当していたポケモンが帰る日で…その………」
「………それ、本当か名前」
「はい……ロコンが」
「あのロコンね。そっか…明日だったっけ…」
「そのロコンがどうかしたんすか?」
「名前が担当していた子で、明日自然に返す予定だったんだ。怪我が酷くて保護した当時名前がつきっきりで見てて…日を変更することはできないし…」
「それ、オレ達も付いて行きたいんだが…どうだろう?なあキバナ」
「賛成ー。ポケモン保護活動の参考になりそうだし」

ではそういう事で明日名前はやっぱりご仕事です!という何とも理不尽というかなんというか。そんなどんでん返しのような、緩急が酷い。何が酷いというか名前が蚊帳の外と言う事だ。ルカリオだけが名前に同情の目を向け、他は明日の計画を立て始めている。





「アローラは暖かいんじゃないのか…」
「アローラは基本は暖かいですが場所によっては雪も降ります。アローラのロコンは氷タイプですし」
「………寒いなんて聞いてなかった…」

翌日ヘリでホテルに迎えに行くと、名前に開口一番「そんな格好だと風邪ひきますよ!」だった。観光と言う事でそんな防寒具があるとは思っていなかった名前なので成人男性二人分の防寒具を用意しておいたのでヘリに乗ってもらってから着てもらう。
最初こそ笑っていた二人だが、目的地に近付くにつれてだんだん顔色が悪くなる。
あの暖かな気候から徐々に暗転し、雪が降っているのだから仕方ないと言えば仕方ない。
サンサンと日光が降り注いだ地から雪が支配する土地になったのだから。
ラナキラマウンテン。リーグを創設してしばらく経つが、たくさん人がいるという土地ではないので比較的閑散としている。ガラルの様にエンターテイメント性が高いワケでもなく、またバトル中継さえもないアローラでは島巡りはやってもリーグにでる事自体まだマイナーなのだ。
ヘリポートに到着すると他のスタッフと一緒にポケモンが入ったコンテナを降ろして目的地まで運ぶ。ボールに入ってくれれば楽なのだが、あくまで財団は保護を目的としているのでそれは出来ない。
少し人が入るには大変な所がいつも保護したポケモンたちを自然に返すポイントになっている。そこまで行くと保護したポケモンを返す準備に入った。

「……では蓋をとってポケモンを外へだして」

リーダー格のスタッフの指示に従い、名前も蓋を開けて中にいたロコンを出す。
私設に保護された当初は白い毛並が無残にも赤く染まり、艶もなく泥だらけだったことを思えば今はなんと美しくなった事だろう。酷く警戒していたが今では触れるくらいに落ち着いた。
足が地面に付くと今まで冷たくなかったのに急に冷たくて驚いたのだろう、小さくそして短く鳴いた。

「ほー、アローラのロコンは白いのか」
「氷タイプですから」
「ガラルだと炎だからな、ロコン」
「キュウコンになると他の地方のロコンとまた違った美しさがありますよ」

きゅっと丸まったロコンを再度地面に降ろす。
今まで施設では気温は低めに設定してあったが雪まではなく、久しぶりの雪に戸惑っていた様子だったがすぐになれて辺りを散策し始めた。
しばらく他のスタッフも担当したポケモンたちの様子を観察し、問題ないと判断した者から順にヘリに戻る。それが何時もしている保護したポケモンを返す順序だ。騒がず、そして各自戻してもいいと判断してからその場をさる。それがルールだ。

「…私達も戻りましょう」
「いいのか?」
「はい。良いトレーナーと出会えればいいですが、私たちは保護をして返すのが仕事ですから」
「……そうだな、行くか」
「ダンデさん、そっちは崖です、こっちですこっち」

先頭になって戻ろうとするダンデに方向の違いを指摘する名前。
確かにここは慣れていないとわかりづらいが、スタッフの足跡があるのに何故新雪の方向に行こうとするのか。

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