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「#エロ」のBL小説を読む
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pkmn2 (9/20)
1対2と2対1

「今日一日観光案内してあげたらどうだ?」

そのククイの一言で名前が二人の観光案内をすることになった。
聞けばホテルの予約はしてあるが、初日キャンプにするという予定だったからよかったらしい。確かにホテルの話はしていなかったと名前は朝食を頂きながら黙って食べながら思った。
正直名前は自分がどうして観光案内をしないといけないのだろうかと思ったが、上司の命令ならば仕方がない。
もしかしたら「友達」という事なのかもしれないが、名前にとってガラルの元チャンピオンとジムリーダーという雲の上の存在に自分が友達という称号を貰うなんて何かの間違いではないかと思っているのに、悪乗りが過ぎるのではと思った。

「そうですね…では、カキくんのお家の牧場なんてどうでしょう。モーモーミルクのソフトクリームが絶品ですよ」
「今朝のガキの家か」
「牧場か…あの子のリザードンに興味があるぞ」
「では牧場に行きましょう、島に行くには船に乗らなければですが…お二人は飛行ポケモンがいますけど…ポケモンと船、どちらにします?」

二人が目を合わせて少しの沈黙。
そしてニイと笑って声を合わせて「ポケモン!」という。ある程度は予測していたが、まあ案の定と言う事だろう。
名前も「ですよね」と頷く。

「でも私飛行タイプはファイアローだけなので…そうなるとファイアローを貸しますのでお二人で」
「フライゴン乗せてやるよ」
「え」
「リザードンが良ければ歓迎するぜ!」
「………ファイアロー、カキくんの牧場までの案内をお願い」

ボールを投げてファイアローを出すと、ファイアローはクーと伸びてから返事をする。
そしてそれに習う様に二人もボールを投げてリザードンとフライゴンが姿を現す。
さて、と困ったのは名前。ガブリアスが飛べればいいのだが生憎それができない。
お言葉に甘えて乗せてもらえたらいいのだが、相手が相手だ。友達だと言ってくれるのはとてもありがたいのだが、それに甘えてしまっていいのだろうか。しかし牧場のソフトクリームは食べたい。船では大幅に遅れてしまう。

「ニンフィア、お二人がね、ポケモンに乗せてくれるって言うけどどっちに乗せてもらえばいいと思う?」
「おいおいニンフィアに相談かよ」
「名前はポケモンに相談する派か」
「お?」
「うん?」

ニンフィアは少し考え、思いついた!と言わんばかりに笑い、キバナをグイグイと押す。
その力に押されるがまま歩くとダンデの横に付け、名前は名前で一人で立っている。

「…あ、もしかして私が一人でポケモン借りて二人を一緒にって事?」

その通り!と声高らかに可愛らしい一声。
それには誰もが思っていなかったので一斉に吹き出して笑ってしまった。今の話は『どっち』が名前を『乗せるか』であって、人の組み分けを相談したのではないからだ。
しかしニンフィアもニンフィアで自分の主たる名前を男と一緒にしたくなかったのかもしれない。
名前自身ライドポケモンを使う事はあるので、それ用であれば不安はない。それ専用であってポケモン自身もそれを理解している。
しかしそうではないポケモンは違う。ましてジムリーダーや元チャンピオンのポケモンは基本戦闘専用。移動に使われるとしてもトレーナーが居るから対応できるのであって、そうでない人間を乗せてやるほど気質は優しくはないはず。

「ニンフィア…それは多分無理だよ」

名前が困ったようにニンフィアに言えば、ニンフィアは「なんで?」と言わんばかりに頭を傾げる。
ニンフィアは名前のポケモンでお互い信頼しているし、名前の手持ちも信頼している。しかしそれは名前とニンフィアの関係であって、名前と他のポケモンでは話が違うのだ。それを知っているはずなのだが、財団で長い時間生活をしているうちに忘れてしまったのだろう。あそこでは名前に懐くポケモンが多いのだ。
そんなニンフィアをよそにフライゴンが名前に寄ってきて脚をつつく。

「ん?なに?」
「フライゴン誘ってるな。んじゃ、オレ様が」
「うわっ」

脚をすくう様に器用に自分の背に乗せるフライゴン。すると「どうだ」言わんばかりに満足そうに高らかに一鳴き。
自分の主人であるはずのキバナを乗せずに羽ばたき、地上数メートルを少しばかり旋回する。それはまるで「人の一人くらい自分だけでも乗せられるよ」という意思表示の様だ。
その姿を見たニンフィアは喜び、持ち主とそのライバルは目を大きく見開いて驚いている。

「フライゴン、ありがとう。降ろしてくれる?キバナさんがビックリしてるから」

いいの?言わんばかりの目線に名前は頷く。
ライドポケモンには慣れているし、なんなら飛行ポケモンにも乗る事自体には慣れている。しかし主が居るポケモンに主を差し置いて乗る事はマナー違反だろう。
ゆっくり降りてもらい、名前自身もフライゴンから降りる。

「すみません…」
「いや…」
「すごいな名前!君は人のポケモンに乗れるのか?」
「あ、いえ…ライドポケモンには慣れていますけど、こんな他人様のポケモンに一人で乗る事なんてないです。あ、でも借りることはありますけど」
「おいフライゴン、ここは名前乗せたらオレ様乗せるところだろ」

ふりゃ?と頭を傾げたフライゴン。どうして自分がトレーナーにそんな事を言われているのかわかっていない様子。
不注意だったとはいえ、万が一名前が落ちてしまえば責任問題になる。それがポケモン自身が判断した事だとしても、だ。

「大丈夫だったか?」
「はい、大丈夫です。フライゴン、気持ちは嬉しいけど危ないから駄目」
「そうだぞ」
「キバナさんに許可をとってから自分で乗るから」
「そうじゃないだろ」
「ライドポケモンには慣れているので、一人でも乗れます。今回はいきなりだったので困りましたが、今度は大丈夫です。キバナさんが貸してくれれば、ですが」

何という期待に満ちた目だ。というナレーションが付そうなくらいの名前の目。
名前も最初は消極的だったが、一度乗せてもらえればこちらのモノと言わんばかりに一人で乗れますけどとアピールをし始める始末。それに乗っかるフライゴンも一緒に頷く。そしてニンフィアも。ファイアローはもうどうでもいいから早くしてくれないかと呆れている。

「……オレ様、ダンデと乗るの?」
「駄目なんですか?」
「オレはいいぞ!」
「大の男が二人でリザードンに乗るってのが絵面が悪い!」
「お二人ともとても美形ですよ」
「そういうんじゃなくて!」
「リザードン、二人だと大変ならフライゴンですか?」
「フライゴンいいな!乗ってみたいぞ」
「ダンデは黙ってろ!」
「リザードンならライドポケモンでよく乗るので」
「えー?なに?オレ様だけなの?ダンデお前オレ様と一緒でいいの?」
「何か問題でもあるのか?名前が一人で大丈夫だというなら無理に一緒に行く方が問題だと思うが」
「急に冷静になるなよ!」
「あとキバナは炎上に気をつけろよ」
「お前に言われたくないわ!」

炎上ってなんですか?ポケモンの技ですか?と名前が言えば、キバナはもうやる気が失せたのか「ダンデと一緒でいいや」と投げやりに答えた。

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