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pkmn2 (8/20)
認識の違い

「名前…出て…」

と言われて朝夫妻の家のドアがノックされたので代わりに出た名前。
そこにはカキがモーモーミルクが入っているケースを持って立っていた。

「カキくん、おはよう」
「お、おはようございます…なんで名前さんが?」
「昨日色々あって泊まる事になって」
「へえ…あのテントは?」
「お客さん。私も外で寝ようと思ったんだけど駄目だって言われて。配達?お疲れ様」
「そうそう、これバーネット博士から注文受けてたモーモーミルク」
「サインは?」
「要るけど…」
「じゃあ貰ってくるね」

昨夜はベッドまで行く気力がなかった夫妻がリビングのソファで沈んでいる。
うううう…と唸っているバーネットをツンツンとつつき、サインを書いてくれるように頼む。相変わらず唸っているものの、頑張ってサインを書いてもらい、それをカキに渡すと「字がへろへろ、大丈夫なのか?」と大層不信がられた。

「昨日お酒飲み過ぎてるの。今日休みだからいいけど、それにしてもね。カキくんのリザードン撫でてもいい?」
「ああ、勿論。リザードン名前さんの事好きだから喜ぶよ」

サインを渡してミルクを受け取る。恐らくはいつもの自宅用なのだろうが、昨日は急に人を泊める事を決定し、そしてあそこまで酒を飲んだので色々想定外なのだろう。普段カキも配達に来るがここまでどんよりとしている事はまずない。
まあ人間そんな事もあるさ、と笑いながらリザードンに近付く。気づいたリザードンは挨拶だとばかりに小さく鳴いた。朝から騒がしくするのは良くない事だというのをよく理解しているらしい。さすが配達を手伝っているポケモンだ。

「久しぶりリザードン。元気だった?」
「しばらくこっちに?なら牧場来てくれよ、他の皆も喜ぶし」
「そうだね…久しぶりに来たし、時間あれば是非」
「ホシも喜ぶぞ!」

そんな話をしながらリザードンを撫でているとテントが揺れて個々のテントから大人が二人出てきた。

「リザードン…昨日、確かボールに…?」
「おはようございます、このリザードンはダンデさんのじゃありませんよ、大丈夫です。私もちゃんと見ましたから」
「そうだった、よな。うん、おはよう」
「…はよ」
「おはようございます、二人とも。朝食はまだですが顔を洗ってください」
「名前さんの友達、ですか?」
「ううん、違うよ」
「え」
「あ?」
「はい?」

三者三様、ではないが名前とそれ以外の大人で反応が違うと言う事に気付いたカキ。しかし名前は気にするでもなくリザードンをいつもの様に撫で、リザードンも名前に撫でてもらって嬉しそうにしているが不穏な雰囲気を察した様子。
なんとなくその温度差を察しながらも無駄に突っ込んでは火の粉を被りそうだと感じたカキは早々に「次の配達があるから、また」とリザードンに乗り、飛び立った。

「ダンデさん、そっちは博士たちの家ではないです、こっちですこっち」
「あのリザードン、荷物運びをするのか…ジョブか?」
「いえ、あの子はライドポケモンで乗る事を重視しているポケモンです。他にもバンバドロが足場の悪い場所の移動に使われたりしています。ガラルとは違う形態です」
「んで、ちょっち聞きたいことがあるんだが…いいよな名前」
「はい?」
「オレ様たち、お友達だろ?」
「え?ああ、お二人はお友達だと思います」
「いやいや、オレ様、ダンデ、名前が。だ」
「……そう、なんですか?」

それは初耳だ。と言わんばかりのリアクションの名前。
あれか、同じ釜の飯を食えば仲間という考えの元そういう事になったのかと名前は考えるが、まあその定理ならそうかもしれないと自己完結をする。

「……空港でたまたまって、少しお話して……お友達、ですか?」
「…………確かに」
「そうだな。オレさま達特に名前と親しくはなかったな。でもな」
「ここまでくれば」

十分友達だろう。と大の男が二人に女一人に子供のような事を朝っぱら大声でいうのだから笑ってしまう。
当の二人はニコニコというよりもニヤニヤという顔に近いし、名前は名前で呆気にとられて間抜けにも「は…はあ…」と少し引いている状態だ。
しかしガラルでの元チャンピオンと最強ジムリーダーが自分に向かい「ともだち」という現実を徐々に理解し始めたのか、「え…う…ん?え、友達ですか?え?」のびたり縮んだり、まるでヌメラの動きのように動揺し始めた。

「と、とととともだち!?え、おう!?」
「つーことで、写真とるぞ」
「え、な写真?な、え?撮ってどうするんですか?」
「SNSにアップする」
「えすえぬえす?とは…?」
「は!?お前知らねえの!?嘘だろ!」

キバナのリアクションに名前はただただ困り、それを見て笑っているダンデ。
その声が家まで届いたらしく少し復活したバーネットが顔を覗かせてその様子をみて笑っている。そしてククイを呼んで「あれ見て」といって一緒に観て、一緒に笑う始末。
名前にとってはそんな笑われるような場面ではないし、むしろ助けてほしいのだが、どうやら伝わらないらしい。しかも呑気に手まで振るのだから手におえないとはこういう事だろう。

「スマホは!?持ってんだろ!?」
「スマホ…ああ、あれですか?あれは施設内で使うもので個人の物ではないので」
「…うそ、だろ…」
「あの、えすえすえぬ?とは」
「SSNじゃなくてSNSだぞ。ソーシャル・ネットワーキング・サービスの略称でキバナが好きなヤツだ」
「何をするんですか?」
「はー!?」
「オレもよく知らん!」
「嘘だろ!おい!」
「あの、お友達とかえすえむえすとか、とりあえず顔を洗いませんか?朝食の準備をしないとですし」

よく分からないことは追々教えてください、先にしないといけない事が沢山ですよ。ととりあえず名前は落ち着いたふりをして二人に話す。
急にガラルの二人に友達宣言をされて動揺してばかりいられない、まずは顔を洗わせて朝食を食べさせなければ。と未だおさまらない動悸を落ち着かせねばと考えながら動き始めた。

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