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「#エロ」のBL小説を読む
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pkmn2 (1/20)
おいでませ、アローラ!

「あの、ダンデさん、ですよね?」

空港で少しだけ控えめに二人の男性に声を掛けた名前。
その二人組には名前にとても見覚えがあった。一人は前に戦ったチャンピオン、もう一人は高身長の男性。共に肌の色は黒く、活発的な印象を受ける。
ガラル地方チャンピオンのダンデ。それは不敗の伝説を持つ男。
そしてもう一人はガラル地方のジムリーダーの一人、ドラゴンポケモンを使うキバナ。
あれは数年前の長期休暇、その時にガラル地方に行ったのだ。そしてジムを巡ってリーグへ参加するという、その旅の間だけの課題を持って。
当然名前にはガラルに関するツテはない。しかし近くにポケモンの権威の博士がいた。その博士の勧めとツテを頼り、知らぬ土地ガラルへと出向いた。

「君は確か…リーグの決勝で」
「はい!一度バトルを」
「俺も覚えてるぜ!お前さん、たしか…えーっと」
「名前です」
「どうして次の年は参加しなかったんだ?俺もお前さんと戦ったのはあの年だけだったはずだ」
「休暇、というのでしょうか。あの1年だけガラルにいたんです」

1年、そう1年だけの特別な時間だった。
少々疲れていた当時の名前を見かねた知り合いのポケモンの博士が名前に「暫くここを離れて休んだ方がいい。きっといい気分転換になる」と背中を叩いた。そして元々持っていたポケモンたちを連れ、ガラルへと赴いた。
最初は旅行で観光だった。しかし空港で見た、あのリーグ放送が衝撃的で、決定打だった。
空港の案内所でアレは何かを聞き、どうしたら参加できるかを聞いた。勿論空港の案内所の人を困らせたのは説明するまでもないだろう。
とりあえずそのリーグに参加するには推薦状なるものが必要だというのは調べてわかった。
それから博士に連絡して旨を伝えると快く引き受けてくれ、推薦状を書いてくれた。
それを持って事務に走ったのは今でも鮮明に覚えている。きっとあれほどの行動力を発揮するのは今も昔もあの一度きりだろう。

「どうしてここに?」
「私アローラで働いているんです」

ちょっと待ってください。とカバンを探って名刺を取り出した名前。
それを二人に渡して一呼吸置いて「エーテル財団で働いています」と一応の挨拶をする。

「エーテル財団?」
「はい、傷ついたポケモンの保護などをしています。よろしかったら一度来てみてください、私の名刺を見せてもらえれば大丈夫かと思います」
「で、その名前はどうしてあれからリーグに来なかったんだ?あんなに良い成績だっただろ」
「私の成績ご存じなんですか?ありがとうございます」
「まあオレを倒してダンデに挑むのはよっぽどのトレーナーだからな、ついでにダンデをあそこまで追い詰めたのも」

少しだけ意地の悪そうな顔で名前を覗きこむキバナに名前は困ったように笑った。
名前の本心としては、もう少し挑戦したかった様に思える。しかしアローラに戻らなければいけなかった、そう。タイムアップだった。
研究や保護では味わえなかった興奮、喜び、悔しさ。あの一年は一生分の感情が凝縮した存在だった。

「また戦いたいな」
「ありがとうございます、チャンピオンにそう言っていただけると光栄です」
「ははは。でももうチャンピオンじゃないんだ」
「え?」
「そうそう。コイツ負けて元チャンピオン。で、今オレと一緒に旅行ってわけだ」
「確かにチャンピオンだとそうそう旅行なんてできないですもんね」
「…まあ、そんなところだ」

すると名前の携帯が鳴り、誰かと思えばバーネット博士の名前。

「あ、すいません。私仕事に戻らないとなので。もしお時間あれば、是非エーテル財団に来てみてください。失礼します」
「え、あ」
「お、おお…」
「はいもしもし。はい、すみません…すぐに戻ります。大丈夫です、」

小さく手を振りながら名前は電話で博士に謝罪しながら空港の出口まで急いで姿を消した。

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