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大神 (13/15)
大都会、西安京

「クサナギ村より悪い状況…じゃない?」

イッスンに案内されてやってきた西安京。その都では道端で苦しむ人の姿。酷い瘴気というより、この都全体を包み込んでいる気味の悪い霧が悪さをしているようだ。
クサナギ村の瘴気よりも、もっと濃い。名前は思わず鼻と口を手で覆った。

「こいつはにおうぜ!」
「確かにニオイそう…」
「貴族街の方が濃いな、行ってみるか」
「うへぇ…」

本当に行くの?と名前が問えば、アマテラスは行く気満々だしイッスンもそれを止める気が無いらしい。むしろ逆に行く気満々で渋る名前に頭突きのひとつでも食らわせる勢いだ。
渋々名前はアマテラスの後ろを歩いて付いて行く。道すがらの水路と思われる通路に水はなく、ただただ虚しくその道を広げている。人々は苦しそうに蹲り、そして呻いている人が多い。
そしてイッスンが言う貴族街というところへ向かう途中の大きな橋があり、そこにもやはり水はなく、そしてその橋はこちらとあちらを絶つように向こう側が上がってしまっている。そこにはベンケイという武人がおり、どうやら目的とする武器を得るまではその橋は降ろさないと言うではないか。しかもここの水が無ければその武器も手に入らないという。
これには困ったと思っているとアマテラスがピューと駆けて暫く、すると何処からともなく水が溢れて見る見る間に満たされた。そして何処からか釣竿を持ってきたアマテラスはそれをベンケイに渡すと何故か釣りが始まった。
「なぜ…」という名前の独り言は誰の耳にも入らなかったのだろう。ただただ釣りを始めた当人たちを名前は黙って見る他ない。暫くするとベンケイとアマテラス、そしてイッスンが騒ぎ出すと立派な太刀魚が釣り上がった。名前の知識では太刀魚は海水魚ではなっただろうか。ここは川のように見えて実は海なのだろうか…と意味のない事で悩み始めた。
しかし、というのだろうか。この太刀魚が実はベンケイが求めていた武器だったらしく、なんという笑い種だろう。それに一応は満足したベンケイは「約束だ」といって橋を降ろしてくれ、進むことができた。

「やあアマテラス君!そして名前君」
「オイラは無視か!」
「おやおや、いくら虫の様な姿だからって自虐はよくないよゴムマリ君」
「やいやい!どうせこの都の異変の原因もお前なんだろ!観念しやがれ!このインチキヤロー!!」
「ノンノン、これはミーが原因じゃないよ」
「嘘つけ!」
「それよりも、ここもクサナギ村と同じくユーにはちょっとツラいんじゃないかな」
「うわっ」

ずずい、と名前に迫るウシワカ。まさか自分に来るとは思っていなかった名前は思わず仰け反ってよろけてしまった。
それを見たアマテラスがまるで文句があるかのように一吠え。

「おっとソーリー」
「……ん」
「元気がないね、これは大変だ!」
「え」
「霧が晴れるまで休憩するといいよ!おっとアマテラス君にはミーの予言をプレゼント!」

よく分からない予言というか。それをアマテラスに言うと、さあ行くよ。とアガタの森と同じく抱きかかえられてあれよあれよという間にアマテラスと離ればなれになってしまった。
あまりに急な出来事に名前も声もでず、またアマテラスとイッスンも呆気にとられて反応できず、ただただ名前は名前で「うわー!」というなんともふざけた声を出すだけだった。


「ここが陰特隊。ここならあの霧の害も少ないからここで休むといいよ」
「………あれ、天神族…ん?てんじんぞく?なにそれ?」
「あの像かい?ちょっとね、まあここでアマテラス君が戻るまでいるといい。しばらくここに居ることになるはずだけど」
「予言、ってやつ?」
「そうだよ。なんて言ったってミーは人倫の伝道師、ウシワカだからね!そうそう、それに今までその格好で目立っていただろう?やっぱりここではここの格好というものがあるからね、今更ではあるけど準備するよ」
「その格好は目立たないの?」
「これは良いんだよ」
「ふーん」
「あとミーはまだお仕事があるからね、ユーには新人のアベノを護衛としてつけるから」
「護衛?」
「そう、護衛。明日になったら呉服店に行って着物を貰ってそれを着たらいい。きっと似合うよ!」
「…それは、ご親切に、どうも」
「ここの施設は好きに見てもらって構わないよ、ユーは物を壊したりしないだろうから」

それじゃ!と言いたいことだけを言ってウシワカは姿を消した。
しばらくすると、これまた不思議な格好をした青年が顔をだし、「アベノです!隊長から護衛を任されました、よろしくお願いします!」と元気よく挨拶された名前。その元気に圧倒されながらも「名前、です…よろしく、お願いします」と挨拶を返した。

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