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大神 (10/15)
多分悪い人ではない、多分だけど

「ヘイ名前君」
「……不法侵入では?」

瘴気が消え、でも何かあっては危険だからと屋内に居ることを厳重に言い渡れた名前。
フセ姫を先頭に八犬士たちも全員外へ行ってしまった。黙って外へ行ってもバレはしないのだろうが、なんだか約束を破るみたいで気が引けた名前はそのまま大人しく屋敷にいた。
そんな時だった。外を眺めていると不意にインチキ野郎の声が聞こえたのだ。

「冷静だね!感心感心」
「感心すな」
「元気そうで何より。アマテラス君と一緒じゃなかったからどうしたのかと」
「…それ、なに?」
「これかい?水晶のヘビイチゴ」
「………なんでここに居るの」

色々な意味が含まれた「なんでここに居るの」である。
クサナギ村でもあり、フセ姫のお屋敷でもあり、そしてその屋敷の名前がいる部屋でもあり。
唐突なのは名前自身、アガタの森の時点で察して高宮平でほぼ確信的なものがあった。突然現れてケンカのような戦いをして、名前にはよく分からない文句を言い、そして風の様に姿を消している。

「この水晶のヘビイチゴを探しにね」
「窃盗?」
「ノーノー!違うよ」
「じゃあ何てこのお屋敷に」
「名前君が居たから寄っただけだよ」
「不法侵入で?変態ここに極まった…?」
「ユー、口が悪くなってない?どうしてミーに対してそんなに辛辣なの?」
「ご自分の行動顧みてはどうでしょう」
「……おほん、そろそろアマテラス君たちが戻ってくるよ」
「……」
「どうして?って顔をしているね」
「いや、普通に不審者恐いなって思っているだけですが」
「ノープログレム!だってミーがさっきアマテラス君たちと会っているからね!」
「何が問題ないんだろう…話を聞かないあたり?」
「走ってくるはずだから出迎えてあげたら喜ぶと思うよ」
「不審者に絡まれて恐かったって言えばいい?」
「話聞いてる?」
「そのままその言葉返す」
「………」
「………」

睨みあいが続く、わけではない。睨んでもいないのだが。
名前がある意味無表情で淡々としているのに対し、ウシワカはウシワカで色々自信に満ち溢れた出で立ちであり、そして楽しげにしている。
今まで座っていた名前はすっと立ち上がり、ウシワカを無視するようにすたすたと出入口まで歩いて行く。
それを見送ったようにウシワカは名前が外を眺めていた場所から姿を消した。当然名前はそれを知らないし、知ろうとも思っていない。名前はまたどうせ勝手に出ていくのだろうとわかっているからだ。

「アマテラス!イッスン!」
「よう名前姉、瘴気も消えて元気そうじゃねえか」
「ええ、私達がお守りしておりましたから。赤カブト退治、まことにありがとうございました。なんとお礼をしたらいいのでしょう」
「いいって事よ、なあアマ公」

おん!と得意気なアマテラスの一声。
よしよしと名前が撫でると白くて大きな尾が暴れまわっている。
挨拶もほどほどにしてクサナギ村を出て、「そろそろ十五夜だし一度神木村まで行ってサクヤ姉の所でも顔だすか」という。
サクヤという名前に聞き馴染みがなかった名前が誰だというと、ご神木に宿る神様らしい。それでは名前が知らないはずだ。名前にはそういう宗教的を知らないのだから。しかし神様に対して馴れ馴れしいのではないかと思ったが、それはイッスンが神様に対して親しみを込めているから、そうなのだろうとしか。

「そういやスサノオのおっさんがいたんだぜ」
「スサノオさん?そういえば赤ナントカを倒すって言ってたよね、赤ナントカは赤カブトだったのかな」
「どうだろうな。しかもインチキヤローまでいて、得物を盗って行きやがった!」
「……もしかして、水晶のヘビイチゴ?」
「!?なんで知ってんだ」
「いや、フセ姫のお屋敷にいたら入ってきた」
「何もされてねえか!?」
「大丈夫。悪い人じゃないし」
「あ?」
「なんとなくね」

クサナギ村の長い長い坂道をゆっくりと下る。
十五夜といえばお月様という認識の名前ではあるが、どうやら村ではそれなりのお祭りがあるらしい。
お祭りという言葉は子供から大人までワクワクさせてくれるモノ。神木村のお祭りがどんなものなのだろうとワクワクしながら名前は神木村に向かう。
そこに何が待っているかなど、全く知りもしないで。

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