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大神 (6/15)
五犬士/八犬士

「八犬士…」

そのまんま…という言葉を名前は飲みこんだ。
名前が知る八犬士といえば、人間であって犬ではない。そう、名前が知っている物語では、だ。内容までを知っているわけではないが、犬ではなかった、確実に。

「その八犬士を見つけていただきたいのです」
「八犬士を発見し…」
「名前姉?なんだ、インチキヤローに変な事言われて変な暗示にでもかかったのか?」
「ううん、なんでもない。大丈夫」
「名前さん、具合が悪いのであればお休みになられてはいかがでしょう。捜索は凸凹隊の皆様のほうが鼻が利きましょう」

犬だけに。というフセ姫。
ここクサナギ村で巫女様をしている女性を助けると、八犬士を見つけてはくれないかという依頼を受けたアマテラス。おんおん!と返事をしている姿は拒否しているのか快諾しているのかいまいちよくわからないが、どうやらその話を受けるらしい。
ちなみにそれまでの間、ここクサナギ村に入った途端にタタリ場の影響を受けて動けなくなった名前から離れている間の話である。フセ姫と会話をするにあたって名前が休める場所と言う事でアマテラスが名前を背に乗せて運んできたのだ。

「ここの空気では体を悪くしてしまうのは必然でもあります、やはりここは休まれた方がよろしいかと。もしくは事が終わるまで村に入らぬか…」
「でも村の外に置いて行くとインチキヤローがチョッカイだしにくるぞ、高宮平に入った時みたいに」
「悪い人ではない度変態だよね、あの人…」
「インチキっていうんだせ、ああいうのは」
「名前さん、どうなさいますか?近くに八犬士はいると思いますので、見つけていただく代わりと言ってはなんですが、是非お休みくださいませ」
「……でも」

渋る名前に何か思ったのかアマテラスが覆いかぶさってくる。
驚いた名前がくぐもった声で呻くように声をあげると、「観念してここで待ってな」と何故かしたり顔をした様な気がした。
仕方がないのと、実際この村に入ってから具合が良いとはいえない状態なのは事実である。名前は大人しくフセ姫の言葉に甘えることとした。
アマテラスとイッスン、フセ姫いわく「凸凹隊」が出て行ってからはフセ姫とお茶を飲んだりと比較的ゆっくりとした時間が流れた。
雑談のひとつとして「八犬士とはどのような犬ですか?」と聞くとフセ姫の様々な面が見えてきた。人としてはとてもできた人なのだが、どうやらスパルタらしい。訓練の様子を聞くと同じ人とは思えないほどの厳しい側面がありありと見える。
そんな事をしていると、一匹、また一匹とぽつりぽつりと戻ってきた八犬士。名前は勝手に同種か雑種なのかと思っていたが、洋犬という意外な顔ぶれではないか。

「まあ凸凹隊の皆様はなんとお早い!これも名前さんも躾でしょうか」
「え、あ…しつけという、ものはしていませんが…」
「私も是非その手腕を習いたいもの。これから赤カブトを倒そうというのにこののんびり屋では…少々心ごとないと申しますか」
「赤カブト…」
「ああ、そうでしたね。名前さんにはお話しておりませんでした」

赤カブトとは。とフセ姫の説明が始まり、それが終わる頃にはアマテラスたちが戻ってきた。どうやら全員見つけたようなのだが、八犬士というには三匹ほど足りない気がする。
すると案の定足りないだというではないか。
八犬士といいつつ五匹ではなんとも見かけ倒しならす名倒しだ。

「近くに来ているのには間違いないのです…凸凹隊の皆様、残りの八犬士を見つけてはいただけませんか?」
「そんな事言ってもよ…このアマテラス先生が頷くか…」
「アマテラス、やるって言ってるよ?」
「な、なにぃ!?ほ、ほんとだ…って、なんでぇ名前姉、アマ公の言葉わかるってのか?」
「わからないけど、顔が」
「このポアっとしてんのが?やる気?冗談言ってんじゃねえや、といいてぇところだがアマ公やる気みたいだな」
「おお!これは有難い。では引き続きお願いいたします。名前さんは今居る八犬士を躾けていただきたいのですが」
「え」
「駄目でしょうか…この凸凹隊の様に、強く、そして勇ましくして頂きたいのです!」
「……あのよう、フセ姫の姉ちゃん。アマ公もオイラも別に名前姉に躾られてるわけじゃねえぞ……なあ」
「うん…」
「なんと!?このように不思議な格好をなさっているからには只者ではないと思っておりましたが…只者なのですか」
「はい、只者です」

酷く驚いた様子のフセ姫。どうやら名前が本当に凄腕の躾師か何かと勘違いをしていたらしい。名前が一応は言っていたが、どうやら謙遜をしているのだと思っていた様だ。しかしながら謙遜でもなく事実。それを知ったフセ姫は少々気落ちした様ではあったがそれ以上名前を引きとめることもなく、「どうぞご無事で…」と送り出してくれた。

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