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大神 (5/15)
蔦の遺跡と丸太と釣竿

「…戻ってこないねぇ」
「あのシロワンコお姉さんのワンコだろ!」
「私のってわけじゃ…ないんだけどね」
「飼い主のお姉さんのいう事聞かない悪いワンコ!カギ持って遺跡に行って!梅太郎を!!助けに行けない!!」

ぷおーぷおー!と怒りの音を荒げながら小さな体をピョンピョン跳ねさせて怒るコカリ。
それもそのはず、アマテラスがコカリの飼い犬梅太郎を置いてきてしまった遺跡のカギを持ってその遺跡に駆け込んだのだ。
ちなみにあのウシワカとはよく分からないが「君にはガッカリだよ」という一方的な言葉を置いて消えてしまった。とりあえずイッスンと名前は「変態恐い」という会話をしてそれ以上の事は言う事を辞めた。
そして今、そのコカリと名前は遺跡の前でただただ待っている状態なのだ。
コカリはコカリで「シロワンコの飼い主のお姉さん」という長ったらしい名称で呼び、名前はその都度「飼い主ではないんだよ」と言っている。

「あ、」
「ん?あ!シロワンコ!やっと戻ってきた!早くカギを返して!梅太郎…梅太郎!!もしかしてシロワンコが梅太郎を助けてくれたの?」
「助けたんじゃねえ、コイツはお前を待っていたんだよ」

遺跡から戻ってきたアマテラスは犬を一匹咥えていた。それをコカリの前でひょいと放せば犬はコカリに駆け寄り尾を元気よく振っている。
聞けば、コカリが置いてきたと思っていた梅太郎は実は自分からそこにとどまっていたらしい。勇気をもてない主に勇気を持ってもらいたい一心で。
なんという飼い主泣かせの犬なのだろうか。案の定飼い主のコカリはうわんうわんと泣いて梅太郎を抱きしめている。

「アマテラスもイッスンもお疲れ様」
「おうよ。一人で大丈夫だったかィ、名前姉」
「うん、コカリもいたし…なに?アマテラス」
「なんでぇ、アマ公。梅太郎見てたらさては自分も撫でてほしくなったナ?」

にやり、としかたどうかは名前にはわからないが、ニヤリとしたようにイッスンが言うと元気よく吠えるアマテラス。
どうやらイッスンのその言葉は正解らしい。
名前が「それでは失礼して」とアマテラスを撫でると実に嬉しそうにしている。

「ありがとう!シロワンコとシロワンコのお姉さん!」
「いつのまに飼い主になったんだよ…」
「その都度訂正いれてるけど、一向に直らないから…もういいかなって」
「ボク、頑張って橋をかけるよ!行くよ梅太郎!」

ぴゅーと走って壊れた橋がある川まで駆けてくコカリと梅太郎。その後ろ姿は確かに逞しくも嬉しそうではあったのだが、そんな簡単に出来るものなのだろうかと名前は頭を傾げた。
するとすぐに「びやーーーー!!!」というコカリの叫び声。
尋常ではないその叫びを聞くや否やアマテラスは名前を背に乗せて声の方向へ駆けた。

「どどどどどどどうしよう!」
「竿を放すんじゃねェぞ!」
「いや、放さないと駄目だってば!」
「どっちーーーーー!!??」
「放すな!」
「放して!」
「えええええ!!??」
「そうだ!放せ、だ!」

大きな竿を引っ張るコカリと梅太郎。川に流されては大変だとアマテラスがコカリを引っ張る梅太郎を引っ張り、そのアマテラスの背を名前が引っ張り、またアマテラスの尾をイッスンが引っ張る。
イッスンが竿を放すなと言えば反対に名前が放せと言うからコカリは混乱。
再度名前が「放せ!」と言ってようやくイッスンが自分が間違っている事に気づいて放せと指示する。しかしその時には何をどうしたのかわからないがスサノオを乗せた大きな丸太が上流から流れてきて名前を除いた全員を巻き込んで連れ去ってしまった。

「アマテラス!イッスン!」
「ぎゃーーーー!!!!」
「ど…どうしよう…そうだ、カリュウドさんが確か…」
「やっぱりミーの予言通りになったみたいだね!」
「へ、変態…」
「ウシワカだってば。ユーはいいかげんミーのネームを覚えてほしいな、それと心配しなくていいよ」
「…え?」
「あのくらいアマテラス君にはどうってことない、ノープログレム!」
「………」
「それにしてもまだこんなところに居るとは思わなかったよ…そうそう、ユーは無理しちゃダメだからね。まだユーは本調子ではないんだ、アマテラス君以上に」
「……?」
「おっと、そんな話をしていたら戻ってきたようだね。じゃあ、またね名前君」

とう!と軽やかに跳び去るウシワカ。
それから数秒と立たずに大きな大きな衝撃と音を立てながら空か丸太と人間と犬が降ってきた。
確かに心配する必要がなかったほどに元気な様子で戻ってきた、降って飛んできたが。
あまりの衝撃に座り込んでいるとコカリと梅太郎が名前を中心に「やったー!橋ができたぞー」「わんわーん」と周る周る。

「お、…おかえ、り…」
「おう…今回ばかりは酷い目にあったぜ…」
「うん…そうだね…」
「?なんかあったのか?」
「ううん、なんでも。この橋、渡るの?」
「シロワンコのお姉さん、向こう岸に行きたかったの?急ごしらえだけど大丈夫!足元には気を付けてね!」
「え…」
「ポチとその飼い主ではないか!我は…我はそう!高宮平の赤なんとかという怪物を倒しにだな!…いざ!!!」
「……スサノオ、さんは…どうしたの?」
「さあ?いつまでも座り込んでないで立てよ名前姉。さっさと行くぞ」

その丸太の橋をスサノオは何かから逃げる様に大急ぎで渡り、もう姿が見えない。
まだ座ったままの名前にアマテラスが痺れを切らしたのか、いつかの様に強制的に背に乗せて大きな丸太の橋を渡り始めた。

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