夏目友人帳 (5/6)
麒か、麟か。
「なあ、ニャンコ先生。名前は雄なのか?それとも雌か?」
「なんだ、ヤブから棒に」
宿題で辞書を捲ると、ふと目に入った「麒麟」という文字。
いつだったかニャンコ先生が言っていた妖に性別は然程必要でない。という言葉。
必要なくとも、あるのだろうか。
「辞書に麒麟は雄を麒、雌を麟と呼ぶって」
「麒麟に直接聞けばいいだろうが」
「私がどうした」
不意に名前の声がして窓を見ると、名前が窓から首を出していた。
そろから器用に体をねじりながら部屋に入り、「それで私がどうした」と聞いてきた。
「夏目はお前が雄か雌か気になるんだと」
「ほう、何故」
「辞書に書いてあってな」
辞書を見せると「人間の文字はわからん」と言われて読み上げた。
そうしたら名前はわかったように笑った。
「夏目、私は性別はないに等しい。あったところで無意味だ」
「…そんなものか?」
「ああ。だから私は「麒」であって「麟」でもあるのさ」
「しかし麒麟が辞書に載っていてこの私が載っていないとはどういう事だ!」
ジタンダを踏むニャンコ先生を名前は呆れた目で見ていた。
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