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「#エロ」のBL小説を読む
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|||同一人物

「それをとれ」
「はい。ねえ、そっちのアレちょうだい」
「ああ。おい、アレが足りんぞ」
「どれ…ああ、はい」

名称を使わずに「アレ」「ソレ」で会話が成り立ち、終いには仕事さえ成り立っている。
互いに目を見ることもなく、ただ口で「アレをとれ」「ソレをとって」でやり取りが成立して名前は入力をし、もう一方のギルガメッシュ…キャスター・ギルガメッシュが粘土板と睨めっこをしている。

「…何なんでしょうね、この状況」
「ご主人様は大きい方より意思の疎通がしやすいとお喜びでしたけどねぇ。あー面白くない!」
「阿吽の呼吸、というのだっけ?こういうの」

上から名前が契約しているアーチャー・ギルガメッシュの幼少期、キャスター・玉藻、最後にカルデアにいるアーサー王だ。
契約しているからにはアーチャーのギルガメッシュが正真正銘の名前のサーヴァントである。
ご主人と呼んではいるが名前とは玉藻は契約をしていないし、勿論アーサー王もしていない。
玉藻の記録では月の聖杯戦争では名前が玉藻のマスターで将来を誓い合った関係らしいが、ここにいる名前とは別人である。しかし玉藻にとっては「そんなの関係ねぇ、でございます」という持論で「ご主人様はご主人様」と名前を勝手にご主人様と位置付けている。
そしてアーサー王は月の裏の出来事でのかつてのサーヴァントであり、何故かその記憶をもってカルデアに召喚され、月の裏よろしく名前の世話を焼いてる。
三者三様に名前と関わりを持ち、勝手にライバル視している部分があるが、名前にとっては煩わしいの一言でまとめられている関係となる。

「して、そこの3騎は何をしている。仕事の邪魔をするのならば消えよ」
「僕は名前のサーヴァントですから、近くに居て問題はないと思いますけど?」
「ご主人様のご休憩のおやつをば」
「……えっと、レイシフトから戻ったよ」
「幼き我、己が天敵と心得ているならば控えよ。狐、終わったら早々にされ。お前は消えよ」
「そっちの資料ちょうだい」
「待て、我がまた使っている。先にこれを使え」

恐らく中心にいるであろう名前はまるっと3騎の存在を無視している。
そもそもそんな事を気にしているのは賢王だけである。
始めは名前だけがこの部屋で黙々と一人仕事をしていたところに「いい仕事部屋ではないか」と勝手に賢王がやって来て勝手にそこで仕事をやり始めたのだ。
名前自身も抵抗はした。しかし勝手に仕事をし始めて、なあなあで仕事をしているうちに名前も「もしや仕事の効率がこの方がいいのでは…?」と思い始めてこうなっている。
若い時のギルガメッシュとも契約をしていた名前だ。あのギルガメッシュに比べれば涙が出る程やりやすいし無駄に怒りださないし効率は酷く良い。

「だいだい許可なんて不要です。そっちがここに勝手に来ているんじゃありませんか」
「仕事の効率を考えたまでの事。若いのと幼いのの勝手がわかっている故こやつはシドゥリまではいかずとも使えるのでな」
「私は別にそちら様のお邪魔をしていませんでしょう?ねえご主人様」
「コーヒーじゃなくてココアがいい」
「ではお持ちいたしますのでお待ちくださいまし」
「コーヒー私貰ってもいいかな」
「………まあ、いいでしょう」
「あ、僕もココア欲しいです」
「ご自分で」

「おい、お前は煩わしくないのか」
「んなもん無視した方が楽よ。適当にはいはいって答えておけばいいんだから、いちいち気にしている方が頭がおかしくなるってもんよ」
「相当頭がいっているな」
「だってあの3騎はただここに居たいだけで邪魔も何もしないし。まあ寝る時間とか食事の時間を教えてくれるのは時計見なくていいから楽だし。でもたまに運動しろって言われるのは面倒かな」

チラリと名前を見る賢王に対して名前はディスプレイと資料を交互に見ながら答える。
名前にとってあの3騎はそれだけで、それ以上に今のところなる予定はない。
ここは月ではない。名前にとってはあった事をなかった事にされないためにここに来ただけだ。
命を掛けるといっても、バトルロワイヤルではない。仲間は多い。常に気をはる必要はない。

「でも、まあ」
「なんだ」
「こうして心配してくれる存在があるのは、いいかもしれない」

ちょっとだけ昔を思い出すかな。と名前は目で笑う。
記録で知ってはいるが、名前を不憫だと思う事はない。
強いと表現するにはまだ弱い、ただ弱くはない。己の力と知恵で歯を食いしばって生きて、そして多くを見殺しにしてきた。

「なによ」
「いや、特にこれという意味はない。まあこの我と契約することになった人間なのだから当然だな」
「……なんの話?」
「独り言よ」
「年とっても独り言は大きいままか。いや、年食ったから余計大きいのか」
「減らず口め」
「まあこれくらい喋れないとあの英雄王と契約できないでしょう?」
「確かにな」

自分の事を言われていると即座に察した名前と契約しているアーチャーは「今僕の悪口言いませんでしたか」と不機嫌そうに訴えた。

※林檎飴様
 shortの月の聖杯戦争シリーズの続きか番外編のギルガメッシュ かギル君お話




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