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|||鶺鴒:思わぬやきもち/ 陸奥(冴月様)

※女主


「え、ユカリ?最近連絡とってないけど…」

「ほら、まずユカリよりも自分のこと」

「また浪人なんてヤメてよ。皆人、アンタどれだけ失敗したら気が済むの」


さっきから名前の電話する声から聞こえる名前。
それは名前の弟と妹の名前だ。
名前は世話焼きではないが、それなりに自分の弟妹が可愛いのだ。
帝都に出てきた今では二人を心配しては、たまに電話をかけて声を聞いては小言を送っている。

ついでに言うならば、名前の母親は高美だ。
それにより名前は他の葦牙よりも情報能力が高い。
あの女事だからそう易々とは情報を流しはしないだろうが、名前は自分を含めた弟妹が全て葦牙だという事は既に知っている。


「ほら、ユカリに聞いた…えーっと結ちゃん?大事にしなさいよ。他にも色々」

「え?私?私は大丈夫。私よりも自分の心配しなさい」

「うんうん。はいはーい、じゃあね」


ピッ。そんな音が名前の手にある携帯が鳴ったように思えた。実際名前は携帯のボタン音が出るのを嫌うから聞こえるはずはない。
名前が弟妹や高美に電話するときは、いつも優しい顔になる。


「…名前、電話終わったか」

「うん、終わったよ」

「……、」

「まだ皆人とユカリは私達が葦牙だって知らないみたいだね。このまま知らずにドロップアウトになるのかな…それならそれが幸せ、かな」

「…そうか」

「んで、陸奥は私が電話中の熱視線はなにかな?」


その言葉に息が詰まった。
そこまで見つめている自覚はない。ただ、なぜ、そこ…。ああ、詰まっている。
否定が出来ない。
否定の言葉を出したいのに、出るのは顔からの熱。
それをまた否定したくて口を、言葉を出そうともがけばもがくほど上手く立ち回れない。
こんなことがしたいんじゃない、名前を見てなんかいない。その一言が言えなくて、否定する言葉を自分の何かが否定している。


「おーい、そんな嫉妬してましたって反応しないでよー」

「な、あ、嫉妬…?ち、ちが…わくは、な」

い。
小さくなる最後の一言。
言ってしまってから、益々熱が上がる顔。
心臓も、名前と初めて出逢った時のように早鐘を打っている。

その言葉に今度は名前がキョトンとした。
ああ、そうか。名前はからかったのか。

どうしようもなく、身の置き場がない。
ここから立ち去るのもバツが悪い。


「そうかそうか。陸奥は寂しかったのか。うんうん。陸奥、おいで」

「…っ」


携帯をポケットにねじ込んだ名前が両手を広げる。
来いと言っている。
今のこの状況で、名前の言葉を拒否できない。してはいけない。
何故ならば、今、それを何より望んだのは自分自身。それ以外なにもない。

しかし名前の言うことにただ従うのも面白くないから、その名前の体を持ち上げる様に抱き締めて、名前の胸に顔を埋めて、熱のある顔を隠し、名前の匂いな包まれてやる。



思わぬやきもち




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