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|||青い騎士王さま

「はあ…」

目の前には男性のサーヴァント。
真名をアーサー・ペンドラゴン。正直あまりピンとこない名前だけれど、アーサー王と言えば何かしらで聞いた覚えがある。何よりそれはアルトリアが男装していたっていう話ではなかったのだろうかと頭を傾げるとドクターは同じように困ったように笑っている。
ただそれとは違う笑顔をしているのがあのマーリン。そう、あのマーリンが一緒に居るのだ。

「本当笑っちゃうよね」
「私には笑えないけど」
「ドクター…?」
「名前、心して聞くように。君には彼のマスターになってもらいたい」
「……え?」
「ほら、アルトリアがすでにいる状態でまたアーサー王っていうのもマスターとして混乱してしまう事もあるだろう?というより、是非名前さんに!って言われてて…」
「は…はあ…」
「あ、私も名前のところ行こう?」
「結構です」
「君、彼女に何したの。即答じゃないか…」
「別に何もしてないよ、まだ」
「「まだ」」
「え、なに?」
「…いや、そういう人だったよね。で、名前。お願いできるかな」

ちょっと考え、先輩のお願いならばと頷く。
案の定契約の為に剣を借りればアーサーにはひどく心配されたが、それは名前自身が使う契約のやり方なので仕方がない。



「ということで、新しいサーヴァントのアーサー・ペンドラゴン。クラスはセイバーでクー達の天下がここに終わる事になりました」
「血の匂いがする」
「クー、お願いします」
「仕方ねえな」

バーサーカーのクーフーリンに指摘され、名前はピッと切った人差し指をキャスターのクーフーリンに見せて治療を頼む。
それも慣れたものだし、今となっては比較的懐かしいとも思えてしまう。
名前がここカルデアにきた当初は次々と契約のサーヴァントが来ては指を切り、そしてキャスターに治療をしてもらっていたのだ。

「で、それもか?」
「マーリンは違います」
「契約する?いいよ私は。ついでに治療もできるよ私」
「話の途中だがいいか。アーサー・ペンドラゴンといえばアーサー王だが、アーサー王はもう…アルトリアがいるだろう」
「はい、その説明は私から。私が居る理由だよ、わかった?わかったかな?」
「とりあずお前がウザいのはわかった」
「はっはー。名前、君のサーヴァント口が悪いよ、躾がなってない」
「私は私のサーヴァントを悪く言う人は好きじゃありません」
「殺すか」
「だめ」

名前は私に酷く冷たくないか?とマーリンに非難されるも名前は一貫してその態度を改めることなさそである。
そもそも名前はそのような性格ではないし、名前と契約しているサーヴァントもそれを十分知っている。
しかしマーリンにあまりいい印象をもっていないサーヴァント達にとっては「名前らしくないが、とりあえずもっとやれ」というのが一致している心情だ。

マーリンの独特の言い回しでイラつきしか感じない説明は無駄に長く、念話でもう別の話を仲間内でし始めていた。
まだ終わらねえの?というプロトの愚痴がもう両手を超えてしまってようやく「と、いうことなんだよ」とマーリンはすがすがしそうに言いあげた。

「要はあっちのマスターが混乱しねえよにっつうことだな」
「一言で言ってしまえばね」
「貴様がキャスタークラスでなければ即刻暗殺していたところだ」
「恐いなー、名前のアサシン恐いなー」
「ハサン、俺も乗るぞ、それに」
「狂王と言われるだけの事はあるねー。いいのかいアーサー、君こんなサーヴァント達のマスターの所で」
「マーリンと別というだけで有難いよ」
「言うね…これには私も少し傷ついたよ」
「少しなんですね」
「感情なんて一時期の気の迷いだからね。いちいちウジウジしている人間の方がわからないよ」

じゃあこんな恐いサーヴァントから逃げるよ。とマーリンはニコニコしてどこかへ行く。
大方女性サーヴァントの所か居眠りをする場所でも探しにいくのだろう。
疲れた表情で大きな溜息を名前が付けば名前と契約しているサーヴァント達も「解散」と言わんばかりに各々去っていく。

「…護衛は?」
「護衛なんていないわ。護衛をしてもらうほどの人間じゃないし」
「でも、君はマスターだろう?」
「人よりもサーヴァント多い所だから、いえばどこにでもサーヴァントはいるから大丈夫」
「しかし…」
「最初ね、バーサーカーのクーも後ろから付いてきたけど今じゃもう全然」
「尻尾の生えた、クーフーリン?」
「そう。あんな大きな男の人が後ろからずっとついてくるの。最初恐くて恐くて、でも慣れて良い様に荷物持ちに使ったらもう付いてこなくなっちゃった」
「……君は強いね」
「私は強くなんてないんです。皆が強いから、そんな気になるだけで…虎の威を借る狐、かな。実際はマーリンにだってデコピンのひとつだって敵わないわ、きっと」
「わかっているなら十分さ。ここに慣れるまで君の護衛をしてもいいかな」
「でもここの地図わかるでしょう?皆知ってたし」
「なんの部屋が何処にあるかは把握しているけど、ここの人間関係まではわからないからね。駄目かな」

その言葉に名前は固まる。
今まで契約してきたサーヴァントとは全く持って系統が違うのだ。
確かに契約しているサーヴァントは美形揃いだ。ディルを筆頭に愛嬌のある顔の男性サーヴァントはいない。ハサンの一部にも男性はいるが仮面をしているのでカウントは今回なしだが。
しかし基本的には紳士だが戦士であり、戦いに重きを置いている。
その中でこのサーヴァントは別、というよりも騎士そのものだ。

「マスター?」
「あ、いや…なん、か…皆と違ってて、驚いて」
「違う?」
「クーはだいたい『なんかあったら呼べよ』っていうタイプだから…」
「クーフーリンと付き合いが長いんだ」
「キャスターのクーフーリンが唯一私がここで直接召喚したサーヴァントなの。ディルは10年前に召喚したけど、あのディルは私が召喚したサーヴァントじゃなくて先輩が召喚して。マスター権を譲ってもらったの」
「クーフーリンが多いのは?」
「キャスターのクーがいるから、名前さんはクーフーリンがいいですよねって。バーサーカーはちょっと事情が違うけど」

その話も聞きたいな。と言われれば話さなければいけない様な気がしてきた。
名前は「もしかしてある意味とても紳士なサーヴァントを渡されたのかしら」と内心ドギマギし始めていた。

※ゆき様
 FGO長編主人公と旧剣の話




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