企画! | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




|||花の魔術師は花を咲かせる

「いいですか名前。マーリンには近づいてはいけません、忠告ではなくこれは警告です」

ディルムッドからアルトリアが話があると言われて聞いてみれば、神妙な面持ちで何を言われるかと思ったら。
花の魔術師マーリン。キングメーカーと言われた魔術師でアルトリアがよく知る存在。
アーサー王伝説の詳しい話はよくは知らないけど、名前くらいは聞いたことがある存在ではある。
しかし近づくなとはなんと酷い言い方なのだろうと思い、理由を聞こうとすると「いいですか、名前は近づいてはいけません。理由はありますが、これは貴女を守る為の警告なのです。ああ貴女にライダーのサーヴァントがいれば良かったのですが。ディルムッド、貴殿が彼女を守るのですよ」と何とも理解しがたい言い方をしてどこかへ行ってしまった。
ディルムッドによれば「マーリンと言えば女好きという話を聞いたことがあるのでそのせいではないでしょうか。恐らくセイバーの心配性からくるものだと思いますよ、身内が他人に迷惑を掛けないかという」と笑っていた。
確かに身内、いや知り合いが他の人に迷惑を掛けたらを思った行動かもしれない。私だって友達でそんな人がいたらそんな注意を促すかもしれない。
「アルトリアも大変ね」と笑えばディルムッドも笑っていた。


「やあ、お嬢さん」
「こんにちは、えっと…」
「花の魔術師マーリン、というとわかるかな」
「…あ」

ニコニコと、実に人当たりのいい笑顔のお兄さんという姿。白くてふわりとした印象で、フォウ君が人に、男性に変身したらこんな感じになるのかなという印象の男性だ。

「……」
「どうかしたかな?」
「あ、なんだか…フォウ君に」
「キャスパリーグが?」
「きゃすぱりーぐ?」
「君たちがフォウ君と呼んでいる使い魔さ」
「名前、あったんですね。フォウ君だとてっきり」
「どっちでもいい話さ、アレは君らにとってフォウ君で私からしたらキャスパリーグという名前なだけ。些細な違だっ!!キャスパリーグ!何をするんだ」

フォウフォーウ!!と何か文句を言う様に吠えているフォウ君が足元でピョコピョコ飛んでいる。
フォウ君はあまり懐いてはくれていないが、それでも嫌われていない。そんな間柄で、廊下で挨拶をすると「フォウ!」と返事を返してくれる、と思っている。

「何もしてないよ、まだ」
「……まだ?」
「あ、いや…あたたたた、やめないか!」

フォウフォーウ!!と文句というより、本格的に怒りはじめているんじゃ…と思うほどのフォウ君の剣幕。フワフワの毛がいつも以上にフワフワを通り越して逆立っているかのようだ。
小さく「フォウくん…?」と声を掛けてみると元気よく「フォウ!」と返事が。
これはいったいどういう返事なんだろう…怒っているような、私に「ちょっと黙ってて!」と言いたげな声。

「ああフォウ君!そんなゲシゲシ蹴っちゃ…」
「痛い!いたたたた!」
「フォウくーん、落ち着いて」

マーリンに飛び掛かってバリバリと攻撃をしている隙をついて抱き上げる。人間から見たら小さな四肢を必死にじたばたとさせて暴れている。
フー!フー!!と息を荒げ、抱き上げられたという事に気付くまで数秒は凄い暴れようだったけど、今となっては少し落ち付ている。それにしてもこんな暴れていた小動物を私はよく捕獲できた。これは本当に不思議だけどマーリンの酷い姿に比べたらきっと些細でどうでもいい事だろう。

「助かったよ、名前」
「え、ああ…あの、なんで、名前」
「ふふふ、どうしてだと思う?」

フォーウ!!!と大きな声を上げるフォウ君。
どうしてそんなに興奮しているの?と聞いてみればフォウ君は「フォウフォーウ!」とやはり興奮気味に鳴くし、マーリンはマーリンで「うるさいぞキャスパリーグ」とたしなめる。

「別に私は名前をどうこうしようだなんて少ししか思っていないぞ」
「…あの、それは突っ込み待ちですか?」
「うん?」
「あ、なんでもないです」
「なんでも聞いてくれていいんだよ?大歓迎さ」
「あわわフォウ君落ち着いて、落としちゃうよ、危ないよ」
「そのままキャスパリーグを捕まえておいてくれ名前。そうじゃないとまた私に飛び付いてくるからね、そいつ」

とりあえず、ほとんど初対面だけどアルトリアの言っていた事がなんとなくわかって、フォウ君が騒いでいる理由がなんとなくわかった。
フォウ君は多分だけど、私を守ろうとしてくれている。
この得体の知れない…といったら失礼だけど、マーリンという魔術師から。
マーリンとフォウ君は言えば使役者と使い魔の関係だから上下関係ではあるけど、フォウ君からしたら好きじゃない存在?なのかな。
こうしてマーリンが私に近づいた事を察してもしかしたら助けに来てくれたのかもしれない。

「…フォウ君。一緒におやつ食べに行こうか」
「え?」
「うん、そうしよう。一緒におやつ食べようね、フォウ君は何がいいかな。エミヤにホットケーキ焼いてもらおうか、それとも私が作ろうか。ホットケーキにははちみつ派?それともメープルシロップ?今回はアイスもサービスしちゃおうか、ね」
「おーい…?」
「フォウ君はアイスがいいのかな?ミルクアイスあったかな、あるといいね!」
「ちょっと名前…」
「フォウ君とお茶するの初めてだね、楽しみだねーうん」

長くてふわふわの尻尾を少し不機嫌そうに左右に揺らしているフォウ君を持ってマーリンから離れて食堂に向かう。
こうすれば私はマーリンを助けるためにフォウ君を連れて行ったという事になるし、フォウ君には私を助けてもらったお礼としての一緒のお茶という名目が立つ。
後ろの方でマーリンが「おーい?名前ー?名前ちゃーん?ちょっとちょっとー?」という声が聞こえるけど御免なさい。無視します。

「……フォウ君、私アルトリアとフォウ君が言わんとしていた事、なんとなくわかった気がする」

するとフォウ君が元気よく「フォウ!」と鳴き、まるで「やっとわかったか!」と言っているような気がしてならなかった。


※キティ様
 fateのaiphで、マーリンとの話




[*prev] [next#]