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「#エロ」のBL小説を読む
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|||腹も減る

「腹が減った」

その一言に名前はとても驚いた。
サーヴァントが空腹を訴えたのだ、それは恐らく名前でなくとも驚く事だろう。
しかしここはカルデアで冬木ではない。すなわち、冬木の聖杯戦争のサーヴァントとここのサーヴァントは必ずしもイコールではないと言う事だ。現に7騎以上のサーヴァントが存在し、クラスだって被りに被っているし、なによりマスター一人にサーヴァントが複数いるのだ。

「驚いた…サーヴァントもお腹、空くの?」
「空腹っつう感覚は思い出せんが、なんだ…こう、漠然と、物足りないような」
「漠然と、」
「口さみしいっつうか、」
「………メイヴ、呼ぼう?」
「お前いつメイヴと仲良くなったんだよ」
「仲が良いって程の事はないけど。魔力足りているよね?そもそも私そういう調整?みたいなの、したことないし…4次の時だって言われた事、ないし」
「魔力は足りてる、万々だ。なんかな、こう…とりあえず何か食いたい」

持っていた書類に目を落とし、そして空腹を訴えるクー・フーリンを次に見る。
仕事を手伝ってもらっているわけではないし、なによりクー・フーリンというサーヴァントは今まで戦闘での仕事は請け負うが名前の仕事を請け負った事がない。それは恐らく向き不向きの問題なのだが、それを今仕事をしている名前に言う事なのだろうか。

「私、今仕事しているんだけど」
「知ってる。仕事っつってもどうせ荷運びだろ」
「書類のやり取りが主ですけどね…最近他の事もしてますけど」
「なんか作ってくれよ」
「…どうして?エミヤだって、食堂自体あるでしょう?あそここそ誰かしら飲み食いしてるし…」

確かに、思い返せばここのサーヴァントは食事をしている。
必要な事ではないが、娯楽として。食料が少なくなれば各自で調達だって少なくはないし、むしろそれを好んで狩りに出かけたりするサーヴァントもいる程だ。
そこを利用すれば誰かが調理をするし、誰かが食べるのだからわざわざ名前に声を掛ける事をするまでもないはずだ。特にエミヤが半分自分の城の様にしているのだ、嫌味を言いながらも間違いない物を作ってくれる。

「わかってねえな、確かにエミヤの飯は美味い。それは紛れもない事実であり、悔しいがオレだって認める」
「…そんなに目の敵にしなくても」
「しかし、しかしだ名前。あれは逆立ちしても男だ、男の手料理なんぞ食って何が面白い。オレはあくまで女の手料理が食いたいんだ!」
「タマモは?」
「アレは信用ならん」
「酷い言われ様…」

冬木の、つい最近までの生活を思い出す。
確かにサーヴァントは食事をとらないが、クー・フーリンは誘えば一緒に取ってくれたし話相手にもなってくれた。それは4次のサーヴァントであったランサーとは大きく違う点でもあったし、名前はそれが嬉しかった。
料理を美味いを褒めてくれのたのだって嬉しかった。誰かの為に作るというのは久しぶりではないが、なんだかそれがとても嬉しくて懐かしかったのは確かだった。

「で、なにがいいの?」
「あ、いいのか?」
「そこまでラブコールされたらやるほかないじゃない。ただこの書類関係ドクターとダ・ヴィンチちゃんに届けて話しないとだからもう少しかかるけど、それでもいい?」
「かまわん、材料は調達済みだ」
「なによ、もう根回しじゃないけど準備できているんじゃない」
「最悪エミヤに頼もうと思っていたからな」
「……さんざんこき下ろしていたのに」
「美味いもんには腹は代えられん。他のオレらにも知らせてくるか」
「ついでにエミヤにも声かけて」
「アイツにも食わすのか?」
「違います。手伝ってもらうの、何も声かけないと可哀想でしょう?」
「オレの話聞いてたか?」
「聞いていましたよ?私がメインで作るんだからいいでしょう?仲間外れは良くないと思います、私」

クー・フーリンからしたら仲間外れのつもりはないが、名前から見ればそうらしい。他のサーヴァントとは別の思い入れがあるのはわかるが、そこまでする必要がある程子供なのか、とも思う。しかしそれを名前に言ったところで名前はそれを譲らないのも理解しているので「ああ、そうかよ」と理解を示したフリをする。
エミヤから見て名前が特別枠であるように、名前もまたエミヤは特別枠なのだろう。それはわかっているのであえてそれ以上は言わないのだ。





「で、これはどういう状況なのか説明してもらえるかね」
「クーがお腹空いたっていうから、エミヤにお手伝いのお願い、そして調理中という経過です」
「サーヴァントは腹は減らないはずだが?」
「細かい事は気にしない気にしない。たまにお姉ちゃんと料理してくれたっていいじゃない」

カウンターでギャアギャア騒ぐクー・フーリン達を睨みながらエミヤが名前に問う。
その姿はエサの時間が待ちきれない犬の様であり、それを嫌味のひとつで言えばまた犬の様に吠える。

「だいたい弓兵はお呼びじゃねえんだよ!」
「エミヤのご飯美味しいって褒めてたのどこの誰ですか」
「ほう」
「名前が作ってくれんならお前は要らねえんだよ!!」
「ケンカするならご飯ないんだからね!クー達は大人しく座ってなさい、スカサハ笑ってないで弟子の躾して!」

遠くでその弟子らの姿と、名前とエミヤのやり取りを見て聞いていたスカサハが名前に言われようともクー・フーリン達にはなにも言わずにそのまま笑ってみている。

「いい大人が子供みたいにケンカするの禁止!良い子にして!」
「名前よ、オレらに良い子っていうのも大概だぞ」
「言わせないで英雄様」


※fgo連載で槍兄貴orキャスクーーでほのぼの




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