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|||ばたんきゅ。

名前が体調を崩したのは昨日。ついでに一番体調が悪かった。その前から前兆はあったらしいが、当の本人である名前は「ちょっと…変かも」という程度で気にしてはおらず、よって一緒に生活をしていた彼女のサーヴァントであるランサーも「お気を付けください」の一言で済ませていた。
それが子供であったなら、おそらく同居しているランサーに大きな責任があるのかもしれない。しかし名前はすでに大人であり自己管理はできる、はずだった。

「……アーチャー、どうしたの?」
「君のランサーに聞いてね。主が体調を崩されてどうしたらいいのかわからない、と」
「…申し訳ありません主。俺一人では主の食事や看病が心ごとなく」
「一晩寝たから、大丈夫だから…ね?」
「何が大丈夫なものか。まだ顔が赤いし目がまだしっかりとしていない。とりあえず消化に良いものを取ってからだ。ランサー、君にも作り方を教えておく」
「申し訳ない、感謝する」

少しだるいが、それでも昨晩に比べたら雲泥の差とでもいうのだろうか。体を起こすのだって昨日に比べたらどれだけ楽だろう。
しかしそんな名前の体調の変化は過保護なサーヴァント二体には体調が悪いの一言になってしまうのだろう。
二体が台所に行ったと思った名前はゆっくりと立ち上がり、少しまだふらつく体を支えて台所に向かう。さっきのアーチャーの物言いでは食事を作って、ついでにランサーにそれを教えようという考えらしい。それはとてもありがたいことではあるが、もう回復に向かっている。これからの事を考えるのかもしれないが、おそらく彼らがそのままここに居続ける間にまた体調を崩す事は恐らくない。

「…あのー…」
「主、まだ起きられては」
「昨日に比べたら、もう大丈夫。ごめんね」
「何を言う、まだ足元がおぼつかない人間が言える立場か。部屋に戻るのが嫌なら居間に行け」
「えっとね、もう大丈夫だから…そんな、えっと普通のご飯で大丈夫だよって」
「仮に病み上がりとして、それでも消化に良いものを取るのが普通だと私は思うがね」
「………はい、そうですね…」
「ではランサー、名前を居間にでも置いて来てくれ。体を冷やさないようにして」
「賜った」

ひょいと横抱きにされ、ランサーによって居間に運ばれる名前。
もうこうなってしまえば名前がどう抵抗しようとあのサーヴァント二体は名前に対して絶対的な子供に対するような態度をとる。実際ランサーは確実に年上、というよりもはるか昔の人物でアーチャーは本来は年下ではあるがサーヴァントとなってしまった彼は年上と言う事にしてある。

「ではこちらでしばしお待ちください主」
「…うん、ごめんねランサー」
「主の体調の変化に気付かず、申し訳ございません…」
「そんな、ランサーのせいじゃないから」
「しかし」
「私、もう前の私じゃないから。大丈夫」

ここで二人が作るご飯待ってるね。といつもとは少し違う、弱弱しい笑顔を浮かべてランサーを見送る様にしている。

「申し訳ないアーチャー、主を居間へお連れしてきた」
「そうか…名前は、おそらく君がいるから気が抜けてしまったんだろうな」
「…はい?」
「名前が体調を崩すのは珍しくはないが、それには理由がある。しかし今回は理由がない」
「…?」
「言葉を変えよう。名前が体調を崩すのは土地の関係、もしくは…それは今はやめておこう」
「意味が…」
「名前自身のせいで体調を崩す事は稀だということだ。外的要因がほとんどの彼女の場合、己の事で体調を崩すのが珍しい事だ」

まるで意味の解らないランサーはアーチャーの言葉に外見に見合わず頭を傾げる。
人間が体調を崩すのはごく当たり前の事であり、それが名前だからと言う事ではないはずだ。外的要因とは、例えるなら感染力の高い病原体を持つ者と接触したというものだろうか。それにしては名前はそんな人間と会ったという話はランサーは耳にしていない。

「…悔しいが、名前は君がいて少しだけ気が抜けてしまったと言う事だ」
「それが、体調を?」
「新しい環境に慣れてから体調を崩すのと同じ原理だ。今まで一人で必死に生きてきたところに兄の様な君が来たんだ。少しだけ、無自覚に力が抜けたんだ」
「では…俺が来なければ主は」
「ちょっと待て、そこは喜ぶ所であって自己嫌悪に陥る所じゃないぞランサー」

そこからしばらくクドクドとランサーに説教をしていると、名前が顔を覗かせて「ご飯…」と催促された。




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