企画! | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




|||1つの違いが重なるところ

「おはようございます名字さん」
「あ、おはよう黒田くん」

登下校に使っている自転車に乗っている名字さんを見つけ、急いで後ろについて挨拶をする。名字さんは部活のマネージャーで、今朝も朝練に合わせての登校だ。

「黒田くん今日も早いね」
「寮生ですから」
「いつも朝会うなんてすごいよ、私も早く出ないとかな」
「十分早いじゃないですか。今日も朝練の準備手伝います」

いつもごめんね、助かるよ。と名字さんは申し訳なさそうに最後にいつも「ありがとう」と付け加える。名字さんは「ごめんね」と「ありがとう」が大体セットで使われる。名字さんらしいと言えばらしいのかもしれない。
通学生用の駐輪所まで付き合って、一緒に部室に向かう。
部室の鍵開けは基本的に部長である福富さんが行い、それが出来ない場合は東堂さんか名字さんがする。通学生である名字さんが鍵開けをするは負担だからあまりすることはなく、福富さんか東堂さんの仕事だ。

「3年マネージャー名字です、おはようございます」
「おはよう名字、今朝も黒田と一緒か」
「おはよう福富くん、最近一緒になるんだよね、黒田くん」
「オハヨ名字ちゃん」
「おはよう荒北くん、眠そうだね」
「ウン、ちょっとねェ」

今朝は珍しく福富さんと荒北さんが居る。二人に挨拶をすると福富さんはいつもの様に挨拶を返してくれるが、荒北さんは挨拶と一緒にいらない一言が付いてくる。その一言もいつものことだけど。
朝練は部活の様にハードじゃないので名字さんのすることは軽い。ドリンクを作って、朝練が終わった時の掃除用具の準備。
ただそのドリンクを作るのが意外と手間なのでそれだけを一緒に手伝うのがここ最近の日課だ。最初の切っ掛けは人数分のボトル準備をうっかり名字さんがぶちまけた事に始まり、なんだかかんだで手を貸すようになった。

「ごめんね、朝練もあるのに手伝ってもらって」
「気にしないでください」
「そろそろお手伝いなしでもできないと…」
「ナァニ言ってんのォ?名字ちゃん一人じゃ大変じゃなぁい?」
「荒北さん…」
「名字ちゃんには黒田くらいお節介が手伝わないとヘルプ出せないからねェ。ちょうどいいんじゃね?」
「確かに。名字は1年の頃からそうだかな、黒田には悪いが名字の手伝いをしてくれて助かっている」
「ちょ、なに…この私の保護者感…福富くんも荒北くんも私のお父さんですかっ」

まったく。と少し怒った様子の名字さんに笑う二人。この二人は名字さんに過保護と言ってもいい気がする。名字さんも名字さんでこの二人には同じ学年の他二人よりも仲が良い気がする。
そんな会話をしながらその二人は朝練に戻り、名字さんと二人でドリンクの用意をする。

「…名字さん、二人と仲良いですよね」
「そう?普通じゃないかな」
「いいですよ」
「じゃあ私、黒田くんとも仲良しだね」
「え?」
「だってこうやって一緒にドリンク作る仲だもの」

1年の頃はね、荒北くんがよくこうやって手伝ってくれたんだよね。というその言葉に、なんだか胸のあたりがモヤモヤしたのは多分気のせいだ。


※福富世代のマネにあこがれている黒田




[*prev] [next#]