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|||たぶん、恐くないよ

「あ」

と私の口からこぼれた言葉は近くにいた御堂筋くんの耳に入ったらしい。
私と彼の接点は同じクラスで席が隣というくらいで、喋ったことはないに等しい。
私の目線の先でコロコロと転がる新しい消しゴムは御堂筋くんの足元で止まり、御堂筋くんは黙ってそれを私に渡してくれた。

「あ、ありがとう」
「…どういたしまして」

御堂筋くんは背が高くて細い。すらりとした、というには少しだけ頼りない気がするけど、それでも自転車競技の部活のエースらしい。
私は今までそいういう競技とはには縁がない生活というか、あまり興味がないし、友達はその三年の石垣先輩が格好良いよねというのを言っていたのは覚えている。でも、その子の口から御堂筋くんの話を聞いたことは今までには一回もない。
消しゴムは私の手というよりも机の端に鎮座するように置かれていた。


また別の日、今度は御堂筋くんがシャーペンを落とした。
それは私の足元にコロコロとやってきて、その動きを止める。意外にも御堂筋くんも物を落とすことがあるのかと少しだけ思った。

「…はい」
「……どぉも」

前に御堂筋くんがしてくれたように拾って、同じように机の端に置く。
多分これが正解。手渡すには気恥ずかしいというか、慣れないというか、そこまで親しくはない。内心ドキドキしながら置けば、御堂筋くんは少しだけ面倒くさそうにしてお礼を言ってくれた。


そして席替えがあった。
御堂筋くんとは離れ、クラスで仲の良い子と隣になって言われたのは「御堂筋くんと離れられて良かったね」。その言葉にどうにも頷けなくて、どうしてと聞いてみたら「だって御堂筋くん恐いし、何考えとるかわらんもん」と言われた。
その「何を考えているかわからない」には頷けても、恐かったかと聞かれればどうにも頷けない。でも、恐くないよねと言われればそれにも頷けない。結局私がどう御堂筋くんを思っているのかと聞かれると返答に困ってしまうけど、それでも御堂筋くんは多分恐い人ではないと思う。


あ、御堂筋くんだ。
活動することが少ない部活に所属している私の帰りは早い。友達は運動部で大会が近いというので「がんばってね」と応援して私は一人で帰る。
昇降口を出ると御堂筋くんの姿が見えた。
御堂筋くんの大きな体には見合わない、少し小さく見える自転車に跨る姿はとてもアンバランスに見える。それは御堂筋くんが大きいから自転車が小さくみえるのかもしれない。私から見れば御堂筋くんは某漫画の巨人に見える。
あんなに早い自転車に乗って、もしも御堂筋くんが巨人で私を食べに追いかけるとしたら、きっと私は逃げきれずに食べられてしまうに違いない。


※御堂筋くんでおとなしい女の子




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