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|||鶺鴒:鴉と般若/鴉羽・美哉(諌錆様)

※女主


「かあすばと、みあー」


赤い顔でふにゃんと上半身がくねった。
その姿に二人は目を見張り、その二人を見た名前の上司がそそくさと逃げた。


「まあ名前さん。お顔が真っ赤…」

「それに酒臭い…」

「のんれあかぁねー。いちのみあさー?」

「壱ノ宮さんなら先程帰られましたよ」

「うー?」

「呂律が回らない程飲むなんて珍しいね名前」


ふにゃんふにゃんと頷く名前。
いつもピシッとして、スーツさえも着崩さない名前が別人の様にニコニコと笑い、ふにゃふにゃとしている。
珍しくシャツのボタンが大胆にも開いている。
これは男がいたならば目の毒だ。
名前の黒い下着と白い胸が覗いている。


「もう…はしたないですよ名前さん。ほら、閉めて」

「えー、あつういぃ」

「名前、もう帰ろうね。…夏朗め、名前がこんなになるまで飲ませるなんて」

「だっこー。歩くの無理ぃ」

「え」

「抱っこ…ですか?」


うんうん。と赤い顔で、涙目の名前が二人に甘えた声でねだる。
力としては二人とも互角。しかし立場が少々違うのだ。
美哉は名前のセキレイではない。いうならば保護者。縁あって名前の世話をして、それこそ本当の家族の様に一緒に長いこと過ごしてきた。
そろとは違い鴉羽は名前のセキレイ。付き合いは短いが名前が全てだ。それこそ名前が望めば何だってする。
しかしこの二人は仲が悪い。
名前が可愛い美哉、名前が全ての鴉羽。
名前が中心ということで今は冷戦を保っているが、いつその均衡が崩れるかはわからない。


「ね、名前?名前はどっちに抱っこして欲しい?」

「ん?どっちぃ?」

「そ、自分か…」

「私、ということですか?」

「そ。ねえ、名前?どっち?」

「んー…とお、ね」


人差し指を唇に当てて悩む仕草をする名前。
すると名前の様子が変わり始めた。
ふにゃふにゃしていたところでに、目がトロンとし始めたのだ。
唇を尖らせ、「んー、ん…」と声が漏れていたのも束の間、名前の頭がグラリグラリと揺れ始めた。


「うー…ねむ、い」


バランスを崩して床に倒れ込むのを紙一重で助けた二人。
流石としかいえない反応。
名前に怪我が無いことを確認すると二人同時に安堵の溜め息が漏れた。


「名前さんがこんな状態なのに気づかなないとはセキレイとして失格ではないかしら」

「急に酔いが回ったみたいだから仕方ないさ。なら、その責任とって自分が抱えて行くからね。それでどうだい?」

「葦牙の健康管理ができないセキレイにこの子の面倒はみせられません。今晩は私の所で」


暫くこの冷戦は続き、名前が小さくクシャミをしてようやく戦いが終わったのは言うまでもない。


鴉と般若




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