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|||A.Iは夢をみるか

岸波白野(女)
サーヴァント:アーチャー


「名字先生」
「あら、岸波さん。貴女もこちらに落とされてしまったの?」
「はい。先生も?」
「そうね、ここに私が居るということはそういうことになるわね。まあA.Iは私だけではないから皆のサポートくらいにはなれるから」

藤村大河と同じく教師という役目を与えられたA.Iの名字名前。言峰綺礼の監督役までの権限はないが、その次に当たる権限を持っている。ただ言峰綺礼よりの人当たりがよく、何かの相談事は彼よりも名前に持ちかけられる事が多い。

「言峰神父は…」
「ああ、神父もこちらに来ているわ。まあ、ちょっとした事情というか、あの子に役割を貰っちゃったから…まあ楽しみにしているといいわ。きっと驚くよ」
「…なんだか、楽しそうですね」
「そう?まあ…言峰神父の事は面白いかもね。A.Iだからルーチン以外のことはわからないけど」

困ったことがあったら言ってね。とにこやかに手を振って名前は長い白衣をなびかせて階段を下りていく。白衣といえば間桐桜だが、名前のトレードマークにもなっている。間桐桜が真っ白なら名前は薄いブルーがかっている。
白野がその名前の姿を見送ると後ろからアーチャーに「早く生徒会室に行きなさい、皆待っているぞ」と言われて足を生徒会室に向けた。

「ねえサクラ、名字先生ってどんな人?」
「先生は人ではありませんよ、先輩。私と一緒でA.Iです」
「う、ん。まあ、そうなんだけど…」
「そうですね…過去の聖杯戦争に関わった人を模したA.Iです。でも先生はちょっと特殊みたいですが、それ以上は私にも。検索は私のルーチン外です」
「ふーん?」

ふと気になったのだ。ちょっとだけ、ほんの少しだけこの意味のわからない状況を楽しんでいるように見えた名前の存在。存在と表現していいのかは今のところ不明だ。A.Iは人ではなくデータ、プログラムなのだ。
白野の後ろでアーチャーが「名字先生」という単語を出すたびに少し反応することも気になるが。白野はアーチャーと名前では接点がないだろうという考えで、まあ初恋の相手か何かに似ているのだろうと勝手思っている。

「では先輩、気をつけてください…」

それから迷宮の探索がすすみ、名前が言っていた言峰神父の面白いことも早い段階でわかり、びっくりして名前の元に白野が走ったのも今では懐かしいくらいだ。
それに今ではレオが名前の事を気に入り、茶を任せているのだ。

「おはよう、岸波さん」
「おはようございます」
「紅茶とコーヒーどっちがいいかしら。それとも緑茶?」
「先生、私が淹れてきます。先生は皆さんのサポートをお願いします」
「そう?ありがとうサクラ」

凛やラニ、レオに次々と指示をされては瞬時にその演算や検索を上げていく名前。サクラも優秀、いや上位A.Iだが名前も凄いらしい。そういえばいつだったか「名字はサポートもしているけど本来は演算とかのほうが向いているA.Iだ」と誰かが言っていたのを白野は思い出した。セラフは無駄を好まない。確かに無駄がないのかもしれない、サクラや神父、そして名前には別個の得意分野があるのだ。それにNPCはそれぞれの可能性をもたせ、パターンを持たないようにしている。
サクラに入れてもらった茶を両手に持って名前をまじまじと観察してみる白野。凛やラニとは違ってキーボードを使う必要がなく、聞かれた事を言葉、もしくはスクリーンに映す姿は人型のパソコンのようだ。

「名字先生、オーバーワークの域に達しそうです。休息を」
「おや、それはすみませんでした。では休息を。数日間フルでしたからね」
「そうね…接続が上手くいかないわけだわ…ロスが増えてきたのもそのせいね」
「ロスなんて出てたの?気づかなかったわ」
「人間にはわからない程度のロスがね…あ」

上から垂れていた紐がはさみできられたような、そうだ、表現するなら操り人形だ。あれの操っている糸が切られた。
上から下に。ふらりと歪むように膝が折れて崩れる。
名字名前はA.Iで人間ではない。怪我はしないが痛む様子は見ていて辛い。
近くのガウェインは人ではないという理由からか助けようとする動きはまるでなく、ただオーバーワークで倒れていく名前を眺めるだけ。机をはさんでいる凛とラニは驚いて椅子を倒して立ち上がる。全てが一瞬のうちにスローモーションに切り替わったように白野の目に映る。
白野の「先生」という声が喉を越える前に名前の後ろにはアーチャーが現れ、名前の頭が床に打ちつけられる前に浮いた。

「名字先生!!」
「大丈夫です先輩。アーチャーさんのお陰でプログラムの損壊には到っていません。先生のタイプは頭部にプログラムが集中しているので…」
「おや、では危険でしたね」
「アンタね!ガウェインもどうして助けないのよ!」
「人ではありませんから。でもそれならば助けなければでした。探索に支障がでてしまいます」
「回復すれば今までと同じように作業可能です。でもダメージが思った以上に蓄積されていますので…時間はかかるかもです。アーチャーさん、先生を保健室までお願いします」
「アーチャー、先生をお願い」
「了解した」

アーチャーに抱き上げられて頭がグラリと垂れ下がる。腕も重力に逆らうことなく揺れている。
少しでも揺らさないようにとアーチャーがいたわる様に白野は少しだけ何かを感じた。その何かの正体はわからないが、小さいような、大きいような。不思議な違和感。

その後、白野が頻繁に「先生は?先生は?」とアーチャーに聞くものだから最終的にアーチャーに「自分で確認して来い。私はそこまでは知らん」と叱られた。




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