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「#エロ」のBL小説を読む
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|||「今」は

「元はミス・名字がギルガメッシュのマスターだったんですよね
なら貴女が一番ギルガメッシュと相性がいいはず。なぜならセラフが選んだサーヴァントとマスターなのですから」

そうレオが笑顔で名前とギルガメッシュに言い放って数秒の沈黙。
名前の隣に座っている白野は固まった笑顔。その後ろでは当たり前の様にギルガメッシュが腕を組んでいる。
そして名前の後ろに居たセイバーは白野以上に固まっている。

「セ、セイバー?」
「え、あ…ああ、大丈夫」
「問うまでもあるまい。元はあれがマスターなのだ、元に戻るのが本来の姿なのだ」

ふん。と鼻を鳴らす。
その言葉には名前も白野もただ苦笑いをするしかない。
レオがどんな考えをもって言っているのかその場にいた誰もわからないだろう。ガヴェインでさえ意外そうな顔で驚き、ラニと凛は気まずそうにモニターを見ている。桜にいたってはどうしていいのかとAIなりに頑張って計算している様子。

「…もうミーティングはいいんでしょ?なら私とセイバーは迷宮に行って少しでも情報収集する。セイバー」
「今日は休むという予定だとさっきレオが」
「それは皆の予定。要は皆が自由な時間を過ごすだけの話。なら私も自由にするってだけの話よ」
「まあ、別に止めはしないけど無理しないでよ?名前はしょっちゅう無茶しかけるから。あんまり無茶しないように見張ってあげてセイバー」

ニヤニヤとしながら名前とセイバーを見る凛。まるでいつかのお返しだと言わんばかりの悪い顔だ。
そんなことにまるで気付かないセイバーはただ純粋に凛の心配だと思い、「ああ、わかった。私がちゃんと見ているよ」と保護者面。

「なら一緒に行くよ。一人より二人の方が」
「ああ、いい、いい。白野こそ休んだ方がいいと思うし。別に私は仕掛けようと思ってないから」
「いや、でも」
「ミスターキシナミ、ミス名字は鍛錬に行かれるのです。お一人で考えたいこともおありでしょう、それに無理強いは美しくありません」

何食わぬ顔でラニが白野に言うと、また白野も「そうか、鍛錬か…頑張れ」と見送る姿勢。その後ろのギルガメッシュが面白くなさそうな顔をしていたのはこの際無視だ。何より今の名前のサーヴァントはセイバーであって彼ではない。よって彼のご機嫌を伺うことは考えなくて良いのだ。


そのままセイバーを従えて生徒会室を出て、購買で探索用にアイテムを揃えてから校庭にでる。相変わらず言峰神父はなにを考えているかわからない。何か知ったようにニヤニヤしてしていて正直気持ち悪かった。あの購買を使うのがマスターしかいないのだから、あの神父の楽しみのひとつなのだろう。まさか「新しいマスター専用のアイテムがあるが」と出されたのがガーターで思わず吹いた。いや、あれは名前でなくとも同じ反応だろう。霊体化していたセイバーも驚いたのか、漏れた声が聞こえた。

「さーてと、じゃあレベル上げという鍛錬に入りますか」
「ねえ、名前」
「ガーターなんて買わないからね」
「え、あ…いや」
「セイバーの変態」
「違うよ、だから変態は…」
「あ、違うの?じゃあなに?」

てっきり先程のガーターの件だと思った名前が冷たくあしらおうとすれば、どうやら違った様だ。名前が振り向けはちょっと目が泳いでいるセイバー。どうたら名前が思ったガーターに少し思うところがあったらしい。

「名前は、僕が君のサーヴァントじゃないのに…名前はこのままでいいの?」
「セイバーは嫌なの?」
「質問を質問で返さない」
「だってそれが私の答えだもの。答えが出ているものにまた質問だなんて、私は何度も同じ質問に答えるのは面倒からしない」
「……だって、彼は、ギルガメッシュは君の、名前のサーヴァントじゃないか」
「んー、とりあえずその話後にしない?忘れてるみたいだけどここモニタリングされているのよね」
「…あ、」

本当に忘れていたのだろう。少し焦った後に微かに頬に赤みが差したのが名前の位置からわかった。こんな反応はギルガメッシュじゃ絶対に見れないんだよなと思って名前は笑う。
しかしその笑ったのがセイバーには自分が笑われたのだと思い、少しムッとしている。

「ごめんごめん。ねえ、その話はレベル上げ終わってからマイルームでしよう」
「……そうだね。私もここが見られているのを失念していた落ち度もある」
『えー、もう終わりですかお二人とも』
「ええ、外野のいるところでする話ではないもので。悪いわねレオ」
『それは残念です。アーサー王の青春が見れると楽しみにしていたのですが』
「ガヴェイン、貴方のマスターのそういうところどうなのよ」
『我が主は年相応の…』
「でも覗きは良くないよ」
『……はい、王』
『失礼ですがアーサー王?僕らはミス・名字が迷宮に入ると言うことでモニタリングしているのですよ』

下心はありませんよ。ええ、ありませんとも。と顔が見えたならドヤ顔をしていりであろうという言いっぷりだ。
名前からしたら下心ありきの行動にしか思えないが、誰かがモニタリングしている必要があるのも事実。凛やラニがいないあたり、下心が濃厚に感じる。
しかしそう思っているのは名前だけなのか、セイバーは納得している。まあ、いいのだが。

『それではミス・名字、アーサー王。サポートは僕が行いますので存分に。サクラも休養していますので、時間は限られますが』
「了解した」
「それじゃあサポートお願いね、レオ。あと、変な事言わないでよね」
『おや、変な事とは?』
「白々しい」

噛みつく様に、唸る様に言えばスピーカー越しから笑い声が漏れる。名前がムッとしたように大きなため息を付くと、セイバーは的外れに「ため息は幸せが逃げると聞いたから、駄目だよ」なんて言ってくる。名前にしたらこの月の裏に来てからのつきあいではあるが大体把握している。セイバーがたまに外すのを。いや、わざと名前に対して外しているのは知らないが、こういった態度で遊んでいるのだ。心配しているフリをして、名前を構っている。

「手早く終わらせましょう」
「名前から言い出したのに?」
『そうですよ。おもしろそうなのに』
「本音漏れてるレオ。セイバーとの話もあるから手早く。これは私とセイバーの話だから部外者のレオとガヴェインには関係ないの。いい?」
『嫉妬ですか?』
「どこをどう聞けばそうなるのか」
「まあまあ…」
「だいたいセイバーがこんなところで」

文句が名前の口から漏れ始めたところで名前は口を閉じる。どうせここで言い合いをしてもなにも始まらないし、なによりレオが楽しむだけだ。もし仮にセイバーも楽しむ様であれば事実ここでする必要は全くない。ここはレベル上げの為だけに今いるのだ。そうでなければ今は必要がない、探索には岸波白野という存在がなければ進まないのだ。
「いいから早く初めて終わらせる!」と名前が口早に言うとセイバーは頷いて迷宮を走る。


「…っと、お疲れ様でした」
「お疲れ様。怪我はなかったかな」
「おかげさまで、このとおり」

一応は満足するまで鍛錬をし、それが終わればさっさと帰った。レオには「もう少し迷宮にいてはどうですか?」と名前にもわかるほどの下心が見える誘いを受けたが丁重にお断りをした。そして終わればマイルームに戻るのが普探索を担当している白野と名前のパターンであり、唯一の休養が出来る場所なのだ。
名前がベッドに腰を下ろし、一呼吸おいてセイバーに問う。

「で、あの迷宮での質問はいったいなんなのでしょうかセイバーさん」
「いきなり他人行儀な…」
「あら、そういう態度をお望みなのかと思いまして」
「……僕が悪かったよ。いつも通りでお願いするから、ね」

ベッドに座って少し睨んでいる名前にセイバーは気後れしたのか、疲れた様に笑う。思い当たるのだ、名前が怒る理由が。それが自分の言った一言なのだ。

「改めて聞かせてほしい。なぜ名前はギルガメッシュと再契約を結ばない?それは僕への同情なのか?」
「同情なんかで流されるように見える?私はそんな事に…流されなくもない、かな?」
「…名前、僕は真面目に」
「……うーん、そう言われると言葉に困る、かな。だってセイバーは今私のサーヴァントでしょう?だから私はセイバーと一緒にいる。逆に聞きたいんだけど、セイバーは私がマスターじゃ嫌なの?」

その名前の一言にセイバーば息が詰まる。
セイバーは名前が嫌いなわけでもなく、むしろ今のまま主従関係で満足している。満足しているからこそマスターである名前が後悔している気がしてならない。
セイバーから見て名前の元サーヴァントであるギルガメッシュの能力は高く、もしかしたらセイバーでは凌ぐことのできないサーヴァントだ。そのサーヴァントと契約していた名前が、もしかしたらランクダウンしたサーヴァントと契約しているのは不満なのではないのだろうか、と。

「…だ、だって」
「だって?」
「彼は、ギルガメッシュは」
「アーチャーが?」
「能力が高い、し…表でのサーヴァントで…白野君では、まだ彼の能力を引き出しきれてない、たがら」
「だから?」
「………名前は、ギルガメッシュと再契約をした方がいいと思った」

ああ、言ってしまった。つい?いや、名前が誘導するから。そんな言い訳を誰にするでもなくただセイバーは自分に言い訳をする。
セイバーの目の前の名前はきょとんとして見上げている。
それがいったい何なのか。嫉妬?いや、違う。ただそれだけはセイバーに分かる気がする。そうだ、嫉妬ではないはずだ。これきっと名前がよりよい結果に行き着くための最大の譲渡なのだと。

「まあ確かにアーチャーは能力的に高いとと思うけど、」
「…っ、」
「今の私のサーヴァントはセイバーだから。裏側にきて一番最初に助けてくれたのもセイバー」
「それは、だって…僕は言えばバグで、」
「…セイバーが、私が嫌なら契約は一旦破棄しようか?残念だけど」

セイバーが嫌なら仕方ないし。と悲しそうに言う。
名前はただセイバーがギルガメッシュが固執するがために出した結論だ。
名前とギルガメッシュはセラフによって当てられたマスターとサーヴァント。確かに表では共に戦い…とは多少表現しづらいが、それなりの信頼関係はある。ただ、今は違うというだけの話だ。今名前のサーヴァントはセイバーで、ギルガメッシュのマスターが白野というだけの事。

「私としては話のしやすいセイバーが…」
「嫌だ」
「…え?」
「嫌だ、僕は、名前がマスターがいい…契約、破棄、したくない……」
「え、ちょ!?な、なんで…泣いて…え、え?」
「したくない…僕は、名前の、サーヴァントでありたい。バグでも、」

まさかセイバーが涙を流すとは思わなかった名前は焦る。あのセイバーが、だ。

「ごめん、名前…僕は、ただ君が」
「…わた、し…が?」
「本当は、ギルガメッシュの方がいいのではと」
「…なんていうか、セイバーは要らないところに悩み過ぎだと思う。私はね、アーサーが私のサーヴァントになってくれて嬉しいよ」
「…名前」
「だから」

静かにベッドから立ち上がる名前。

「これからも私のサーヴァントでいてね、アーサー」

差し出された手に、ただセイバーは涙して名前に「握手泣くほど嫌なの?」と言われてやっとその手を取った。




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