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「#エロ」のBL小説を読む
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|||無意味のトライアングル

「なんなのよギルガメッシュ!なんでそんなに私に突っかかるの?意味がわからないんだけど!!」

と名前が声を荒げたのは記憶に新しい。
それもそうだろう。ギルガメッシュは岸波白野のサーヴァントなのに何かと名字名前に絡み、最後には名前のサーヴァントであるセイバーが庇うのが日常になりつつあった。
しかしそれを良しとは出来なく、我慢の限界だった名前は爆発した。それもう盛大に。それは普段の名前を知っている者には予想も付かないような、そんな爆発だった。
静かに怒るなんて可愛いものではなく、大声を上げて。

そんな事があり、今の生徒会室はあまり良い空気ではない。
勿論、白野のサーヴァントは霊体化しているし、名前は白野と仲が悪いわけではない。しかし白野が居るということは必然的にギルガメッシュもこの場にいるということだ。いくらなんでも名前も歴戦の魔術師だから交戦するまでいかないが、心地の良いものではないのは確かだろう。それを感じ取った生徒会の面々は静かに名前の様子をみるしかないのだ。

「さて、皆さんに集まってもらったのは他でもありません。このキューブです」
「解析の結果、これは皆さんのメモリ、記憶だと判明しました。恐らくジナコさんは先に記憶を取り戻して…」

レオの言葉を皮切りに桜が続く。
生徒会室にはレオをはじめとした面々が座り、いつもは居ない間桐慎二と殺生院キアラもいる。集められた理由はさっきレオが言った記憶媒体であるキューブだ。ここにいる全員が一部の記憶が欠損している状態。一部を除いて取り戻したかった記憶なのだ。

「さ、早く記憶を」
「これが目的でしたから」

凛とラニがそれに続く。そして桜が頷き、記憶が展開されていく。
誰の頭の中にもあらゆる場面がフラッシュ、もしくは走馬灯というのだろうか。様々なシーンが駆け巡り、欠けていた物が満たされていく。
参加の理由、戦いの記憶、そして

「…っ!!」
「名前…?どうしたんだい、顔色が…」
「セイ、バー…」
「名字さん、もしかして具合が…保健室に」
「ご無理をなさってはいけませんわ、メンタルケアならお任せ下さいな」

心配そうに名前を見る桜とキアラ。それから一呼吸置いてから慎二が大きな音をたてて椅子から転げ落ちた。

「わ、私なら…平気、だから、間桐の、方に…」
「でも、」
「私が付いているので、もし何か不調があればすぐに」
「まあ、なんて心強いサーヴァントなんでしょうか。羨ましいですわ」

マスター?と名前にセイバーが寄り添う。いつもならば名前は「迷宮以外での実体化は控えた方がいいから、なるべく霊体化していて」と言うのだが、戻った記憶はそれどころの話ではないらしい。慎二を桜に任せた白野が名前の傍に行こうとするが、目線でラニと凛に止められた。恐らく二人にはその主従の問題であり、他陣営となる自分たちが関わって良いものではないと思ったらしい。
キアラもそれを感じ取ったのか、はたまた自分の勝手なイヤラシイ方向の妄想が進んだのか、うふふふと笑いながら名前からはなれる。

「…最悪」
「どうしたんだい?もし、具合がよくないならマイルームに…」
「ううん、違う、違うの…セイバー」
「…少し、気分転換なんてどうだろう。校庭にでて、外の空気を…」
「違う、ごめん…ごめんね、セイバー。ごめん、ごめんなさい…私、ごめん、なさい」

机に伏せてただセイバーに向かって謝罪の言葉をむける。
それが何に対する謝罪なのかは今は誰にもわからない。セイバーには心当たりがまるでない。その謝罪が何なのかは名前以外には誰もわからない。勿論、白野も凛もラニもレオもユリウスもキアラも慎二も。

「ふん、謝罪を送る相手を間違えているぞ雑種。貴様が許しを請わねばならんのは、誰だ?今一度猶予をやろうではないか」
「ギルガメッシュ…どうして、というか、名前は別に…」
「黙れ雑種が。貴様に口を開くのを許した覚えはない」

実体化したギルガメッシュがまた名前に詰め寄る。今は駄目だ、今名前の精神状態はよくない。いくら名前であってもこれでは、と危惧した時だ。

「…、謝る?私が?それこそ間違いでしょう、アーチャー」
「ほう、本当に戻ったらしいな」
「ええ、戻ったわ。ええ、戻りました。こんな事言いたくないけど…アーチャー、貴方本当馬鹿じゃないの。なに真名で闊歩しているの。頭おかしいんじゃないの」
「マス、ター?…名前?どうし…」
「セイバーは少し黙っていて、お願い。今私はアーチャーと話があるの」

ガタンといきなり立ち上がり、詰め寄るギルガメッシュに応戦するように睨み返す名前。これは今までにはなかった状況だ。ギルガメッシュのマスターである白野でさえ驚いている。
まずあのギルガメッシュにそんな口がきけることが驚きだ。まるで、それは今まで長い付き合いがあったかのような、そんな。

「だいたいなんで白野のサーヴァントしてるの。それになんで真名なのよ」
「この我の事を忘れ、そんな犬風情をサーヴァントにしていた。まず我に許しを請うのがあるべき姿であろうが」
「さっさと迎えに来なかったサーヴァントに言われたくないわ。最初に迎えに来たのはセイバーでした」
「貴様が迎えに来るのが相応だろうが」

これにはその場にいた誰もが目と耳を疑った。そして取残された白野とセイバーは二人で顔を見合わせる。一体何が起こったのかを。
まるでこれでは、名前とギルガメッシュがマスターとサーヴァントの関係だったかのようではないか。

「お、おい…名前。話が、見えないんだ、けど…」
「そ、そうだ。名前、私にもわかるように」
「…あ、そうよ。名前のサーヴァント、セイバーじゃなかった」
「どういう意味なのでしょうか?ミス・トオサカ」
「私、表で一回アリーナで名前と会ったこと、あったの。その時のサーヴァントは、セイバーじゃなくてアーチャー、ギルガメッシュだったわ」

その言葉に白野が混乱する。いや、白野だけではない。これはセイバーにもショックな事実だろう。ならばセイバーは誰のサーヴァントだったのか。

「ちょっと、待ってくれないか…なら、私は」
「それは私にもちょっとわからなくて…。でもどうして私アーチャーの事忘れていたのかとか…なんでアーチャーが白野と一緒にいたのか、とか」
「だってマスターが居なかったのがいけないんです!!」
「幼年体になってもごまかされないから」

急に子供の声が聞こえたと思ったら、名前の前には少年が1人。しかも名前が気にする様子もなく会話を続けているあたりを見ると知っている少年らしい。この急展開についていけないのは白野だけではない。むしろ気にせずに居られる方がおかしいいえるのではないだろうか。

「マスター…」
「人のマスターをマスターって呼ばないでもらえますかセイバー」
「それは君でしょ。今は私セイバーのマスターだし。ごめんね、セイバー置いてけぼりで」
「あ、いや…」
「それに白野も。だいたい今は白野がマスターなんだから私の事マスターって呼ばないで」
「マスターはマスターじゃないですか」
「ギルガメッシュ…なん、だよな」
「ええ、そうですよ」
「性格違いすぎ…」
「だってこっちの方が扱い悪くなんですもん。マスターはこの姿だと大抵のことは許してくれますし。こっちの僕はマスター好きですし?」
「態度が青年体悪いから自業自得よね」

にっこりと笑った名前の顔には少しばかりの悪意が感じ取れた。
恐らく、このやりとりはギルガメッシュと名前にしてみたらいつもの事なのだろう。やりとりに慣れた感じと臆することなく言いたいことを言っているのだ、あの名前が。苦手そうにしていたあの名前がだ。記憶とはそこまで左右するのだろうかと誰もが客観的に思っただろう。

「し、質問」
「はい、白野」
「ギルガメッシュと、名前は…表で契約関係だった…んだよ、な?」
「はい、お兄さん正解でーす。なのでその捻れは早急に解決すべきだと思うんですマスター」
「今は君のマスターじゃなくてセイバーのマスターです。それに今君と白野が契約切ったら白野が困るでしょう」
「その犬コロがお兄さんのサーヴァントになればいいと思います」
「…え、」

ピッとしなやかな指がセイバーを指す。それに誘導されるようにただ困惑している現名前のサーヴァントであるセイバーを見る。
名前の記憶が戻り、表で自分が名前のサーヴァントではなかっという事。では自分は一体なんなのか、自分が名前のサーヴァントでないなら本来サーヴァントであるギルガメッシュと再契約するのか本来なのでないか。ただそういった事柄が頭を駆け巡っているのだろう、珍しく焦りがセイバーの顔にでている。

「勝手なこと言わないの」
「…名前、」
「今の私のサーヴァントは君じゃないって何回言わせるの。私のサーヴァントはセイバーなのよ。セイバーいじめたら…どうしようかな」
「僕に勝てるとお思いで?」
「あら、元マスターに刃向かうの?」
「魔力供給はお兄さんですから、今のマスターじゃ手綱を持ってないのはご存知ですよね?」
「ええ。でも私のサーヴァントはセイバーで、私がただ指示をするだけの無能なマスターと思っているのかしら。まさかとは思うけど」
「……そ、そういえばあの人好き勝手やってましたから…マスターの実力、僕知らない…」
「セイバー、私ってどんなマスター?この幼年体に教えてあげて。勿論、私とセイバーの相性についても」

遠慮する事無いわ、セイバーの感想も聞きたいもの。といつもよりトーンの低い声でセイバーに指示をする。
自分を「私のサーヴァント」と呼んでくれる名前に感謝をしながらも、どうしていいのかわからないセイバーは再度名前に呼ばれてからやっとその口を開く。




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