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|||白野とギルガメッシュ

「という事で、私もこれから探索に協力するからよろしく」

迷宮の入口である桜の木の前で名前は岸波白野に手を振る。
一瞬驚いた様子の彼は快く「よろしく」と名前に返した。
ここに落ちてすぐに再会し、名前の脚のデータ欠損により凛の対処は全て岸波白野任せとなり、復帰した凛に「月の女王様ではありませんか」とうっかり名前が口走り凛が暴れたのは記憶に新しい。

「脚の具合良くなったんだな」
「おかげさまで。折角私もサーヴァントが居たのに協力できなくてごめんね」
「いや、仲間がいるだけでも違うから。それに一緒に迷宮に行ってくれるってだけでも心強い」
「仕事はちゃんとするから大丈夫」

それじゃあ、行こうか。と迷宮に脚を向ける。
サーヴァントに休む事に専念する事と言われ、簡単な結果報告のみでしか知らなかった迷宮の新たな階層に名前は息を飲んだ。それは自分が見ていた階層とはまた趣が違い、また迷宮の本質を知って禍々しい何かを感じ取れた。
新しい階層に脚をつけると、互いの背後に従者が姿を現す。

「一応は仲間だから紹介しておくね、セイバーよ」
「先日は挨拶も早々に終わってしまって申し訳なかったね。セイバーだ、よろしく」
「岸波白野です。彼はギルガメッシュ」
「………」
「…クラス名じゃ、ないの?ガウェインみたいに隠さない方向性?」
「いや、そうじゃなくて…」
「この我をクラスに当てはめるだと?まあ、表ではそうだろうかここは裏だ」

何故か無意味にギルガメッシュに睨まれて名前は感覚で言うなら萎縮した。別に身の危険を感じたわけではないが、睨まれるのは良い気分ではない。あまり関わらないほうが良さそうだと感じとり、それならばさっさと別行動で自分のサーヴァントと行動した方が良い。白野とは生徒会室での報告等で会えば彼のサーヴァントは名前のセイバー同様に姿は出さないだろうという考えだ。

「おい、覚えていないのか」
「…え、わ、私?え、な、何が」
「この我を覚えていないだと?ふざけるのも大概にしろよ雑種」
「は、白野くーん?ちょ、何で私絡まれているの」
「ギルガメッシュ、やめろよ。名前が困っているだろ」
「人のマスターに難癖をつけようというのか?」

睨まれ、顔をぐっと近づけられてよろめいた名前。ちょうど後ろに居たセイバーが背中を支えてくれたので何とか体勢は保たれたが、やはり睨まれている。
白野がギルガメッシュを引っ張り、名前からはなれるようにと促すが全く意に介していない。むしろ逆の方向に力が入り、余計に近い。それを見かねてセイバーが少しばかり威嚇をしてくれたがあまり効果は見られない。
流石に体重の大半をセイバーにかけてしまい、ついでに姿勢も辛くなった時にやっと解放された。データでしかないからだが、翌日変なところが痛くなっていそうだ。

「大丈夫?マスター」
「な、なんとか。セイバーありがとう、重くなかった?」
「平気だよ。マスターの脚が回復するまで抱いていたわけだし、今更だよ」
「それもそうか」
「え!」

白野の驚いた声に今度は名前が驚いた。ついでに言うとギルガメッシュも驚いた顔をしている。
名前にしてみたら別段驚く事でもない。セイバーは言えばマスターの介護をしていたのだ。データ欠損の為に動かない脚の代わりの移動手段だ。嫌らしい意味はまったくない。

「おい…貴様、抱くと言ったか」
「ああ、別におかしい事じゃないだろう?マスターに尽くすのは極自然だと思うが」
「貴様、どういう了見だ。我を覚えていないというだけでも不敬だというのに、よほど死にたいらしいな」
「何か勘違いしているみだから言っておくけど、私脚のデータが欠損して移動も何も出来なかったからセイバーに介護してもらっていただけなんだけど」

桜から聞いてないの?と一瞬名前の頭に浮かんだが、一々報告する事柄でもないから桜も言う必要がないと判断したのかと答がでた。出てしまえば答えは早い。どうやら何かと勘違いしたのだろう。そう名前が答えた事によって白野は「そ、そうか…大変だったんだな」とあからさまに同様した様子で目が泳いでいた。

「…ねえ、ちょっと気になったんだけど。覚えてないって、どういうこと?」
「ああ、それ気になってた。どういうことなんだ、ギルガメッシュ」
「貴様の問いに答えてやる義理も必要もないが、仕方あるまい」
『はい、ほら無駄話は後にしてちょうだい。今は迷宮よ、迷宮。ラニが待っているんだから』

一瞬だけノイズ音が混じって聞こえた凛の声。
忘れていたがここの音声等は全て生徒会室に繋がってまる聞こえだし丸見えなのだ。
おそらくレオは笑いすぎてお腹が痛いのではないだろうか。勝手な名前の想像でしかないが。
それを見かねて凛がストップをかけたというところだろう。

「そうね、月の女王様の御命令ですし」
『名前!!』
「冗談よ、凛」
『今度言ったらただじゃすまないんだからね!』
「凛がただで済ましてくれた事のほうが少ないでしょ」
『あはははは!!ミス・◇は御冗談が上手い。あーおかしい』
「褒め言葉としてもらっておくわ」
「マスター」
「わかってます。よし、じゃあ白野。まだ私もデータ欠損が治ったばかりだから本調子じゃないけど頑張るね。セイバーもいるからそれほど足は引っ張らないとは思うけど」
「大丈夫、知っている限り名前は凄腕の魔術師じゃないか」

なにやら面白くなさそうにギルガメッシュに睨まれている気がした名前だが、それは気のせいだと無視して探索を開始する。
まずはどんな様子なのかと最初は白野と一緒に探索し、要領を得ればサーヴァントとの行動で問題はない。そろそろそうしようかと思い、白野に声をかけて別行動に移ろうとした時だ。

「おいギルガメッシュ、そっちじゃないだろ」
「…ぬ?」
「ぬ?じゃない。そっちは名前が行くから、こっちだろ」
「…ギルガメッシュは意外と抜けているんだな。いくらなんでも自分のマスターを間違えては駄目だろう」
「……言っていろ。最後に泣きを見るのは貴様だと決まっているのだからな、精々媚びておけばよかろう」
「なに言っているんだよ、ほら」

白野に促されて不満そうに名前を睨み、ギルガメッシュは白野と一緒に別ルートに姿を消す。
そこには少しばかり面食らった名前がなんともいえない表情で二人が消えた道を眺め、そしてサーヴァントであるセイバーの顔を見る。

「どうかした?」
「…いや、私って、そんなに絡まれやすいのかなって」
「名前というより、僕かもね」
「セイバーが?私にはセイバーより私を睨んでいるような気がして…何かしちゃったのかな…」

うーん。と頭を傾げるが名前にはまるで検討がつかない。
あまり悩むのも時間がもったいないから探索が終わった後にでも一緒に考えようか。と言うセイバーの提案に名前は頷いて探索を再会した。


「名前、脚の調子は大丈夫?」
「平気よ、なんにも問題ないから安心して」

回復した脚が軽やかに足音をたててセイバーの目の前を駆ける。
セイバーから見たら名前は見下ろす背丈。髪が走る度に揺れては白い首筋が見え隠れする。
その名前はつい先日、といってもこの月の裏側では時間という概念は無いに等しいのだが、その折りに脚のデータ欠損によって介護を必要としていた。介護といっても移動程度の事だ。
旧校舎内の移動を主にして、NPCや知り合いのマスター達に色々言われながらも見て回った。その名前が今目の前で自分の脚で移動していると思うと、どうも感動してしまうとセイバーは内心泣きそうである。

「…セイバー?」
「うん?」
「私が走ってるを見てニヤニヤするの、止めてもらえる?」
「へ?」
「ニヤニヤしてるから」

後ろをチラリと覗くように名前がセイバーを見る。どうやらセイバーは名前の姿を見て感動を通り越してニヤツいていたらしく、名前が無意味に警戒していたらしい。その名前の目つきは警戒そのもので、「まさか私のサーヴァント変態なの?」という心配も少し入っている。

「あ、ごめん。つい感動して」
「…感動?」

なんの話?と言わんばかりに走っていた脚をゆるめ、セイバーに向き合う名前。
しばらく動かなかったせいか、多少の運動不足もあるのだろう。息が心なしか上がって、顔の血色もよく前髪が額に張り付いている。

「動けなかった名前が走ってるなって」
「…本当に?」
「うん。あと転ばないか心配を少し」
「……子供扱いしてたのか…」
「まさか。病み上がり…ではないけど、調子を心配していただけだよ」
「ふーん?まあいいわ。私、もしかしてセイバーは後ろ姿フェチなのかと思って心配したのよ」

うふふ。と読めない笑顔で笑う名前。
お互いに180°違う心配をしていた二人だが、まあそんな行き違いもあると二人で意味深げに笑い合う。

「ああ、でも」
「でも?」
「そのスカート短いよね。いつ下着が見えてしまうのかと思って冷や冷やしていたよ」
「ニヤニヤしていたセイバーにその言葉は逆効果だよね」
「え」
「下着よ見えろ!って祈っていたみたい」

その短いスカートの裾を持ってピラピラと波打たせる名前。
用意周到とまではいかないが、準備がいい名前の事だから下にはショートパンツを穿いている事だろうとセイバーは読んでいる。
名前の白い脚が濃紺から黒に近い色の濃いスカートと対比して余計に白く見えるのがなんだか悩ましい。

「名前、そんなはしたない事はしない。レディだろう?」
「はーい」
「返事は短く」
「…そうね。言うこと聞かないと誰かさんみたいに結婚の命令を受けてしまうかもだし?はい」
「…、名前」
「はい、なにかしらセイバー」
「別に僕は命じたわけじゃ…」
「あら、そうでした?私てっきり御命じになられたのかとばかり」

そうですわね、かの有名なアーサー王ともあろうお方がまさかそんな事を御命じになるなんて、まさか。とわざとらしく名前は笑った。




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