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|||婆裟羅:姫と天海。/ 天海(悠里様)

※貳主


「これはこれは、最近お加減はよろしいようで。何よりですね名前殿」

「ええお陰様で」


そう言って名前は目の前の白く長い髪の男に表面上微笑んで見せた。
名前はこの男が好きではない。
それは男もそうであると、名前は勘ながらわかっている。
男が名前を見る目は、僧でありながら獲物を射る様な目つきだ。


「天海殿は金吾とご一緒ではないのですね」

「ええ、三成殿とお話の様ですよ。ククク…」

「まあ、珍しい。金吾が天海殿から離れるなんて」

「それはこちらも一緒ですよ…あの三成殿が離れるとは、ねえ」


互いに距離をはかりながら、間合いを詰める。
名前は今や豊臣の当主。
存在を軽んじてはいられない立場だ。
目の前には敵になりうる存在。信用もなければ、信頼もない。
護身用にと三成に持たされた懐刀に手が届くように配慮した。


「…そう警戒しないでください。襲ったりしませんよ」

「そうでしょうか?男には警戒を怠るなと、三成が煩くて。万人がそうとは思ってはいませんが、備えあれば憂いなしと言いますから」

「おやおや、これは手厳しい」


ジットリとした雰囲気が天海から去らない。
そうだ、これは昔に襲われた山賊に似ているのだ。
あれは名前が女というのと、金を狙っていた。
天海は山賊とは違うが、それに近い雰囲気がする。
名前の何かを狙っている。


「風の噂を耳にしましたが、銃が扱えそうですね。馬さえ乗れるとか」

「…護られるだけの姫ではいられませんから。今度御手合わせしたしませんか?」

「おやおや、恐ろしいですねえ。私は僧ですよ?殺生な」

「何をこの期に及んで…。あの様な大鎌を振り回す方が」

「名前殿、私は民を護るために手にしたまで。己の為ではございません。ええ、そうですとも…」


あの口を覆う面がなければ、ニタリと笑ったのが見えるのだろう。
こういう人間は、現代でいうならば猟奇的だというのだろう。
金吾や三成などはこの男の本質を知らないのだろう。
名前は人の本質を見破るのが得意なわけではないが、こういった雰囲気を感じとる。
防衛本能が優れているのか、苦手意識を持つとその様な面が目に付くのかもしれないが。


「名前様、この様な場所で…おい、貴様。名前様を目の前に頭が高いぞ」

「三成、そう邪険にしない。それでは天海殿、これにて」

「…ええ、お大事に」



姫と天海。




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