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|||いざ行かん、

「おかしいけど、おかしくない…?」

「どうした、そんな疑問に満ちた顔をして」

「衛宮に…今日準備が出来たらいつでも来いよって言われて」

「…それがどうした?昨日誘われたと言っていたではないか」


漫画雑誌を手に青年体となったギルガメッシュが名前に言う。
テレビの前で漫画雑誌を開き、テレビではアニメがしている。テレビの下におかれたプレーヤーが起動しているところを見ると、録画かレンタルしてきた物らしい。名前はそう言ったものにあまり興味がないので解らないが、そういえば最近良く見ているアニメだ。


「だって昨日は4日目、今日は初日の1日目。昨日だけど昨日じゃないでしょう?」

「繰り返しのうちの1日の事など些細な事だろうに。繰り返しとて記憶は残っていても問題はない。そうでなくばお前のバイトだって辻褄があわん」

「…そっか、確かに。そうじゃないとアーチャー以外の関係がリセットされるね」

「我としては問題ないがな。しかし漫画の続きが読めんのは腹立たしい」

「その続きは出ないの?」

「大きな流れは変わらんのだろうな。まず繰り返すのは閉鎖的空間だ。その外と時間の流れを同じにするな」

「矛盾している感じがあるけど…まあ、私自身が矛盾のひとつなんだから気にしないことにしよう」

「ほう、賢くなったではないか」


飽きたのであろう雑誌がパタンと音を立ててから床に置かれる。名前にしてみれば、読み飽きたのなら買ってこなければ良いと思うが、そうでもないらしい。確かに漫画雑誌を買ってくるが、同じ名前の雑誌を買っては来ない。今まで買ってきた雑誌たちは部屋の隅に山積にされているので、それは名前にも解る。
前になんとなくその本を手にとって読んでみたが「次号につづく!!」や「次回、この状況を打破できるのか!?」という煽り文句。しかも前の話が全くもってわからなかった。それも全ての雑誌。その雑誌の中にも読み切りというものや、第1話などがあり、それならば名前にも楽しむことができた。


「そういえば買ってくる雑誌、だいたい戦ってるよね」

「少年誌とはそういうものだ」

「少年誌?じゃあ、少女誌もあるの?」

「女向けの漫画雑誌のことならな。恋愛などというものに重点をおいている」


それの何処か面白いのか我にはわからん。とテレビを眺め始める。
閉鎖した空間なりに暇つぶしを見つけるのも大変なのだ。と変な持論をぶつけてくるが、それが爆発した試しはない。暴れまわるとか、他サーヴァントへの襲撃。それが無いのは名前としても有難い。それに付き合えとは言われないだろうが、マスターとしての責任というものもある。まずいちに衛宮のセイバーと戦うとか言い出したら色々と面倒なのだ。何故ならバイト先での関係もあるからだ。唯我独尊のギルガメッシュには関係ないだろうが、名前にとっては一応同僚なのだ。怪我をさせたとなれば衛宮がどう思おうが名前が良い気持ちはしない。凛のサーヴァントならば多少いいかもと思ってしまうのは仕方がないにしても、だ。


「おい、まだ行かんのか」

「そろそろ。洗濯も終わったし…アーチャーはどうする?行くの?」

「……気は乗らんが、どうしてもと言うなら行ってやらんことはない」

「…アーチャーは行かない方がいいんじゃないの?セイバーが物凄く嫌な顔しそう」

「敵陣に一人で行くとはこれもまた道化か」

「私がやられたら問答無用でアーチャーも道連れだけどね。じゃあ私衛宮の所に御呼ばれしてるから行くね。ご飯の食べるつもりなら用意はしてないから自分で用意して」

「貴様…王たる我に良い度胸だ」

「魔力供給で食べなくても平気じゃない」


基本的にサーヴァントは食事は要らないはず。この部屋で名前が食べていると興味本位で手を出してくるが、絶対と言って良いほどこの青年体は文句を言ってくる。それなら食べるなと言うのがだいたいのパターンになりつつある。子供の方であれば文句は言わず、一緒に食べるのだが、どうもこの青年体は何か言わなければいけないらしい。


「…貴様だけ食事、この我を招待しない雑種供に思い知らせてくれよう」

「衛宮以外は歓迎しないと思うけどね」


要は行くらしい。子供の姿ならばそこまで回りくどい事はしないのだろうが、まったく青年体の方が手がかかるとはどういうことなのか。
名前はひとつ溜息を漏らしてから外出用の鞄を手にして玄関に向かう。そしてドアノブに手を掛けようとした瞬間、インターホンが訪問者が来た事を知らせる。


「…はい?」

「よう、名前…なんだ、出掛けるのか?」

「ランサー…と、凛のアーチャー。なに?どうしたの」

「飯をな。どっか出掛けるのか?」

「うん、衛宮の家。ご飯食べに来ないかって誘われて」

「君は衛宮士郎と交友があるのか?あんな男に付き合うな、毒にしかならん」

「我のマスターを飯使いにするつもりか」


一緒に衛宮邸に行くので、後ろにそういえばいたのだと思い出す名前。ますパスか通っているので気配と言うものを意識したことがなかったのだ。そうでなければ男が後ろにいれば忘れるはずもない。
当の名前がそれほど驚いていないなか、目の前のサーヴァントたちは驚いている様子。ここにギルガメッシュがいるのはランサーだけだが知っていたはずだ。ついでにいえば、名前と契約しているサーヴァントがギルガメッシュだと言う事は凛のサーヴァントも知っているはず。


「…名前、お前ちゃんとマスター扱いされてるんだな」

「え、ああ…一応は」

「英雄王がサーヴァントなど、内心信じていなかったが…本当のようだな」

「一応パスはあるよ。なので、供給絞って黙られる事もできる」

「おい、無駄口を叩いているならさっさと行け。貴様の魔力が滞れば我に影響がでる」

「というかね、私の住まいはサーヴァントの溜り場じゃないのよ。だから他のサーヴァント誘ってこないでくれる?あの同一人物の彼でさえこのところ最近は来てないんだし」

「…じゃあ坊主のところで厄介になるとするか。おい弓兵、お前どうするよ」

「行かん。凛だけではなく小僧もいる、そこに英雄王がいて休まるか」

「ここにきても英雄王はいるけどね。私の契約してるサーヴァントだから」

「一人ならばさして問題ではない。そこに他が加わるのが面倒なのだ」


では失礼。とさっさと姿を消す凛のアーチャー。一体何しに来のだろうか。恐らくはランサーに誘われてやってきたのだろうが、全く持って意図がつかめない。
そういえば岸波白野との戦いに置いても正体さえ上手く掴む事さえ出来なかった英霊だ。敵であった存在なのだ、意図が掴めなくても仕方がない。そう名前は思うことにした。

それからランサーが加わり衛宮の家にむかう。行きに空手では申し訳ないからとケーキショップに立ち寄り、ホールケーキをひとつ。あの家には女性が多いのだから喜ばれるだろう。それを購入して店をでるとさり気なくケーキの入った箱を持つランサー。意外と紳士らしい。ギルガメッシュは「さっさとしろ」と文句を言ってくる始末だ。
その光景に同情した目でランサーに見られたが、その扱いには慣れているので特に酷いとは思わない。むしろ優しい対応をされた方が何か恐いところがある。


「ごめんくださーい」

「名前、いらっしゃ…ランサー、ギルガメッシュも。どうしたの」

「どうしたのって酷ぇな。名前が飯食いに坊主のところ行くって言うから付いてきたんだよ」


顔を覗かせたのは家主の衛宮士郎ではなく、遠坂凛。衛宮から聞いていたのか名前には好意的ではるが、一緒のサーヴァント二人にはかなり嫌な顔をしている。彼女にてみれば、名前だけがき、他にきてもギルガメッシュくらいだと思っていたのだろう。そこにランサーが来のだから頷けなくもない。それに凛のアーチャーが加わったなら、もっと嫌な顔をしただろう。


「ほれ、土産。名前のな」

「あら、ありがとう。まさかランサーまで来るなんて…。まあいいんじゃない」

「ランサーはちょっと解らないけど、アーチャーなら私がなんとかするから安心してね」


ならいいわ。と凛は笑った。




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