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|||二人の少年と

「名前ちゃん、彼氏とケンカしたんだって?」

「…え?」


にやにやとした表情で名前に向かう雇い主。えみやんから聞いたよー。と楽しげに問うてくる。
恐らく彼女が名前の彼氏というのはアーチャー、ギルガメッシュの事なのだろう。言っておくが、彼女には何度も何度もそういう関係ではないと伝えてある。


「えみやんがさ、言ってたのよね。昨日の夜、名前ちゃんが一人で居たって。それを相談されちゃってさー。それで、えみやんに『もしかして名前ちゃん彼氏となんかあったのかな』って言っちゃってさ…」

「ネコさん…衛宮にそんなこと言ったら無駄に心配される私の身にもなってくださいよ…」

「…ごめん」


配達に出ていた衛宮が戻り、名前に要らない心配をしてくれたのは言うまでもないだろう。その間に雇い主は「名前ちゃん、ごめんねー」と遠巻きに謝られたが、それならば衛宮の誤解をどうにかしてもらいたいと思うのが普通だろう。
まず本当ならば彼氏ではないというところから始まるが、ではどういう関係だと言わるのが関の山。ならば黙って「もう大丈夫」と有無を言わせないのが手っ取り早いだろうと。
そして衛宮のお説教が終わると同じくして、雇い主に「今日はもう上がっていいよ」と声を掛けられた。


「本当に彼氏が原因じゃないんだな。暴力とか受けてないんだよな」

「大丈夫、ないから。それよりも今日何か特売とかないの?」


そうだな…。と思い出す仕草をする衛宮。なにかと話を逸らすが、それ以上突っ込んでこないのは有難い。それだけ信頼を得ているのか、得ていないのかは分からないが。そこまで名前も踏み込むことはないからいいのだろう。
衛宮は「確か商店街の八百屋が安い。あと惣菜屋が今日曜日セールの日だ」といい情報をくれた。そうか、今日はちょっとお惣菜屋さんの力を借りようかと思考をめぐらす。


「おい、名字。本当に何かあったらいつでも相談に乗るからな」

「大丈夫だって、」

「名前。バイトおしまいですか?」

「…名字の、知り合いか?」

「まあ、ね。それよりも、どうしてもう一人」

「反応がいまいちですね…まあ、君達から見たら僕の違いもすぐですか」


バイト先の裏口に姿を現したのは金髪の少年。一人は名前のサーヴァントで間違いないが、もう一人はこちらのギルガメッシュだろう。前に1度あっているのでそこまでの驚きはない。まあ、まさにそっくりな二人だ。しかも同じような服装、はたから見れば双子である。
ここで話していると衛宮が気になってまた話が長引きそうだ。せっかく衛宮の説教という心配性から逃げられるのだ、早く逃げてしまう事に限る。じゃあね、と衛宮に声を掛けてから裏口を離れる。その後ろを少年二人が付いてきているのを感じながら。


「今日はどうして二人なの?」

「なんとなく?たまたま今日遊んだ子供たちと一緒だっただので」

「誘われたので、来ちゃいました」

「ふーん?」

「今日のご飯はなんですか?」

「衛宮がお惣菜屋さんのセール日だって教えてくれたから、お惣菜を買おうかと」

「手抜きですね…」

「でも麻婆豆腐に比べたら、すごく羨ましいです…いいなぁ」


そういえば。と名前は思い出す。購買の商品の激辛麻婆豆腐だけは決して買ってくれるなと必死の形相で言われたことがあった。どうやらこのサーヴァントにとって麻婆豆腐は恐怖の対象、しかもデータとなってまで記録に残るほどの。いったい何があったかを聞くのもいいが、なんだか面倒くさそうだと名前は無視を決め込む事にした。


「ねえねえお姉さん、今日はお姉さんの所でご飯食べていいですか?」

「…え?まあ、いいけど…文句言わないでよ」

「惣菜に頼るくらいですからね、そのあたりは解ってますよ」

「ちょっと、そういう言い方やめてもらえます?僕のマスターなんですから」

「それはフォローと考えていいのかな、アーチャー」


フォローじゃいですけど、マスターの事馬鹿にされたらいい気分しないので。とニコリと笑いながら名前の横に姿を現す。名前を挟んで反対側にはもう一人のギルガメッシュ。そちらの方はふーん。といった表情で見ている。
同じ英霊ギルガメッシュという存在だが、マスターの違い、それか現界してる環境が違うのか少し差異が生じている。名前がマスターであって、契約しているか否かという事もあるだろうが。
衛宮から教えて貰った惣菜屋にいき、おすすめと書かれたポップをみてそれを人数分。とりあえずの懐事情はバイトのおかげで何とかなっている。サーヴァントの援助もあるが、最近はその援助がなくても食費は何とかなっている。


「お嬢さん、お花…」

「あ、」

「どうしたの?…あ。」

「うげ、…って、いつの間に分裂したんだよお前……」


花屋の前に差し掛かった時だ。月で何度か聞いた声が聞こえたのだ。その声をした方を見ると、名前の仲間だった凛のサーヴァントの姿。きっとここでの彼も名前の知る存在のサーヴァントではないのだろう。そうでなれければおかしいのだ。


「残念ですが、僕らは分裂していませんよ」

「まあ、分裂とかいう発想が貧相ですよね」

「な…」

「はいはい、ケンカ売らないの。トラブル起こしたら今日のご飯なしだからね」

「…とりあえず、このお嬢さんとどういう関係だよ」


ああ、もしかしたらここにはギルガメッシュとランサーの他に知っている存在が居るのかもしれない。そんなことが名前の頭をよぎった。




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