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|||戦国無双:鈍感娘と奥手/ 幸村(ぼん様)

※連主

「指笛…ですか?」

「はい、どうも上手くできなくて…」


馬を目の前にした名前がなにやら上半身が前後に揺れているのが見えた幸村。
何をしているのかと思い、声をかけると名前は指を輪の形にしてくわえていた。


「ただ息が漏れて、すぅすぅと音がでるだけで…ピィと音が鳴りません」

「それで。遠くから見たらいったい何をなさっているのかと」

「すみません…」

「いえ、しかしなぜ指笛を?」

「馬を呼ぶために。私は足が早くないし、なにより体力がありません。なので」


少し恥ずかしそうに笑う名前。
幸村からしてみれば、指笛は実に容易い。何故ならば、それこそ何度も何度も使い、呼び慣れている。幼い頃より叩き込まれた。

再び口に指をくわえ、吹いてみるが、やはり聞こえるのは風が漏れる音。
その時に膨らむ頬が普段は大人びた雰囲気をだす名前には似合わなくて、可愛らしい。


「…口笛なら簡単なんですが」

「口笛…?」


頷き、口を尖らせた名前。
その行動にドキリした幸村はサッと目線をそらすと、それと同時に小鳥の鳴く様に甲高い音が耳に入った。
ピィピィと鳴く声を紛れもなく名前が出している。
そろりと伺うと、やはりそうだ。
名前が口を少し突き出して音を出している。


「口笛では、馬を呼ぶのに適してないので…こうして練習しているわけです。皆さんの様に出来なくて」

「私で良ければ、お手伝い致します」

「…いいんですか?お忙しくありませんか?」

「はい、幸いにも時間はありますので名前殿」


人の良さそうな顔でニコリと笑う幸村に名前は、その申し出を有り難く甘える事にした。

幸村の教えは指の形、唇の当て方、そして息の入り方を懇切丁寧に正に手取り教えてくれた。


「その指の形のまま唇に当てて…そうです。最初はゆっくり吹いてください……音が出るところを探って」


ピュ…。と小さく漏れた音。
かすかではあったが、確かに鳴った指笛。
それに驚いた名前は目を見開いて、そのままの形で幸村を見上げた。


「でた…!!」

「かすかでしたが…ね」

「すごい!流石幸村殿ですね!私の様な不器用にも出来ました!」

「そんな…私はただ…。それに、これからまだ練習しないとですよ?」


それでも出ました。

本当に、心から喜んだ表情の名前。
こんな名前を見るのは初めての幸村。
恐らくこんなにも喜んだ名前を見たのはいないに等しいだろう。
なにせ名前はあまり表情を変えないし、幸村と関わりがあるといえど名前も幸村の様に礼儀正しくしようと努めている。
だからいつも一歩下がった態度でいるのだ。

そんな名前の表情がひどく愛おしく思ってしまった幸村は、先程まで触れていた名前の手の感触が急に思い出されて心が掻き乱れた。



鈍感娘と奥手




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