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「#エロ」のBL小説を読む
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|||パスの繋がり

「大丈夫ですか?」

「え?」

「顔赤いわよ名前」


ラニと凛が心配そうにしている。確かにさっきから頭がボンヤリとして、なんだか熱い。
魔力不足か?と思ったが、あれ以来サーヴァント2体に対して極力霊体化、もしくはマイルームに居ることと命じてある。マイルームでの待機は万が一の為。霊体化は省エネだ。


「言われてみれば…ボーっとする。熱いし、ふわふわするような…しないような」

「免疫力の低下でしょうか」

「この電脳世界で?それかまたバグじゃないかしら。ほら、白野みたいに追加バグ」

「白野さんの追加バグは可愛らしいバグなので、直ってしまうのが惜しいですね」


白野の追加バグは、身長の退化と言ったほうがいいのか。ようは縮んでしまったのだ。見た目は十歳前後くらいだろうか。猫の耳はそのままに、幼くなってしまった。
周りから見ると実に可愛らしいのだが、白野のサーヴァントがとても困っていた。彼自身は否定しているが、白野に溺愛なのだ。これは周りが全員知っている。だからこそ、余計に心配しているのが丸解りだったので、よく凛のランサーがからかっていた。その凛のランサーだが、名前のアーチャーにもチョッカイを出すかと思ったが、過去に一悶着あったらしく、あまり関わりたくないようだ。


「でも、体調悪いみたいだし…マイルームに戻ったら?」

「それが賢明だと思います。ここでは身体も休まらないと思いますし」

「うーん。じゃあ、そうしようかな。学生じゃないから勉強ってこともないし…」


気をつけて戻りなさいよ。と凛からの言葉を貰って、二人と別れた。
前に引いた風邪とはまた違う感覚。確かに足元はおぼつかないが、悪寒といった類は感じない。頭痛もなければ関節痛も、喉の痛み、咳やくしゃみといったものもない。
これもバグの類なのか、凛の言ったとおりならば暫くはこのままの体調だ。魔力の放出が倍になったしまった現在、どうしてこうも負担のバグばかりが己の身に起きてしまうのか。
名前は溜息をついた。


「ただい…」

「おお、奏者よ、帰ったか!待っておった…顔が赤いが、どうしたのだ」

「…ちょっと、これ、どういう事!」

「何がだ、我が何をしようと勝手だろう?だいたい、お前の為にこの狭苦しい部屋にこもってやっているのだ。文句を言われる筋合いはないはずだ」


見れば酒宴が行われている自室。入れば見事に酒臭いではないか。
そこでは2体のサーヴァントが酒を飲み、盛大とはいえないが、それなりに楽しんでいる。
セイバーは黄金の杯を片手に、ニコニコして名前の迎えに出、アーチャーは動かず名前の言葉に動じることも無い。
見ればアーチャーの手にも杯。二人で昼間から飲んでいるのだ。


「どうしてかな…どうしてこう、昼間から酒飲むの」

「なんだ、それは簡単なことだ奏者。余とアレのどちらが真の王か、ひいてはそなたに相応しいかの余興だ」

「雑種、戯言も大概にしろ。相応しい等、問題ではない。それは我に魔力を献上するために居るのだ。どちらが王というのも、偽者を下す為の余興にすぎん」

「ふん、余の方が飲みっぷりがいいから焦っておるな?よい、その程度の妄言くらい見逃してやろうではないか。しかし、アーチャーよ。この酒、味はいいが一向に酔わんではないか。一体お前の酒は何なのだ」


そのセイバーの言葉にムッとしたアーチャーだったが、少し考えるそぶりを見せる。
どうやら彼自身もそう思っていららしく、考えならが酒を煽るが、味しかしない。それではただの飲み物でしかない。なんの楽しみもなく、過去に行った格の競い合いでもない。ただの子供の暇つぶしだ。


「まあ今は奏者が戻ったのだ、良しとしよう。して奏者、その顔はどうした?具合でも良くないのか?また魔力不足なのか?」

「ああ…うん。ちょっと、ね。なんだか、ふわふわして…頭ボーっとしてさ」

「ふむ…目も少し潤んでおるが…大丈夫なのか?」


たぶん。と答えようとした時だ、急に足元がふらついてその場に名前は座り込んでしまった。突然の事にセイバーは名前が具合が悪いのだと思い、心配そうに見つめ、額に手を置いて熱の確認をする。しかし熱らしい感じはしない、あるなら多少熱いくらいで問題のない程度。
そんな風にマスターである名前を心配するセイバーを横目に、アーチャーは名前を見て考えている様子。そしてニヤリと口角を上げて何かを思いついた。


「おい名前。お前、酒は飲んだことがあるか?」

「…そんなの、どうでもいいでしょ」

「そうだぞ、アー…ああ、そいうこと、なのか?」

「…なに?」


普段はしないであろう、小さく頭をかしげ、上目遣いで見上げる名前。しかもいっつもならばキリリとした眉が、へにゃりとハの字状態。セイバーは見慣れない名前に目を輝かせ、「愛い、愛いぞ奏者!!」と鼻息が荒い。アーチャーにいたっては、普段は何かと邪険にされているので、とても良い笑顔で眺めている。
いつも強気で、青年体には厳しい名前。バグによって新たな契約を強制的に結んだセイバーとは仲がよく、面白くなかったが、これはいい。普段の仕返しができるのではないかとささやかにイタズラ心が芽生えた。


「名前、良い事を教えてやろうか」

「…?」

「その雑種が言っておっただろう?我の酒は美味いが酔えん、とな。それは恐らくこういう事なのだろう。我と雑種が飲んだ酒のアルコール分が名前にパスを通じて流れ込んだ、という仮定でしかないが。これもバグだろうがな、厄介だ。これでは飲めども格の違いを見せてやれん」


そう言ってまた酒を煽るアーチャー。すると、それから一呼吸置いて名前の視界が揺れた。揺れたといっても、見ている風景が変わったのではない、頭がふらりと揺れただけ。いや、そう感じたのは名前だけなのかもしれない。大きく揺れたのなら、セイバーが何かしらのアクションを起こすはず。


「…な、ん?じゃ、わたし…貴方達、のあるこーる?」

「まあ、そうだろうな。実に残念だ。これでは我が楽しめん。ならば名前、どうすべきだと思う?」

「ほう、アーチャー。奏者で楽しむとでも言いたげだな」

「雑種、口を開くのもいい加減にしておけ。今は我が名前と話てやっているのだ。なあ名前、いつもならパスを絞っては我にしていたが…今はそれも出来まい?」

「…う、ん」

「ならば普段の仕返しをしてやろうではないか。我が酔えんのならば、代わりに酔って楽しませろ」


そしてまた煽る杯。その行動にくらりとする頭。このままでは酒を飲んだわけではないのに酔っ払って、明日には二日酔いという可能性がある。
息がしづらく、熱く、くらくらとして苦しい。
名前はうまく働かない頭で必死に考えて、とりあえずの善策として立とうと力を入れるが立ち上がることが出来ない。


「ううう…セイ、バー…て、かして」

「手、をか?どうするのだ?おお、もしや寝所か?」

「ちが…う。いいから、て!」

「おお、潤んだ瞳で睨むのも実に愛らしい。少々お遊びが過ぎたようだ。余の手でよければいくらでも貸そうぞ、奏者」


名前の要求にニコニコとして快く受けるセイバー。セイバーは名前が望むように手を貸し、名前の立ち上がる協力をする。思うように立てない名前はセイバーに身体の大半をあずけ、それに機嫌を良くしたセイバーは優越感に浸ってアーチャーを見る。
普段アーチャーよりも扱いが少しばかり優遇されてはいるが、付き合いはアーチャーには到底勝てない。時間ははるかにアーチャーよりも短く、交流も少ない。
しかし今は頼られているのは自分、アーチャーではないのだ。

ふらりふらりと覚束ない足取りでアーチャーの目の前まで歩いて、キッと力いっぱいに睨む名前。


「あー、ちゃ。のむの、やめ」

「ほう、雑種に支えてもらわねば立てぬ奴が何を」

「やめない、な、ら…じつりょく、こーしっ」

「な…そ、奏者!!」


セイバーの手から自ら意思で離れる名前。そしてアーチャーの前にぺたんと座りこんで杯に手を掛けよと手を伸ばすが、その鈍い動きでは杯をとらえることはなく、アーチャーにいいように遊ばれてしまう。


「うー…」

「う、愛い!愛いぞ奏者!!余も、余もやりたい!!アーチャー、そこを代われ!!」

「黙れ雑種。ほう、コレが欲しいか名前。しかしやれんな、欲しいのならば、力づくで取るがいい。ほれ、ほれ」

「ああー、ん。こうなれ、ば…きょう、こう、とっぱ!!げんかいてん、とっぱー!」

杯を狙っていた手はその方向をかえ、アーチャーへと向かう。そして、その手はアーチャーの口を覆い、名前の行動に驚いたアーチャーは後ろへと倒れ込んだ。そしてアーチャーという支えがなくなった名前もその方向へと倒れ込む。
簡単に言ってしまえば、名前がアーチャーを押し倒したような、そんな格好だ。
当然杯に入っていた酒はこぼれ、赤い水たまりを作り出している。


「アアアアアーチャー!!ずるいぞ!余も、余だって奏者といちゃこらしたい!!」

「くち、おさえちゃば…のめない、でしょ…のむなー!!もう、のんじゃ、だめぇ!」

「や、やへろ!!指が、くひひ…はひっれ」

「せーば!!それ、ぼっしゅ!!あっち、もって!!」


ああ!奏者よ、呂律の回らぬのも実に愛い!!といいながらもしっかり名前の命令通りに杯を没収するセイバー。

こうしてバグは徐々にその被害を大きくし始めてきていた。





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