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「#エロ」のBL小説を読む
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|||整理はつかない、


「あれ…?」

「どうしましたシロウ」

「名前姉ちゃんが…いない」


土蔵内に先程まで居たはずの名前の姿はない。
臨戦態勢とは言わずとも、互いに変な動きをしたらばすぐに対処出来るようにと気を張り、ただ互いの動きだけを注視していた。


「ランサー、すまない。俺が…名前姉ちゃんに頼んだから」

「シロウ…?どういう事ですか?」

「頼んだ、とは?それに、今、名前と…?」

「名前姉ちゃんに頼んだ、サーヴァント召喚の儀式を見せてほしいって」

「セイバー、名前とは…もしや」

「それを私に聞いてどうする。それは名前自身に聞くべきだ、そうだろう?ランサー」


そもそも我らは敵だったのだから。
そうセイバーが何かを促すようにランサーに答えると、ランサーも何かを感じ取ったように頷いた。
士郎はこの二人、いや、名前も入れて三人の関係は詳しくは知らない。おそらく10年前の聖杯戦争でなんらかの関わりが在ったのだろうと言う憶測。セイバーとランサーはこの様子では好敵手に近い関係だったのではないだろうか。
そしてランサーと名前。
この二人は恐らく10年前もマスターとサーヴァント。あの何かを隠す様にした態度といい、槍だけを見てランサーと言い当てた。確かに槍を持ったアサシンは居ないだろうが、多数の武器を持つアサシンもいるかもしれないという士郎の考えは名前に通用しなかった。






「あちゃ…」


コソコソと土蔵から逃げてきて、まず向かったのは衛宮邸の風呂場。
10年前と同じで手の甲には令呪が現れなかった。しかし今回サーヴァントを召喚したのは確実に名前であり隣にいた衛宮士郎ではない。

あのサーヴァントは10年前に名前が遊び半分で召喚した彼に違いない。違いないが、彼であって彼ではない。サーヴァントは記憶を引き継がない。その事は令呪を譲渡した日に教会で教えられた。
だから彼は彼ではない。
同じ顔同じ存在で有りながら、全くの別人なのだ。


「…ああ、すま…!!」

「え、あ」


上半身裸に近い格好で洗面台の鏡をどの位見ていたのだろうか。
時間にしてみたら数分かもしれない。肩が少し寒い。

ガラリと開いた扉、その前には褐色の肌、銀色に近い短い髪、そして長身の男性。
遠坂凛のサーヴァント、アーチャー。その彼が素早い動きでまた扉を閉めた。


「な、鍵を掛けたまえ!万が一何かあったらどうするつもりだ」

「ご、ごめん…うっかり」

「それに、今大きな魔力を感じた。早く服を着てセイバーの所へ。私は凛の元に行くぞ」

「…それ、大丈夫。敵じゃ…ない、から」

「先程の魔力の元凶は君か名前」

「…うん。アーチャー、」


見せたいモノがあるから、来てくれる?
そういう名前の声に、少し警戒心を持ちながらも扉を開ければ、驚いて閉めた時と同じ格好の名前が立っている。
嫁入り前の女が何をしている!と言いたくなかったが、ふと目に止まった名前の胸。少し左側に位置している痣の様な、それよりもハッキリとした、赤い。鮮血の様に鮮やかな。


「…令、呪」

「………だよね」

「いったい、何故…どうして名前に令呪がある、先程の魔力に何か関係しているのか」

「あー…」

「名前、ここに風呂場ですか?アーチャーも一緒……なっ?!」


セイバーが廊下から名前に声をかけながら、脱衣場を覗くと名前とセイバーに背を向ける様にいるアーチャー。
しかも名前は上半身裸に近い格好。淡い色使いのキャミソールの女性、正面には男。しかもそこは風呂場に続く脱衣場。そしてその女性の胸に注視している男とくれば、セイバーでなくとも危険因子を排除せねばと思うわけで。


「っこの下郎!名前から離れなさい!!恥をしれっ!!」

「…は?」

「白昼堂々女性を襲うなど言語道断!!」

「ちが、違うのセイバー、落ち着いて」

「名前、そのような奴を庇う必要はありません!ランサー、早くこちらへ!貴方の主の貞操の危機です!」

「主!貴様…主から離れろ!!」

「あ、土足」

「その前にこの状況と誤解を解いてくれ!!」

「ランサー、土足だめ。脱いで」

「今はそんな状況では…!」

「脱がないなら令呪使う。それが嫌なら脱いで。話はそれから」

「令呪の無駄遣いが過ぎるぞ名前」


令呪を使ってまで従わせる様な事ではない。それはその場に居たサーヴァントが満場一致で思ったであろう。
しかし名前は上着を着ないまま「使うぞ、ほら使うぞ」と言わんばかりに睨みつける。
その場にて収める事が出来るのは名前、もしくはアーチャーだろう。
しかし名前は上半身裸に近い。その彼女がそこで上着を着るのを見ているのも居心地が悪い。
ならばアーチャーがその場をセイバーと共に退室し、乱入してきたサーヴァントは靴を脱ぐべきが一番解決に近いだろう。

まるで犬が威嚇するように唸るセイバー、その隣で主を確保したいサーヴァント。
アーチャーはセイバー共々脱衣場を出、サーヴァントに靴を脱がないと名前が本気で令呪を使うぞ、そんな事で大切な令呪を使わせないのもサーヴァントの仕事だ。と言えば、サーヴァントは視線だけアーチャーに定め、靴を脱ぐ為に体を動かした。




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