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落ちる不安

「罪人は裁かれるべきだ。そう思わないか?」

「思うが、それに賛同はできない」

「何故?」

「貴方のしていることは殺人」

「私は罪が許せない。君も同じ筈だ、琉伽・早乙女。両親を事件の巻き添えになって失った可哀想な琉伽」


息が止まるような気がした。
何故名前を知っている?
何故私の両親を知っている?

対峙していた英雄名とルナティックと名乗ったヒーローらしき男。


「可哀想な琉伽。偉大な女優だった母親に、平凡だったの父親の娘」

「なっ…」

「しかも友人夫婦の事件に巻き込まれた。可哀想に、君は犯罪を憎む資格がある」

「……っ」


何故、どうして知っている。
そのことは自分と祖国の祖父、そして自分の上司兼トレーナーしか知らないはずだ。
トレーナーは父の友人だった。その人が自分をヒーローへと招いてくれ、支えてくれている。
その人が易々と情報を漏らすわけがない。


「な…どうし、て…それ」

「だから」

「英雄名!!」


動揺する琉伽の隣を何が物凄いスピードで移動した。
人だ、間違いない。

怖い。怖い、怖いのだ。
今まで思い出さないように努めた。
思い出すと怖いから、思い出しては寂しいから。
炎に飲まれる両親とおじさんとおばさん。
そのそばに大きな影。
幼い自分と、男の子。
怖くて怖くて、言葉も涙も出せなかった。
後から知ったことだった…いや、成長してから知ったことだったが、あれは両親の友人であった、あの夫妻を狙った犯行だったらしい。


「…ん…さん……琉伽さん」

「っ!!あ、…」

「大丈夫ですか?病院に…」

「だ、大丈夫…です。うん、大丈夫。大丈夫、大丈夫」


気がついたら虎徹は救急車、隣にはバーナビー。
ルナティックはもう居なかった。
バーナビーに促されるまま警察が集まる駐車場に居る。
気を失った訳ではないが、どうやら意識が自分にだけ集中してしまっていたようだ。


「大丈夫、大丈夫。私は大丈夫。思い出さない、だから、大丈夫」

「……?本当に大丈夫ですか?顔色悪いですよ」

「大丈夫。怖くない、大丈夫…ええ、大丈夫」


上司の姿が遠くに見え、一歩踏み出した瞬間。
足元がまるで水のように溶けた感覚に落ちた。


違う、溶けたのは私の足元じゃない。
私の意識の方だった。