TIGER&BUNNY | ナノ
コール・コール
「へえー、ここがアカデミー?ひろーい」
「お?琉伽アカデミー出身じゃないのか?」
「うん。私ヒーローやる前までずっと日本だったし」
「ににに日本!?」
「なんでこっちに?日本治安いいのに」
「まあ色々ねー…」
痛いほど感じる目線。
多分、いや、確実に思い当たる人物が琉伽に熱視線を送っているのだろう。
かれは日本かぶれだとは聞いていたが、琉伽に声をかけるということはなかった。
当初不思議に思ったが、その理由が分かれば簡単なものだった。
日本は単一の人種で、どこを見ても同じ一族だ。
それに比べて多種多様な人種が暮らすこの土地では、誰が国外から来たかは見た目では判断できないのだ。
むしろ単一の人種で構成されている日本が珍しいのだ。
「英雄名殿は日本人で…ござるか!」
「そうで、ござるよ」
「こ、こんな近くに日本人が居たとは…感激でごさる!」
やたらとテンションの高い素の彼を見たのは始めてた。
人付き合いが苦手なのか、あまり会話したことのない折紙サイクロンことイワン・カレリン。
ヒーロー姿では何回か関わりがあったものの、素では始めてに近い。
「ござる…?そんな喋り方だった?」
「あ、お、お仕事の一環というか…」
「おーい、青春中悪いが時間時間ー」
コツコツと自分の腕時計をつついて時間が迫ることをアピールする虎徹の姿を見て、危ないと早々に準備に入った。
特別講師という形でのヒーローの地位回復作戦。
あの謎のヒーローのおかげで要らない営業行為である。
そもそも琉伽のキャラクターである英雄名はストイックキャラクターで無口のクール。
そんなキャラクターの英雄名に何を講義しろと言うのだろうか。
それこそ英雄名のキャラクターを所有する会社からはこの講義はヒーロースーツ着用という特別要請まで出ている。
養成所の生徒であっても素を見せず、常にヒーロー英雄名でいなければならないのだ。
「真面目に無理。講師とか無理。英雄名で何喋れってのさ。もう帰りたい。職務放棄してやる。」
「若者三人帰りたい言うな」
そして若者三人の帰りたいコールが暫く続きのに耐える一人の男性の姿が教室の一角に出来上がる。