TIGER&BUNNY | ナノ
青薔薇と炎と牛と虎と兎と一般人(?)
「どうも弟がお世話になってます、琉伽・ブルックスです」
「俺のスーツのエンジニアでもある」
「あらぁ、琉伽じゃなーい久しぶり」
ネイサン久しぶりー。と笑うたまにジムで見る女性。確かロックバイソンと話をしているのを見てたから、言われてみればという感じ。
でも、なんでこのバーにいるの?
ワイルドタイガーとロックバイソンがいるのはいつものこどだし、ネイサンがいるのも別に変じゃない。
ハンサムがいるのが、いつもと違う。
「…ブルックス?」
「僕の姉です」
「え、ハンサムの?」
「血は繋がってないけどね」
「あら、琉伽ってばハンサムのお姉ちゃんだったのね」
「で、なんでハンサム?」
ハンサムだから。と私とネイサンが答えると、琉伽と名乗った女性はハンサムをマジマジと見詰めてから頭を傾げた。
どうやら彼女にはハンサムには見えないらしい。
それを見た私とネイサンが「ぷっ」と笑うと、いつものハンサムなら嫌みの一つを言うのがそれがない。
不思議にネイサンと私が思って顔を見合わせているとワイルドタイガーが小さな声で「バニー実はシスコンなんだよ」とイタズラっぽく教えてくれた。
「で、彼女は誰?まさかこの中の誰かの彼女?」
「ち、違います!私、カリーナ・ライル」
「こいつジムで見たことあるだろ?」
「えっと…あ、あー、はい、ある。見たことある思い出した」
「…どうも」
「いつも弟がお世話になってます」
「…別に、」
「世話になってません」
少し固まったあとに深い溜息をついて「ごめんなさいね」と口が動いた琉伽さん。どうやらこの人もハンサムの扱いは難しいみたい。
でも、いつもなら嫌みがでてもおかしくないのに黙ってるのは、やっぱりタイガーが言うようにシスコンだから?
「こんな遅い時間に外にいていいの?学生さんでしょ?」
「このバーでバイトしてるの。両親も了承済みだし、平気。さっきまであそこのピアノ使ってたの私だし」
「あ、そうなの?私ほんの少し前に来たばっかりで。惜しいことしたなー、聞きたかった」
「な、なら明日!明日また、来てよ。明日、また私唄うから」
本当?ありがとう!と笑う琉伽さん。ブルックスさんて呼んだ方がいいんだろうけど、ハンサムと被っちゃうから止めておこう。ハンサムに「さん」をつけるみたいで、なんか嫌だし。
ところで、琉伽さんはハンサムのお姉さんらしいけど、それほどハンサムと年は離れてないのかな。
…なんか、タイガーとかと仲良さそうで。ロックバイソンのスーツエンジニアだからロックバイソンと仲良いのはわかるけど、なんでタイガーまで。
「おい琉伽何飲むよ」
「焼酎!」
「飲み過ぎないで下さいね、姉さん」
「大丈夫、飲み過ぎても私には立派な弟がいるから」
「…姉さん」
「ちょっとお、自分の姉になんて顔して見てるのよハンサム」
「琉伽もバーナビーからかうなよ…」
「カリーナちゃんは何飲む?ソフトドリンクおばちゃん奢っちゃうよー。あ、カリーナちゃんて呼んじゃったけど良かった?」
…うん。と頷いてから思ったこと。
おばちゃん…て、なに。
凄くフレンドリーなのはタイガーで…嫌だけど慣れちゃってる。
日本人て、年上はみんなオジサンオバサンになっちゃうわけ?
琉伽さんどう見ても20代なのに。
多く見てもスカイハイと同じくらいじゃない。
日本人て皆卑下しちゃうの?
「ちょっと、おばちゃんて…若い癖にそんな事言わないのっ女の子でしょっ」
「そ、そうよ。どう見てもオバサンじゃないし…」
「琉伽がオバサンならアタシどうすんのよ!失礼しちゃうわ」
プリプリと起こるネイサン。
ちらっとタイガーを見るとロックバイソンと同じで目線をそらして関わらないようにしてる。
…なんで?確かに女の人の年齢はタブーだけど。
「姉さん、焼酎はストレートですか?」
「あ、甘いのが良いからなんか混ざったのにして。味は任せる」
「はい」
「バーナビーが…なんか違う」
「言ったろ…バニーはシスコンだって」
「琉伽に関係する事は目の色かわるんだ、バーナビーは」
ふーん。と曖昧な返事を適当に返した。
ハンサムを見ると本当に別人。
「…並んでると恋人同士みたい。バーナビーと琉伽さん」
「えー?まったまたぁ。カリーナちゃんたら」
「でも本当よ?アタシも同感。戸籍だけ姉弟なんだっけ?結婚できるのかしら」
「年下かー。好みとしては年上だけど、この年で年上は望みないしなー」
「姉さん、僕じゃ駄目ですか?幸せにする自信ありますよ…!」
真面目だ。真面目な顔して琉伽さん口説いてる…いや、プロポーズしてるよ…。
ネイサンは何か面白いものを見つけたようなキラキラした目してるし…。タイガーとロックバイソンは目をそらして、笑うのを堪えている。
それに当の本人の琉伽さんはバーナビーを軽くあしらってるし。
「ねえ、なんでそんな…琉伽さんに…なんていうか…」
「ねー、おかしいよねー。昔は私の後ろついて歩く可愛い男の子だったのに。いつの間にかこんなシスコンに…」
「シスコンの何が悪いんですか!血が繋がってる訳じゃないんですよ、何も問題ありません」
「その思想が問題だっての。ほら、カリーナちゃん何する?」
「…そうね、じゃあ、」
「姉さん、無視しないでください」
「カリーナちゃん、あんな酔っ払いにならないように。反面教師よ」
「そうね、絶対なりたくないわ」
「姉さん!」
「煩い子、嫌い」
そしてピタリと黙ったバーナビーを見たネイサンは吹き出し、カリーナは無視して琉伽に「私これにする」とドリンクを注文し、残り二人は笑いを堪えてはいるが肩がガクガクと揺れていた。