TIGER&BUNNY | ナノ
苦手意識
「……難しいなぁ」
「何がです?」
「うおぅ!…こ、これはこれはバーナビーさん」
「…どうも」
カリーナが立ち去り、ネイサンも行ってしまった。
琉伽は一人でドリンクホルダーを弄って溜め息をついていた。
すると先ほど話題に上った人物に声をかけられて、これでもかと言うほど驚いてしまった。
「す、すいません…」
「…日本人はすぐ謝る」
「え」
「別に貴女に非はない」
「あ、すい…あれ、私日本人って…」
「………」
言いましたっけ?あはは…と乾いた笑いで流そうとする琉伽。
そんな事には興味はないと言わんばかりに顔を背けられた。
琉伽自身もこの男は苦手である。
別に虎徹の様に本名と素顔を公開しているからという理由ではない。ただ、本当に苦手意識がある。
それはまだ関わりが浅いからだろうが、やはり苦手だ。
「まあ、先程話題に上がってた人物が来たらそんな反応もします。もしもその話題に対しての謝罪であれば聞きますが」
「へ!?」
「気にしてませんけど。他人にどう思われようと関係ありません」
「……」
「なにか?」
「なんもないです…」
琉伽にしてみたら「何故に自分はこんなに責められているのか」だ。
別にバーナビーを悪く言った記憶はない。
ただ先程の会話にでてきただけだ。
内心は泣きたくて仕方ない。
どうしてこういう時にヒーローは来てくれないのか。
ヒーローは自分だろ。という突っ込みはいらない。
ここでいうヒーローは自分ではなく仲介者だ。
「お、なんだ琉伽。バニーちゃんと密会か?」
「密会は字の通りに“秘密”に“会う”ですよ。全然秘密で会ってないので、ただの立ち話です…バニーちゃん?」
「バーナビーです、オジサン」
「ヒーロースーツの頭がウサギの耳みたいだろ?それに名前が似てる」
「なるほど」
「納得しないでください」
「んで、琉伽。お前いつまでさぼってんだ?トレーナー怒るぞー?」
「あ!」
忘れた!と言わんばかりに走り出し、そして置き忘れていたボトルを掴んでまた自身のトレーナーの元に走った。
琉伽がヒーローを務める会社は琉伽にトレーニングトレーナーを付けてトレーニングに付けている。
それがまた厳しいのだ。
それが上司と同一人物なので尚更トレーニングに熱が入って大変だといつも言っている。
「あんまり琉伽を困らせんなよ。あいつ優しいからさっきの引きずるぜ?」
「盗み聞きする人に言われる筋合いありません」
「聞こえたんだ、盗み聞きしたんじゃねえ。まあ、バニーちゃんと琉伽は性格が逆だかんなぁ…」
「はあ?」
「琉伽はヒーローキャラクターをしっかり保ちつつポイント関係なく走るから優しいんだよ、オジサンと同じでな」
「オジサンと一緒じゃありませんよ。彼女は破壊活動しませんし、しっかり考えた上の行動です」
全然一緒じゃありません。
一緒にしたら彼女の失礼です、土下座して謝ってください。
彼女日本人なので土下座がどれだけの事か理解して許してくれますよ。
最後に鼻で笑ったバーナビーはトレーニングに戻った。