TIGER&BUNNY | ナノ
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おちび、ときどき背伸び


ニコリと笑う幼い女の子。
人見知りもなく、ハキハキと喋る良い子だ。
現に今、俺を見て泣く事も、だだをこねることもない。



「え、俺が…ですか?」

「君以外に誰が居るの」

「…バニー、とか?」

「バーナビーくんは忙しいんだよ、君と違って。さあ、このおじさんにご挨拶してくれるかな?」

「琉伽・早乙女です!きょうは、よろしくおねがいします!!」

「あ、鏑木、虎徹です。よろしく…」


時は遡ること数時間。
一応上司にあたるロイズさんだ。
そのロイズさんが俺一人を呼び出したと思ったら小さな女の子が何故か一緒にいた。
事情というか、経緯を聞いたら、この会社アポロンメディアの大株主の娘とかで預かってほしいと言われたらしい。
大株主というだけあって誘拐などの問題がある。で、白羽の矢が立ったというわけなのだが…何故俺。

まあ、そのおかげでデスクワークを免除してもらって外にでている訳だが。


「…なあ、琉伽ちゃん。ヒーロー、好き?」

「すきです!」

「誰が好き?」

「どらごんきっど!あと、おりがみさいくろん!」


綺麗に株を持ってるタイガー&バーナビーが出てこない。
子供なんだから仕方ないが、溜め息がでるのを我慢できずに出してしまった。
そんな俺を見てる小さな目はキョトンとしている。
そうだよな、子供にしてみたら自分の好きなヒーローと株を持ってる会社のヒーローがイコールではないよな。


「なんでその二人が好きなんだ?おじちゃんに教えてよ」

「どらごんきっどは、かっこいいの!かみなり、ごろごろー!」

「折紙サイクロンは?」

「みつけるのが、すごくたのしいです!」


…確かにドラゴンキッドはこのくらいの子供ウケがいい。
カラフルだし、小柄ながらに頑張っている。
折紙は、…あれだ、クイズ感覚なんだろうな、この子。


「かぶらぎさんは、だれがすき?」

「あ、俺?俺はやっぱりレジェンド…つっても、知らねえよな」

「れじぇ?」

「おじちゃんが子供の時にいたヒーローだ。格好いいんだぞー」

「わあ!あいたいです!琉伽でも、あえますか?」


会わせてあげたいが、もうレジェンドはいない。
少し悩んでから「レジェンドには会えないけど、レジェンドの像があるところに行こうか」と誘ってみると嬉しそうに頷いてくれた。
昔の楓みたいだなー。なんて思いもした。
昔は「おとうさん、おとうさん」と後ろをついてきてくれたっけ…。素直だったしなー…。

と、思い出に浸ってても子守は終わらないし時間内にせっかく興味を持ってくれたレジェンドの像を見せてやれないのは残念だ。
移動距離はたいしたことはないが、移動時間に飽きてしまってぐずると後々面倒になりかねない。
話かけて飽きないようにしないと。
そう思ってでた一言が、余計だったというか…。


「…なあ琉伽ちゃん。琉伽ちゃんはいつも何して遊んでるんだ?」

「あそぶ?」

「そうだよ、お友達と何してる?おいかけっこ?隠れん坊?」

「そういうこと、したことないです。いつも、おべんきょう」

「え、」

「いいこにおべんきょうすると、ママとパパ、ほめてくれるの」

「いい、子?」

「たがら、あそぶのがまんするの」

「…それ、楽しい?」

「…ううん。でもね、いや。って、いうと、ママもパパも、わるいこはきらい!っていうの…」


手を繋いで元気よく歩いていた琉伽の足が止まった。
ハッとした。
別に泣きそうだとかじゃない。
あまりに可哀想で、楽しい事をしらない琉伽が。
子供なのに大人の、両親の顔色を伺いながら遊ぶことができないなんて。
寂しいも言えない、小さな子供が。


「ようし、琉伽ちゃん。今日は勉強とか、そういうのナシな」

「おべんきょう、しないの?でも…」

「今日くらいしなくても怒られないさ。それよりも楽しもうぜ」

「たのしむ?あそぶの?」


俺を見上げる小さい顔がパッと明るくなった。
やっぱり。遊んだりしたい年頃だ。
人懐っこい性格と、自分を無意識ながらも押し殺して両親と一緒にいて隠していた思い。それが今、少しだけ本心の「遊びたい、楽しみたい」が顔を覗かせてきた。


「そうだ、遊んじゃおうぜ。とりあえずレジェンドの像を見に行くのは決まりな!」

「きまり!れじぇ、ん、ど?」

「そう、レジェンド!次に…会社に帰ったらバニーちゃんに会いに行こうか」

「ばにー?うささん?」

「タイガー&バーナビーの、バーナビー。知ってるか?」

「んー…わかんない」

「そうかー…わかんないか…」


だってよ、バニー。お前意外と知られてねぇぞ。と思ったが、バニーを知らないとなると、きっと俺なんてそれ以上に知らないんだろうな。
ちょっと悲しいが、知らないなら知らないなりに楽しめる。


「おっし、琉伽ちゃん。行くぜ!」

「おー!」


小さい体が楽しそうに跳ねた。