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本当のはじめの一歩を

「え、琉伽ちゃん彼氏本当にいたの…?」

「しかも、相手が…」

「えええ…」


病室に戻るとネイサンが開口一番に「恋人はいたかしら?」と笑顔で聞いてきた事に始まる。
それに対してキースは「ああ、いたよ。話せなかったけどね」と苦笑いをして誤魔化したが、見舞いにやって来た二人と、イワンによって誤魔化しができなかった。
まず一番に「え、もしかして琉伽の…え?」とイワンに始まり、次に虎徹が「琉伽ちゃんの?!」、最後にバーナビーがピンときた様な顔で「もしかして早乙女さんの恋人っていうのが、貴方ですか?」と結論をサラリとと言ってしまったわけだ。


「ちょっとお、何よ?教えなさいよ。結局折紙のお友達はキングの恋人だったわけ?」

「そ、そうなん…ですか?琉伽、え?えー…」

「……」

「…ね、本当にキングの恋人だった?折紙にその写真見せてみたら?後ろ姿とか、横顔が似てるだけかもしれないし」

「…声が、琉伽だったから間違いないよ。ありがとう」


それなら声かけたらいいのに。
そうパオリンが言い掛けたのをカリーナが素早く口を手で覆った。
パオリンは不思議そうにカリーナを見上げると、カリーナは「静かに」と口だけを動かして静した。


「琉伽は、彼女は私がスカイハイだということを知らないんだ」

「…だから、声、掛けなかったんですか?」

「掛けられないな、それ…」


アントニオの同情の一言。それに頷くしかできないキース。
その場はなんとも重い空気になってしまった。


「お、折紙はその人とどういう友達なの?学校の?」

「えっと、アカデミーの」

「琉伽ちゃんNEXTなんだよ。ほらこの前キャンペーンあったろ?そこで俺らとも知り合いになって」

「今はアカデミーで事務員をしてるそうです。たまに講師をすることもあるそうですよ。実は僕も早乙女さんにはお世話になっていたので知ってますが」

「へえ…キングの彼女ってNEXTなんだ」

「みたい…だね」


“みたいだね”まるで他人事の様な話し方に一斉にキースを見る室内の人間。
“みたい”とはどう言うことか、知らないのか?恋人だと言っていたのに?
これには周りが混乱している。
自分がヒーローだと言うことを隠していたのはわかる。
他のヒーローも基本は隠しているわけだ、バーナビーを除いて。
それが苦痛なのも分かっている。
それが起因しているのか分からないが、相手のそんな事も知らないのか。それを故意に彼女が隠しているのならば説明はつく。NEXTを隠す人間は少なくないからだ。
しかし彼女はアカデミー出身だというのに、それを言っていない。


「え、でも、琉伽…さっき犬がとか…あの、スカイハイさんは、犬飼ってますか?」

「ああ」

「入院してるの、琉伽は知らないんですか?本当に」

「ああ」

「でも、琉伽下で言いました。犬の事、多分琉伽知ってますよスカイハイさんのこと。だって琉伽アカデミーの人で、言わばヒーローの関係者です。アカデミー通せばこの病室に僕の名前だせば直接来れます、なのにしないで、下まで来てって」

「そうか、アカデミー関係者でイワンは同級生。直接ここまで来ようと思えば来れるわけか。ダメにしてもこの階の談話室辺りには来れるのをしなかった」

「なんだ、キング愛されてるんじゃない。心配して損したわ」


なんだ。と重かった空気が嘘のようになった病室。
良かった良かった。と肩を叩かれるが、イマイチよく分かっていないキース。
何が良かった?何もよくなどない。現に私は琉伽と会話する事も出来なくて、盗み聞きをしていただけだ。
それに愛想を尽かして琉伽は私に声を掛けずに折紙くんに伝言しただけで帰ってしまった。


「なんだキング、分からないのか?」

「ロックバイソンくん…まったくわからない。そして、わからない」

「もう!その琉伽さんって人はキングがヒーロー隠してるの知ってるの、でも隠してるから知らないフリしてんのよ!鈍感!」

「そーそ、琉伽ちゃん下の事は最初から気づいてたんじゃねえの?」

「ヒーローの事隠してるから出られない、だからと言ってこちらから声を掛けられない。だから折紙に簡単な伝言頼んだんですよ」

「…え?」


もう!キングは鈍感すぎるわね。と痺れを切らしたネイサンが、こういう事だろう。と説明を始めた。

その琉伽って子は本当はキングがスカイハイって知ってのよ。
でもキングはその事隠してるでしょ?だからその子も知らないフリしてた。
前に何か無かった?忙しくて会えないけど、責めたりしないとか。

あ、

心当たりあるのね。
それにアカデミーでてるんならヒーローがどういうものかも知ってるはずでしょ?
なんたって今もアカデミーに居るんだし、折紙の友達。お見舞くるくらい仲良しなんだもの、それに関する事情は分かって当然ね。
流石にヒーローの個人情報は無理だと思うけど、察しは付くんじゃない?
その彼女がキース・グッドマン=スカイハイっていうのを知っているかはわからないけど。


「わかった?」

「い、いや…」

「…天然にも程があるわねっ」

「だーかーら、その人はキングが隠してるの分かってるから何も言わない聞かないなのよ!」


え?と頭を上げるキース。
周りは優しい笑顔で溢れている。
そばにいた見舞に来てくれた二人も、琉伽の友人も。


「琉伽に、電話します。そして話しましょうよ。琉伽はアカデミー関係者だから、秘密は大丈夫です」


プライベートの携帯で呼び出すイワン。
静まる病室での携帯の呼び出し音が微かに聞こえる。


「もしもし、琉伽。今、ちょっといい?……うん、ごめん。少しでいいんだ。………ありがとう、替わるね。はい」

「え…いや、あの」

「出なさいキング」

「あ、ああ…もし、もし?」


もしもし。と電話越しに聞こえる琉伽の声。
いつもの声のトーンで落ち着いている。さっきも聞いたはずなのに、ひどく懐かしい。


「…キース・グッドマンだ」




「キング、上手くいくかな」

「いくわよ。だってキングだもの」

「それに琉伽ちゃんだしな」

「そうですね、早乙女さんですから」