TIGER&BUNNY | ナノ
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引き抜き or not …?

琉伽は深い溜息をついた。
別にバーナビーが自宅に招いてくれたからではない。むしろ嬉しかった。今まで避けていた自分に変わらずに慕ってくれている義弟は昔と違って大きく成長しているが可愛いのには変わりない。
琉伽の溜息の原因はバーナビーの隣の人物である。


「やあ、琉伽。久しぶりだね」

「マーベリック、さん」

「昔の様にアルバートおじさんでも構わないよ」

「そうは、いきません…私ももう大人ですから」

「そうだったね、あまりに昔と変わらないから、つい」

「実は姉さんに会わせたかったんですよ。マーベリックさんも姉さんに会いたいって言ってくれて」


最初に疑問を持てばよかったのだ。
どこかに食事に行こうでも、お茶を飲みに行こうでもなく自宅に招待という事に。
確かにバーナビーは有名人だから一緒に歩くのは問題がある。それはバーナビーから言い出したこと事であり、琉伽もライバル会社の人間である。一緒に居るところを見られてはお互いの立場的に非常に不味い。


「ああ、マーベリックさんがいらっしゃるならもっと気の効いた茶菓子を持ってきたらよかったですね」

「なに、私が君に秘密で来たんだ。気にしなくていいんだよ」

「そうですよ姉さん。茶菓子も、飲み物も十分ですよ」


まったく出来た男に成長してくれた。
これではそれを理由にトンズラも出来ないではないか。
もしかしたら逃げ道を絶つ為にバーナビーの自宅なのではないのかとさえ思えてしまう。

立ち話も難ですから。とリビングに通され、言われるがままに座り、そして茶が出された。


「…ところで、マーベリックさんはどうしてここに?」

「姉さんに会いに来てくれたんですよ、姉さんもずっと会ってなかったんでしょう?マーベリックさんも心配されてたんですよ」

「琉伽が何処で何をしているか、それにちゃんと生活しているのかが解らなくて心配してたんだよ。定期的にメールが来るから捜索願は出していなかったけど、今日は会えて良かったよ」

「それはすみませんでした。私も子供ではませんし、何より私はマーベリックさんに心配していただけるような人間ではありませんよ」

「姉さん!」


テーブルを叩く音が響いて紅茶の入ったカップが揺れた。

自分が養子だという事に負い目を感じないといえば嘘だ。
そんな出来た人間ではないし、正直「ブルックス」というファミリーネームは重い。だからこそ同僚にも、部下にも名前で呼ばせている。流石に上司には願い出ることはできないのでブルックスと呼ばれるが、その度に気が重くて仕方なかった。
自分を養子にしてくれた両親にも、可愛い弟にも感謝している。ロボットの勉強も、研究のチャンスをくれた両親、自分を本当の姉の様に甘えてくれた弟。


「まあ落ち着きなさい二人とも。琉伽、君は何か勘違いしているよ。私もバーナビーも君を心配していたし、会えて本当に嬉しいよ。それは本当だ」

「……」

「もし君が養子であることを理由に避けているとしても、それはいらない心配だ。琉伽が養子だろうが琉伽は琉伽だろう?それにバーナビーにしたら君はただ一人のお姉さんじゃないか、大切なのは血の繋がりかい?」



小さく姉さんと呟いたバーナビーの声と共にバーナビーが手を伸ばしてきた。
いつの間にかこんなにゴツゴツとした男の手になったのだろうか。
昔会った時はもっと小さくて、まだ子供の手だった。
大きさもそれ程かわりなくて、手を繋いでも男とは意識しなかった手だ。
声もいつの間にか低くなって。
テレビの中継を見た時は息が止まるかと思った。吃驚して、懐かしくて。


「…そう、ですね。私が勝手に避けてました。それは認めます。でも、私だって傷付きたくなかった…遺産、目当てとか」

「すまなったね、私が気付けていたら琉伽は傷付かなっかった。しっかり守れていなくて、琉伽は自分を守るために避けたのか…申し訳ない」

「僕も、姉さんがそんなふうに言われてるなんて…」

「ただ私が逃げてただけなんですよね、バーナビーに迷惑がかかるからって人のせいにして」


ごめんなさい。すみませんでした。
静かな空間に琉伽の声だけが響き、いつの間にか紅茶は熱を無くして大人しくしている。


「琉伽、私から提案なんだけど聞いてくれるかい?」

「…なんでしょうか」

「実は私の会社のヒーロー事業部のロボット部門に来ないかい?やっとこうして再会できたんだ、バーナビーも私も琉伽と一緒に仕事がしたいんだ」


君の才能も、技術も知っているよ。
ロックバイソンのスーツ開発担当しているのも聞いたよ。あのスーツの性能は素晴らしいね、流石だ。


誉めるマーベリックにただ琉伽は黙って聞き、バーナビーはそれは良い案だと賛同しては琉伽に一緒に働こうと琉伽に働きかけていた。