TIGER&BUNNY | ナノ
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突然再会

「わざわざ悪いな」

「いやいや、こちらこそ。トレーニングしてるのに」

「いや、それはいいんだ…が。大丈夫か?」


まだいける。と顔色が少し悪いが笑う琉伽。
いつも顔色がいいというわけではないが、ここまでなることは珍しい。


「午後から休みとったから休むよ…流石に疲れた」

「おお…ゆっくり休め」

「はい、これ。スーツのメンテナンス諸々の結果報告のデータ類」

「いつも悪いな」

「仕事ですからね。それに自分の好きでやってるし」

「そうだな、いつも楽しそうに仕事してるしな」

「たまに殺意わくこともあるけどね」


琉伽はロックバイソンの属する会社の社員である。
大きな意味でのロックバイソンことアントニオ・ロペスのパートナーとも言える存在で、彼の着用しているスーツの開発に携わっているのだ。
基本的には厳しいわけでも細かいわけでもないが、仕事に対する態度は至って真面目で周囲からの信頼もあつい。


「今回のメンテナンスの報告は必ず目を通してね。あと次期改良点もいくつかピックアップしてあるから優先して欲しいモノがあれば教えて。他に要望があれば遠慮なくどうぞ。あとちょっと体のバランスが悪いみたいだから医者行った方が良いよ」

「…」

「ロックバイソーン?」

「饒舌だな」

「仕事だからね!」


顔色があまり良くない癖によく喋る。
琉伽のことを心配してはいだか、ここまで喋ると本当に具合があまり良くないのかと思えてしまう。
確かに仕事の話ではあるが、ここまで仕事根性は不要ではないかとさえ思える。


「お、琉伽じゃねーか」

「あ、正義の壊し屋。久しぶり」

「…それ、やめねえ?」

「嘘じゃないからな、虎徹」

「んで、琉伽なにしてんだ?」

「お仕事の話なんだなぁ、これが」


琉伽が手に持っていたメモリをちらりと見せるとワイルドタイガーは納得したのか「ああ」と声を漏らした。
ワイルドタイガーとはそれなりに付き合いは長い琉伽。ロックバイソンが親しいこともあり、その関係で付き合うこともしばしばある。
最近では飲みに誘われる事は少なくなったが、いぜんはよく誘われていた。


「あれ?顔色悪くないか?」

「ちょっと寝不足。流石に無理がキツい歳になりました」

「おいおい、それ言っちゃダメな歳だろ、まだ」

「そう言えば琉伽、飯は食べたのか?」

「うん?まだ。これロックバイソンに渡すから昼前に切り上げてきた」

「なら一緒に飯食おうぜ。なあアントニオ」

「誘ったからには奢りでよろしく!」

「相変わらずちゃかりしてるな…」

「これはちゃかりとは違うぞ、図々しいっていうんだ…」


そうと決まればタダ飯!とテンションを上げる琉伽。
口では奢れとは言うが、実際に奢ってもらうことはないに等しい。
要は「奢って」は三人で飲食するときの通行儀礼のようなものであり、互いにわかっている冗談なのである。

すると喋っている三人のうちワイルドタイガーこと虎徹の後方より青年が近寄ってきた。


「オジサン、ちょっといいですか」

「あ?なんだよバニー、早くしてくれよ。これから飯なんだよ…」

「すぐ済みますよ…まったく」


悪いな。と軽くジェスチャーで謝る虎徹に二人は笑って応えた。
別段急いでいる訳ではないし、何より琉伽は午後から休みであり予定はない。予定はないが休むという予定はあるが体調がすこぶる悪いわけでもない。
会話をしている二人を眺め、会話らしい会話のない琉伽とアントニオ。
仕事以外でも話すことはあるが、よくよく考えてみれば今までの二人の会話は仕事絡みが主だったな。とふとアントニオは思い出した。


「なあ、琉伽。女性陣の間じゃバーナビーみたいなのが…どうした?」

「え、いや。なんもないです」

「じゃあなんでオレの後ろに隠れようとしてるんだ?」

「気のせいだと思うよ!…ちょ、動かないでよ」

「隠れてないんだろ?なら動こうが動くまいが関係ないだろ」

「ちくしょ…」


コンビヒーローが会話をしている間、変な行動をしている男女。
大柄な男性の後ろに立ち、会話するコンビヒーローから体を隠そうと動く女性。
男が動けば素早くその動きにあわせて陰に隠れるように後を追う女性。
それがまだ若い男女、いや、幼い子供がやっていたなら可愛らしいのだが、やっているのは大人。
可愛らしいを通り越して怪しいのだ。


「おー…何やってんだお前ら」

「琉伽が隠れるから動いてそれを阻止してるだけだ」

「なんだ琉伽、お前面食いか?恥ずかしいってか、バニーちゃん生で見て」

「うん、そう!わー格好良すぎて直視できないなー」

「見てないだろ、棒読みだぞ」

「そんな乙女思考ない癖に」


ドスっと鈍い音がした次の瞬間、崩れ落ちたアントニオの背後から冷たい表情をした琉伽が姿を現した。
ただ現れたのではない、攻撃した後のように構えていたのだ。


「油断してたら私でも倒せるだヒーロー。そうか改良点が見つかったわ」

「容赦ねえな…」

「ヒーローが隙見せるのが悪い。スーツには集中力が途切れたらサイレンか電流流れるようにしようかな。ねえロペス、いいと思わない?」


それともツボ刺激がいいかしら。と悶えているアントニオに淡々と続ける琉伽。
これには虎徹もただ笑って見守る事しかできない。以前フォローをしようとしたが、逆に痛い目を見た経験がある。
そして学んだのだ、琉伽に関してこうなったら関わらないのが安全であると。


「…琉伽?」

「っ!」

「お?バニーちゃん琉伽の事知ってんのか?」

「え、ええ…彼女が琉伽・ブルックスであれば」

「なんだフルネーム知って…ブルックス…?」


そこまで行き着く頃には琉伽はどうもいたたまれなそうに身を縮めていた。


「…琉伽、姉、さん?」

「あ、はは…久しぶりー…」

「え、」

「…な、に?」



琉伽の足元で悶えていたアントニオもなんとか回復し、バーナビーの爆弾発言と、その発言によって身の置き場のない琉伽を虎徹と同様に交互に見る。
琉伽が姉?全然似てないぞ。
あれか、親戚か?それが無難だ。
従兄弟あたりだろう、歳が琉伽が上だから姉さんと呼ばれても不思議はない。
それにしても琉伽はハーフというよりも純アジアの顔をしているのだが…。
そんな疑問や仮説が二人の頭に浮かぶが答えはわからない。


「えっと…何年ぶり?」

「10年程…で、姉さんなんでここに?」

「琉伽ならアント…ロックバイソンのスーツエンジニアだぞ」

「な、馬鹿!」

「…ロック、バイソン、の?どういうことですか琉伽姉さん!?」




(え、だからバニーと琉伽の関係はなによ)
(どういうことですか琉伽姉さん!エンジニア?そんな話聞いてませんよ!?)
(ちょ、なんでここで会っちゃうかなぁ!!)