TIGER&BUNNY | ナノ
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微妙な距離

「あ、」

「……どうも」

「お一人ですか?」

「一人じゃ駄目ですか」

「鏑木さんが一緒じゃないのが珍しいなって思いまして」

「別にプライベートでもコンビというわけではありませんから」


琉伽が入院して数日、その間に仲間は次々と見舞いに来てくれていた。
その間琉伽は術後の経過が良くなく、熱によって寝込んでいてあまり覚えていない。誰かが来てくれたこと、会話をしたカリーナとホァンは覚えているが他は曖昧だ。


「…来る度にモノが増えてますね」

「初めてじゃないんですね」


ええ、まあ。と歯切れの悪い言葉。
琉伽も数日間は意識が朦朧としていたところがあるので、おそらく彼はその時に来てくれていたのだろう。

このまま立ち話させては悪いと思った琉伽はバーナビーに椅子をすすめようと思うが、椅子の在処がわからない。
意識がハッキリする時間が伸び始めて間もなく、この部屋の間取りをまだよく把握していないのだ。
なにより相部屋であれば椅子の在処を誰かに聞くこともできるが琉伽はヒーローという特殊な職業のために個室。
誰かに聞くには職員でなければ解らない。

部屋の中を探すようにしている琉伽の様子に気付いたバーナビーは当たり前のように椅子を出して、琉伽の使っているベッドの隣に腰を降ろした。


「…普通それ私がすすめてから座りません?」

「これは失礼。でもこうしようと思っていたんでしょう?」

「……」


しばらくの沈黙。
恐らく彼は何度も足を運んでくれたのだろう。
だからこそ椅子のおいてある場所を知っていて、なれた様子で琉伽の直ぐ横にいるのだ。


「…ありがとう、ごさいました」

「見舞いの礼ですか?」

「いや、病院に運んでくれたことのお礼です」

「…ヒーローといえども人命救助に変わりはありませんからポイント付きますからね」

「…お礼しづらい事言いますね」

「………」


再び沈黙。
いったい彼はなにがしたいのか。
琉伽と会話をするつもりもない様子だし、琉伽の顔を顔を見て帰るというわけでもない様子だ。
ただ椅子に座っている。会話を切り出す様子もない。
それに琉伽の話に乗る様子もない。


「…その花瓶の水でも換えましょうか」

「え?」

「少し痛みがありますね、きれいにしてきます」

「あ、いや…」


頼んでもいない花瓶の水換え。
本当に何がしたいのか解らない琉伽はただ困惑するしかなかった。