TIGER&BUNNY | ナノ
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贔屓な君に

「よっお疲れ」

「…あ、なんで」


帰宅すると、「おかえり」と声が返ってきた。
声の主は前に街で絡まれて困っていた時に助けてくれた女性。正義感が強く、そして腕っ節も申し分ない強い日本人女性。
その一件以来何かと彼女と出会す事が重なり、自然と仲良くなった。
別に恋仲という間柄ではないが、たまに自宅を行き来する関係にはなり、連絡も最近では取り合っている。


「おいおい…昨日の夜連絡して、『行くから鍵いつもの所にお願いね』って頼んだから居るんだよ」

「あ、そっか…ちゃんと置いてたのに忘れてた」

「大丈夫かい?カレリン君」

「…うん。あれ?なんかいい匂い」


ふふん。よくぞ言ってくれた!と笑う琉伽。
そういえばシンプルなエプロンをしているし、いつもは纏めない髪も纏め上げている。
イワンの自宅なのに琉伽が「早くおいで」とまるでこの部屋の主の様だ。
それはたぶん、この部屋が日本家屋をモデルにしていて、琉伽が日本の血が流れているからそう見えてしまうのかもしれないが。


「じゃーん、前に君が食べたいと言っていた日本料理を作ったのだ」

「わあ…」

「生魚は抵抗があると思って煮付け、おひたし、肉じゃが、そして定番お味噌汁。どう?」

「すごい…みんな琉伽さんが、作ったの?」

「おうともよ!…まあ、イワン君のお口に合うかは分からないけどね」


そういえば以前琉伽に「日本料理が食べてみたい」と言ったことがあった。
その時彼女は日本料理って地味だから期待するだけ無駄だよ。と笑っていたが、わざわざ作ってくれている。
しかも自宅で作った物を持ってきたのではなく、ここで作ってくれた。
料理は綺麗に盛り付けられ、丁寧にも箸とフォーク、そしてスプーンまで出されている。
何より感動したのは箸先のカバーだ。細やかな模様のついた、いかにも和という紙で包まれているではないか。


「そういうの好きでしょ?」

「うん、すごい…ここ日本みたい!」

「日本の家庭ではこんな凝ったことしないけどね。箸袋なんか付けないし」

「…ありがとう琉伽さん!でも、なんで?」


不思議だったことを素直に琉伽に問うと、今度は琉伽が分からないという表情で目を丸くしてイワンを見た。


「…え?」

「前に僕が…日本料理食べたいって言ったから?」

「や、違う…けど」

「…じゃあ、なんで」

「分からない、の?」

「…うん、ごめんなさい」

「今日、イワン君の誕生日…でしょ?」

「え」

「え…っ」

「あ」


そうだ。誕生日…。
と小さくこぼすと琉伽も安心したように笑った。


「よーっし、謎が解けたところでご飯ご飯。さあさあ座った座ったー」

「…はい!」

「じゃじゃーん。いい日本酒もあるんだー」

「日本のお酒!」


喜ぶイワンに安心した琉伽はハッピーバースディ!と笑った。


贔屓な君に

(最近元気なったから、その元気付けの件もかねて!)
(…あ(…知ってたのか))
(カンパーイ!)