TIGER&BUNNY | ナノ
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そんなある日の午後

「ワイルド、タイガー…さん?」

「え?あ、ああ…」


虎徹は横にいるバーナビーではなく、自分に向けられる熱い眼差しに驚いた。
なにせ、その眼差しを送るのがカリーナと同じくらいの少女だからだ。そのくらいの歳の女の子はスカイハイかバーナビー辺りにキャアキャア言うものだと思っていたし、何よりも自覚して悲しいが人気はあまりないのだ。


「わわわわわ私、ワイルドタイガーのファンなんです!あ、握手と、サイン!ください!」

「ええ!ほ、ホントに?バニーちゃんじゃなくて俺!?」

「バニーじゃありません、バーナビーです」

「早乙女くん、仕事中ですよ。すみません、彼女ワイルドタイガーさんのファンでして」


少し申し訳なさそうに早乙女と呼ばれた少女は小さく頭を下げた。

ユーリ・ペトロフの事務所にいる事と、少女というところからして彼女はアルバイトだろう。
きっちりとした格好ではないが、それなりに身形に気をつけているらしく、白いシャツに黒のパンツという当たり障りのないシンプルな格好をしている。


「では、今回はこれでいいという方向で」

「はい、お願いします」

「…早乙女くん、」

「は、はい」

「子供じゃないんだから、もう少しソワソワするのやめなさい」

「すみま、せん…」

「…な、俺のファンって本当か?」


こくこくと頷く彼女にバーナビーは面食らい、虎徹は満更でもないような笑顔。
今まで長いことヒーローをしていてファンだと言ってくる人は悲しいが少なかった。
まして若い女の子はキング・オブ・ヒーローのスカイハイかバーナビーが妥当である。


「カードにサインいただいてもいいですか?私、前のスーツのカードもあるんです!」

「おおお!いいぜいいぜ!ワイルドにサインしちゃう!」

「…早乙女くん、あまり我が儘いわないでくれよ?ワイルドタイガーさんも迷惑なら言ってください」

「ぜーんぜん、迷惑じゃないっすから」

「………」


ニヤニヤする虎徹を見てどん引きのバーナビー。鼻の下も伸びている。
しかも鼻歌交じりでサインして、この上なくご機嫌である。
それにはユーリも同意見なのか、苦笑いをしてその二人を見ている。


「名前は?」

「琉伽・早乙女です」

「はいはい琉伽、ちゃん。ね」

「ありがとうございます!やったぁ」

「あの、早乙女さん?どうしてオジ…ワイルドタイガーのファンなんですか?他にもヒーローはいますよ」


ごもっともである。そんなバーナビーの質問に虎徹はあからさまに嫌な顔をしているし、聞かれた琉伽はキョトンとしてからプッと笑った。
そもそも「どうしてファンなのか」という質問自体おかしいといえばおかしいのだ。
誰が誰を好きになり、応援しようが自由なのだ。


「…私、昔ワイルドタイガーさんに助けて貰ったんですよ。それからずっと応援してます」

「おお、本当?本当に、俺?」

「はい!」

「どうよバニー、俺だってちゃんと人命救助してんだよ」

「バーナビーです。たまたま偶然何かの拍子で助けた結果という線もありますが」

「安心してください、しっかり助けていただきました。どのヒーローよりも先に来てくれて、大丈夫だって抱き締めてくれました」

「セクハラですね、訴えましょう。そして勝ってください早乙女さん」

「「えっ」」


そんなある日の午後