TIGER&BUNNY | ナノ
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修復


「ね、携帯ある?」

「え、ええ。はい、」

「ありがと」


バーナビーの手渡された携帯電話。
それをまるで自分の持ち物のように扱う琉伽。
病室に琉伽が触る携帯のプッシュ音だけがカチカチと聞こえている。


「パニャ、顔上げて」

「?」

「はいきたー!」


カシャ。と聞こえたシャッター音。
そしてそれを素早く操作する琉伽。


「琉伽、君本当に怪我人ですか?元気すぎませんか」

「私運んだのそちらさんでしょ。あ、どうせなら傷口見る?サービスするよ」

「結構です」

「遠慮すんなよ」


携帯片手に「ほら」と上着を捲る琉伽。
そろに慌てたバーナビーは顔を赤くし、琉伽はしてやったという顔をしている。
上着を捲ったといえ、どうせ傷口はガーゼで覆われて見えはしない。
ついでに言えば琉伽にも多少なりとも羞恥心はあるので、ほんの傷口を覆うガーゼのところまでしか上着はめくっていない。


「うひゃー、顔赤いよ」

「お、女の子がそんな…っ!」

「女の子って歳じゃないし。…よし、それから電話電話」

「何してるんです、さっきから」


しーっ。と人差し指を口に当てて静かに。とポージングする琉伽。
それを一体何かと見るだけのバーナビー。
琉伽は表すなら「わくわく」といういった表情で電話を掛けた相手が出るのをまっている。


「あ、鏑木さん?」

「え、オジサン…。」

「メール届いた?…うん、そう、それ!それ私のところにメールしておいてね!傑作でしょ?いやーいい仕事したよ。え?ああ、今日は気分良くて、うん。え、わかった」


差し出された携帯電話。
出ろ。と言っているのだろう。
大人しくその携帯を受け取り、出るとやはり虎徹の声が聞こえた。

「…は?泣いてなんか…っ!!」

「携帯は精密機器だから優しく扱わなくちゃ」

「うるさいですよ…あ、これっ」

「良い写真でしょ?」


ニヤニヤとする琉伽とは反対にワナワナと震えるバーナビー。
バーナビーの携帯の画像フォルダには先ほど琉伽が撮った写真が一枚。なんとも不甲斐ない顔をしているバーナビーの顔写真。


「…オジサンに送りましたね」

「うん」

「なんで…っこんな」

「だってその携帯私のアドレス入ってないから、鏑木さん経由で私のに送ってもらうの。それ、着信画像にしてあげるよ、パニャの。かっわいい泣き顔」


あはは。と笑う琉伽がとてもバーナビーには懐かしかった。
そうだ、多分自分はまた出会えた琉伽に昔みたいに笑って欲しかったのだ。そうバーナビーは思った。幼い頃の、ほんのつかの間の友人。
いや、まだ友人にもなっていなかったあの頃。
同じツラい経験を体験した者同士、幼いながらも琉伽の面倒を見るようにと言われた責任。
あの時自分はそれが出来たのかという不安。
それが今、琉伽が昔のようにしてくれるだけでモヤモヤとしたものが消えていくさえ気がする。


「い…っ」

「どうしました?」

「騒い、だ…ら、傷が…」

「えっ、ちょっと…ボ、ボタン!コールボタン!」


それから何故かバーナビーだけが医師に叱られ、不服ではあったが謝罪をしておいた。


空はまるで琉伽とバーナビーの関係の修復を祝福するかのような青く雲一つない綺麗な世界で、早く琉伽が回復したらいい。
そう思いながら医師の叱責をバーナビーは受け流している。




end