TIGER&BUNNY | ナノ
爆ぜる
「銃撃犯も追加だとよ」
「聞こえてます」
「他の奴らも大丈夫なのかよ」
「まず自分の身の安全心配したらどうです」
「………」
溜め息を漏らすバーナビーに対して虎徹は違う意味で溜め息をついた。
「こちら英雄名、銃撃犯と思われる人物を発見。確保します」
「オーケー、英雄名」
黒い服装で身を固め、銃を構えて身を潜める人間。
逃げる素振りを見せず、仕切りに何か狙っている様子。
英雄名に気付いていない訳ではないはずだ。
その狙撃手は一度英雄名を狙い、外している。
外してしまえば自分の居場所を教えているも同然。なぜ逃げないのか。
逃げないのはデメリットしかなく、まるで捕まえろと言っているようだ。
それに英雄名についてテレビカメラも付いてきている。
それこそこの市民達には認知度が高い番組のスタッフだ、犯人も見慣れているはず。
ここは様子を見るべきだろうか。
そう思って犯人の様子を伺っているとイヤホンからはプロデューサーの怒声に近い声で「早く突撃しなさい!」と叩かれた。
こうなっては英雄名も出るしかない。
一息吐いて、地面を蹴った。
「大人しく投降しなさい、アナタはもう逃げられない」
「…お前、馬鹿だな」
「…何が言いたい」
寝そべる様に銃を構え、英雄名に背を向けていた犯人がゆっくりと立ち上がり、そして英雄名に顔、そして体を向ける。
「なんでお前を狙ってまだ此処にいると思う?」
「…私を、誘き出した、とでも?」
「なんでワザと狙いを外したと思う?」
「ワザと…?」
「答えが欲しい?」
「…いらない。とりあえずの今はアナタを捕まえることだから」
「ヒーロー、君は、お前はここで終わるんだよ。私の大好きで大好きで、君が目の前に来て息絶える為に!!」
「意味が…」
解らない。
その言葉がまた違う銃声によって遮断された。
脚が、熱い。
そして目線が、脚が揺れる。
「英雄名、英雄名!銃声?どう言うこと!?」
「あはははは!やっぱり私の英雄名、倒れる姿も、血の色も素敵!綺麗だよ…今度は英雄名の叫ぶ声が聴きたいな」
「…っ」
「何処から射撃したか?そんな顔してるでしょ?してるよね」
秘密だよ!
狂ったように、楽しそうにする犯人。
…ああ、nextか。そう冷静に思う暇もなく、もう一発銃弾が同じ脚の同じ場所、もう少し深いところを抉った。
「……あぐっ」
「もっと声、聴きたいなぁ!叫び声も血ももっと聴きたいから殺さないよ!そして君のファンは悲しんで!」
「目的、は…わ、たし?」
「いいや、違うよ!君みたいな三流ヒーロー興味ないね!支離滅裂だと思った?君が好きでファンで、君が嫌いでアンチ!どうでもいいよ、ヒーローなんか!たまたま君が一番に仲間捕まえたがら君のファンでアンチなだけ!」
「…たまたま私だって、だけか」
正解!大好きで大嫌い!笑った犯人。
このままでは本当にヤバい。
まだこの脚の負傷は大丈夫だ。
立つのには苦労するだろうが脚のど真ん中を撃ち抜かれたわけではない、脇を抉られた。
これでは逃げる事も出来ない。
どうする、どうする。
「そうだ、脚だけじゃまたまだ元気だね。今度はもうちょっと元気取ろうか。睨むくらいになるといいなぁ」
「…ぁっ」
「そうそう!そんな感じ!」
脇腹を抉った衝撃。
ボタボタと血液が落ちる音と一緒に英雄名の体も地面に這う。
「ヒーロー!ヒーローはヒーローを助けてくれないね!一緒に戦っても助けてくれない、仲間で敵なんだね」
「英雄名!」
「…ワイ、ル、ドタ」
「駄目だよ、駄目!今こっちのヒーローとダンスしなきゃなんだから」
そして赤い光が見えた。