TIGER&BUNNY | ナノ
プロローグ
派手なアクション。
自分の性格とは別の、会社のヒーローとしてのキャラクター。
それが嫌だと思った事はない。
目立つ事は苦手だったけど、見てもらえる事は嫌いじゃない。
露出しているようで実はそれほどなくて、身体に妙にフィットしたコスプレの様な格好も最初は嫌だったが今はもう慣れた。
何故ならこれは私であって私じゃないから。
「犯人逮捕は英雄名ー!」
イヤホンから聞こえる実況アナウンサーの声。
そして周りには一般人の運のいい観客達と撮影スタッフ。
犯人の首根っこを持って引き摺って警察に引き渡し、観客に軽くファンサービス。
「英雄名ー!」
「英雄名かっこいー!」
実際の私は地味で、それこそ誰も気にとめることもない様な容姿をしている。
それが今は注目を浴びている。
「よし、英雄名。その程度にして早々に帰還しろ」
「了解」
カツンと靴を鳴らして、その場で高い場所まで飛び上がって軽くポーズを決めてから帰還も慣れたものだ。
「お疲れ様、英雄名」
「お疲れ様です主任。今回はどうでしょうか」
「当社のイメージも英雄名のイメージも悪くない回だったかな。スポンサーや社長からの評判も上々だ」
やった。とパッと今までストイックキャラクターだった“英雄名”から雰囲気をガラリと帰ると、話していた上司は困ったように笑った。
「英雄名…いや、早乙女は切り替えが早すぎるな」
「…すいません」
「悪い事じゃないが…取材等でボロださないでくれよ?我が社のキャラクターでもあるヒーロー」
「それは勿論!」
その辺はしっかり分けてますから!と力説する琉伽。
琉伽とヒーローとしての英雄名は綺麗に割り切っている。
それこそ琉伽と英雄名が同一人物だとは誰も思うまい。
普段の琉伽は黒い地毛を茶色く染めたのはいいが、その後の手入れが面倒なのか根元から黒い髪がもう10センチほども伸びている。
それにファッションに疎いのかお洒落というものをしない。
シンプルで、靴はスニーカー。
それに対してヒーローの英雄名。
同性のブルーローズと路線を同じくセクシーだが、彼女とは違いストイックで無口。
高飛車な態度もない。そして無口ながらも友好的で、よく他のヒーローと共闘しては民衆の心を掴んでいる。