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あの子がいないところの話


「ね、琉伽と喧嘩したの?」

「…え?」

「琉伽はね、いつも笑ってるだけど、貴方と喋った後ちょっと悲しそう」

「…」

「ボク琉伽好きだよ。琉伽優しいから」

「優しい…?」

「うん。ボクの話ちゃんと聞いてくれるから」


だから琉伽好きなんだ。そうドラゴンキットことホァン・パオリンはバーナビーに笑った。


「ねえ、琉伽と喧嘩したの?」

「いいえ、してませんよ。…嫌われたかも、しれませんが」

「琉伽は、誰かを嫌いになったりしないよ」


琉伽は優しいから。と同じ言葉を繰り返すホァン。
そんなホァンを不思議そうに見るバーナビー。そんなバーナビーにホァンはニコリと笑って見せた。


「ボクね、前琉伽に怪我させちゃった事あるんだ。ワザとじゃない、偶然…」

「…」

「ボクを庇ってくれたんだ」

「…なぜ、そんな話を」

「琉伽が苦しそうなだから、泣きそうなだから」


泣きたいのはこっちだ。バーナビーは少なからず今泣きたい。
何が悲しくて目の前の幼い顔立ちの女の子に、責められているのか。
いや、責められてはいない。そう思ってしまう自分が苦しい。


「琉伽ね、きっと貴方の事好きだよ。琉伽は皆好きだもん。だから皆と一緒に仲良くできるんだから」

「…好きとか嫌いとか、何を言っているんですか?元より僕と彼女は喧嘩してません、関わりも…ないんです」

「そんなこと無い。琉伽は自分の能力、嫌いだけど好きって言ってた。ボクの能力も、皆の能力も。貴方コテツと能力一緒、だから琉伽も好きなはず」

「いい加減にしてください!」


馬鹿みたいだ。こんな、年下の女の子に大きな声を上げて。

別に琉伽に嫌われたとか、それは重要ではない…とは言えないが、もうやめてほしい。
好きや嫌いの次元ではないのだ。
自分と琉伽は同じスタート地点に立っていた。
あの時自分と同じ恐怖を感じていた、同じ不安を共有していた。
あの小さな手が幼かった自分を頼っていた、縋っていた。求めてくれた。
離すつもりは無かったし、実際あの時はできる限りの力で琉伽を守ったつもりだ。
ただ、その力が及ばなくて琉伽を恐怖にさらしてしまった。
弁解したいわけではない。
ただ、力がなかった自分が不甲斐なくて…今は違うのだと。
もう琉伽を守れるだけの力がある。
だから…?どうしたかったのだろう。
許してほしかったのか?


「どうしたの?」

「…あ、いや」

「琉伽、本当は貴方と仲良くしたいんだと思うんだボクは。だから早く仲直りしてね、ボク琉伽の楽しそうな顔早く見たいんだ」


だから早く仲直りしてよね!

だから僕にどうしろって言うんだ、あの子は。