TIGER&BUNNY | ナノ
和解の可否
「それは時間が解決してくれたし、でも両親の命日には必ずといっていいほどテレビで特番。私はそんな両親の事を隠して生活。でもnextってさ、イジメられるんだよね」
「…もう、いい。琉伽が」
「ダメ、聞いて。私は貴方に聞いてもらうと決めた。貴方も私にその話を振ったんだから最後まで聞いて」
正直琉伽はバーナビーがどんな思いをしてここまで生きてきたかは知らない。
知りたいとも思わない。
それは琉伽は今まで思い出したくないと思っていたからだけではない。
正直思い出したくない、関わりたくはない。
琉伽にとってツラいものでしかなく、思い出すこともツラく悲しい。
それに大体の想像はついてしまう。
「…私は貴方の様に強く生きていく事が出来ない弱い人間なの、だから私は思い出したくない」
「……」
「思い出す要因は…怖い。それが私の正直な気持ち」
「…っ」
いただきます。と小さな声で琉伽は言うと、料理に手を付け始めた。
カチャリカチャリと小さな音が響くだけの部屋。
重い沈黙が支配するその部屋で、一人喋っていた琉伽が食事をする音だけが聞こえる。
二人は互いを見ようとはしない、出来ない。
怖いのだ。
バーナビーは自分を拒絶しようとしていた琉伽の理由に少し触れたこと。
琉伽はそのバーナビーも恐怖の対照であるということ。
「…琉伽」
「…なに?」
「僕は、琉伽にまた会えたこと…嬉しいと思いました。琉伽はわからなかったみたいですが」
「私は、よくわからないや。ちょうどね、私が倒れた日ね、夢みたの、パニャが出てきた。始まりと終わりの日の夢」
「…」
「多分、嫌ではなかったと思うよ」
それは本当だ。
夢に出てきて、あの時の自分達は仲良しで。
バーナビーをパニャと呼んで、後ろについて歩いた。
バーナビーもお兄ちゃんぶっていた。
そんな自分達をどちらの両親も楽しそうに見ていた。
あの事件がなければ、二人はもっと違った立場と関係だった。
過ぎたことはどうにもならないが、互いに犯人を恨む理由も、事件を拒絶したい気持ち。どりも理解できる唯一無二なのだ。
「…たがら、私にその話はしないで。本当なら…関わりたく、ない。でも、仕事は同じだからそれは出来ないの、わかってる。だから」
「嫌だ」
「…」
「琉伽、思い出を共有している唯一なんだ…だから、僕は」
泣きそうな声だ。
声が振るえている。これでは私がバーナビーを泣かせているみたいだ。そう琉伽は心の片隅で思った。
バーナビーが今まで孤独だったかは想像するに琉伽にとっては容易いだろう。
孤独の立場は違えど、いろんな意味での共通点。
大の男が声を振るわせるのだ。
「じゃあ、バーナビー、こうしよう。貴方は私の今までを理解してくれた、私はそう思ってる」
「ええ」
「私が思い出すのが嫌な理由も。そして私は貴方が私に何かを求めているのも、わかった」
「…琉伽」
「これからは、友人として関わろうよ。スタートは昔じゃなくて、今。事件の事が知りたいなら、友人として、ヒーロー仲間として手を貸すよ」
「違う、そうじゃ…ないんだ」
「傷の舐め合いでもしたかった?」
「違う!どうして…僕は、ただ」
あの頃みたいに、また…。
小さくなっていくバーナビーの言葉は琉伽まで届くことはなかった。