TIGER&BUNNY | ナノ
心の準備と踏ん切り
「ぎゃーっ!?」
「…お前本当に女か?」
「何をもって女と男を分けるかで決まってくるけども」
なんだ、いつもと変わらないな。と笑うロックバイソンことアントニオ・ロペス。
どうやら彼は先程の琉伽が逃げるようにトレーニングルームから出るのを見ていたらしく、琉伽が下の階のソファに座っているのを見つけて声をかけたらしい。
現に今彼はトレーニングウェアを着用している。
「どうした、具合まだ悪いのか?」
「体調はいいんですよ、私」
「…悩み事か?」
「そんなところですよ、女の子は悩みが多いので」
「まずもっと可愛く叫ぶところからだな」
「確かに…っ」
きゃあ!って言えるように努力しますよ。と変わらぬ笑顔で答えるが、すぐに沈んだ表情に戻ってしまった。
彼ともよく共闘した仲で、プライベートも虎徹同様に仲良くしてくれている。
子供、とまではいかないが歳の離れた妹の様な感覚なのだろう。
「今までね、忘れたフリしてたのにさ、無理矢理思い出さされたって感じかなー」
「ルーキーか?」
「ううん。ルナティックが、最初。でも…彼も、うん」
「ルナティックは別として、ルーキー何かしたのか?」
「……そこは、ノーコメントでお願いします」
背中を丸めて頭を下げる。
そこに触れられたら、今はまだいけない。
今までは誰も知らなかったから触れてこなかった。
皆仲間だったから、nextだったから仲良くしてくれた。
自分の事を知らなかったから。
「話せとはいわない。いつか、その悩みを話せる相手が出来るといいな」
「…うん。ありがとう、ございます。出来る、かな?」
「出来るさ、お前さんはまだ若い」
「…なんか、恋人から出来ないよー!か、失恋したってロペスさんに相談したみたい」
「確かにな」
深く聞いてくる人じゃなくて、良かった。
それだけが救いだ。
「しっかし…明日顔合わせるの嫌だな…」
「頑張れ若者」
「うえー。ま、明日ガツンと言えるように心の準備しますか!」
「お、その調子だ」
あのイケメン泣かしちゃる!と明るく笑って見せた。