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 似た者同士

「黒田くんて、泉田くんより背が高いんだね」

この前一緒に歩いてるの見て思ったんだ。と朱堂さんが笑う。
朱堂さんはひとつ上の学年でマネージャーで、部活唯一の女子。自転車に詳しいわけでもないし、どういう切欠かは知らないが、この自転車競技部で頑張っている。
朱堂さんは優しい人で、いつも一人で頑張っている。それこそ声を掛けてくれればいいのにと思うとこと一人でやろうとするので、あの荒北さんがいつも気にしている。
荒北さんと朱堂さんは仲がいいが、別に付き合っているわけではない。言えば男女の垣根を越えた友情の…ような?まあ朱堂さんは荒北さんだけじゃんく同じ学年の福富さんとか新開さんとか東堂さんとも仲が良い。

「ほんの少しだけですけどね」
「よく葦木場くんと一緒にいるから、なんていうか小柄に見えてた」
「朱堂さんよりは大きいですよ、オレ。それに葦木場と一緒じゃ誰が一緒でも小柄ですよ」
「確かに」

あの福富くんでさえ小柄に見える不思議だよね。とまた笑う。
正直練習があって暇じゃないが、朱堂さんの手伝いは嫌いじゃない。マネージャーという仕事は選手が選手でいるためには絶対必要な存在だし、マネージャーから見た選手というのも朱堂さんから聞くことができる。今まであまり考えた事はなかったけど、葦木場や塔一郎の話を聞いて少し興味が出たのが最初だ。

「いつも思いますけど、選手並みにハードですね」
「そう?私選手じゃないからよくわかんないけど、黒田くんが言うならそうなのかな…なんかごめんね」
「え?」
「だって選手に手伝ってもらって…練習もあるのに」
「大丈夫です、手伝いも練習に含まれますから」

部員が多いからその分洗濯物が多い。そのためにマネージャーの仕事の一つである洗濯の量も多く、朱堂さんは大抵一人でその仕事をこなしているし、マネの仕事はそれだけじゃない。記録を整理したり大会のポスターが来ればそれを部室に貼ったりもするし、備品管理に部活の連絡。たぶんそれ以外にもあるんだろうけど、それ以上にはオレは知らない。

「もしかして、朱堂さん手伝いに誰か声かけないのって、そのせいですか?」
「え?」
「朱堂さん一人で全部やろうとしてるじゃないですか」
「…あー、だって、ほら…一応は、それとかマネージャーの仕事だし」
「………」
「ちょ、何その顔…なんでそんな顔するの」

焦って慌てる朱堂さんとは対照的にオレは呆れた顔をしているんだろう。だからこそ朱堂さんは余計に焦っているわけで、どうして呆れられているかがわかっていなんだと思う。
そうか、だから余計に荒北さんは朱堂さんと仲が良いのか。仲が良いというよりも、これは世話を焼いているんだとわかった。あの人の性格だから世話を焼かずにはいられないんだ。
朱堂さんの性格としては世話を焼かれるような人ではない。むしろどちらかと言えば焼く方の人間だと思う。困っている後輩が居れば声を掛けるし、ちょっとでも怪我していれば絆創膏使うか聞いてくる。

「…なんか、荒北さんと仲が良い理由がわかった気がします」
「え、な…どういうこと?」
「こっちの話です。朱堂さん、オレだって手伝いくらいはできます」
「え、あ…うん。ありがとう。でも大変でしょ?」
「平気です」
「………うん」
「なんですか、その顔」
「いや、なんかね、荒北くんみたいだなって思って」

荒北くんも同じような事私に言うんだよ。と言われて、なんだか複雑な気持ちになった。



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