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 私の可愛い可愛い弟

※荒北姉




「靖友!」
「うげ!」

IH初日。保護者やお世話になった人に抱負や御礼を言った後の時間。ある人は親子で会話したり、友達と会話、最終確認をしているときだった。
荒北が同学年のメンバーと会話している時に女の人が声をかけてきた。

「なんで居るんだよ!」
「靖友の活躍を見るために来たに決まってるでしょ」
「靖友、誰?」
「うっせ!ちょ、こっち来い!」
「靖友のお友達?弟がお世話になってます、こんな性格だけど仲良くしてあげてね」
「ぎゃー!!」

え、お姉さん?と新開が面白いものを見つけたと言わんばかりに顔が輝いた。
当の荒北と言えば、姉とバラしたばかりにその場にしゃがみこみ、変な唸り声をあげている。しかしそんなことを気にする様子もない姉、奏はメンバーにニコニコと笑って愛想を振りまいている。

「荒北靖友の姉の奏です、よろしくね」
「オレ新開隼人です、お姉さん」
「福富寿一です」
「東堂尽八です。荒北に姉がいたとは思いませんでした」
「齢離れてるしね、久しぶりに会ったお姉さんに挨拶はどうしたの靖友」

同じくしゃがんで唸っている靖友の頭をつつく奏。
その様子にちょっと和んだのか、メンバーが口々に「お姉さんに挨拶をした方がいいぞ荒北」「靖友挨拶しろよ、お姉さんだろ」とか荒北からしたらおちょくり以外には考えられないことが言われている。

「…なんで来てんの」
「だから、靖友を見に来たの」
「どうして今更来てんの!」
「え、だってレギュラーだし3年だし?それに更生したから」

ガバッと頭を上げて奏を見て、そして立ち上がる。
奏と靖友はしばらく会っていない。奏が東京に進学して、そのままそこで就職。最後に会ったのは高校に上がる少し前だ。何度もケンカしたし、それでも「高校には最低でも行きなさい」と奏はうるさく言っていた。

「いやー、あの時はどうなることかと思ってたよ。こーんな変な髪型にするしさ」
「ぎゃああ!」
「懐かしいな」
「福ちゃん!?」
「あ、わかる?」
「はい。最初に話した時がその髪型でした」
「やめて!福ちゃん!!もう黙れよ姉貴!!」

奏をどうにか黙らせようと躍起になるが、奏にはどこ吹く風。逆に軽く腹パンを食らわせる。

「暴力はいけません。レギュラーメンバーなんです」
「ああ、ごめんごめん。家にいた時のクセで。音は大きいけど痛くないから大丈夫だと思うよ。ありがとう心配してくれて」
「…くっそ、早く帰れよ……」
「あ、ねえねえ。靖友が活躍するところってどこ?この地図でいうと」
「そうですね、この辺りが」
「…ここね、わかった。ありがとう。福くん?」
「福富です」
「そこで何すんだよ」
「決まってるでしょ、靖友の活躍を見るの」

地図を見てここで待ってるからね。と自分より背の高い靖友の頭を撫でる。

「あ、そうだ。靖友写真撮ろうか」
「嫌だよ!何が悲しくて姉貴と写真なんか」
「いいことを教えてあげよう。君の学費の一部は私が出している」
「オ、オネエサマー…」
「いい心がけだ我が弟よ」

嫌々だが奏に言われるままに写真を撮られ、奏は満足そうにしている。
「福富くんに教えてもらったところで見てるね」と言って奏は携帯を大事そうに持って行った。

「靖友のお姉さんいい人だな」
「どこが!」
「いい人だろう。お前を心配して来てくれたじゃないか」
「とても喜んでいたぞ」

恥ずかしいような、嬉しいような。でもやっぱりこれ恥ずかしいと思った靖友は「う、うるせえよ!!」と大声を上げた。



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